先週12日(金)夜の米国株は、イスラエルがイランの本土攻撃に備えて警戒態勢に入った報道や米国大手銀行の2024年1-3月期決算が物足りない結果だったことを受けて大きく下落しました。

 週末13日(土)夜にはイラン革命防衛隊が、イスラエルへドローンとミサイルによる攻撃を行ったと発表。

 4月1日の、イスラエルによるものと思われるシリアのイラン大使館空爆をきっかけに、両国の緊張は今週、全面的な武力衝突に発展する恐れが高くなっています。

 15日(月)の日経平均株価(225種)は反落し、終値は前週末比290円安の3万9,232円でした。米国株安や中東情勢の緊迫化を受けて、リスク回避の売りが優勢となり、下げ幅は一時700円を超えました。

 有事のドル買いの流れを受け、12日夜のニューヨーク為替市場では一時1ドル=153円40銭台寸前をつけるなど34年ぶりの円安も進行。

 引き続き、日本政府・日本銀行による為替介入に対する警戒感が根強いことも、今週の日本株取引に影を落としそうです。

 先週の日経平均株価は前週末比531円(1.4%)の上昇とプラス圏で推移しましたが、先々週の下げ幅1,377円を取り戻すことはできませんでした。

 米国では10日(水)発表の3月CPI(消費者物価指数)がガソリンや住居費の上昇で、予想を上回る前年同月比3.5%の伸びとなり、物価高がとても粘着質であることが判明。

 同日発表された3月20日終了のFOMC(米連邦公開市場委員会)議事録では、2024年の利下げ開始にはインフレ(物価上昇)率の鈍化が確実なものになる必要があるという意見が大勢を占めていたこともあり、市場が期待していた6月利下げ説は大きく後退しました。

 12日(金)にスタートした米国企業の2024年1-3月期決算では、米国銀行最大手のJPモルガン・チェース(JPM)の純金利収入が予想以下になったことで前日比6.47%も急落。

 中国が国内の通信事業者に米国など外国製半導体の排除を指示していたという報道で、インテル(INTC)が前日比5.16%安となるなど情報通信セクターも下落しました。

 機関投資家が運用指針にするS&P500種指数は、前週比1.56%安と2024年最大の週間下落率となりました。

 イラン・イスラエルの軍事衝突や米国の2024年早期利下げ期待の後退で暗雲が漂う今週の株式市場。

 2023年11月から始まった上昇相場が崩れるほど大きな下落に見舞われるか、それともどこかで下げ止まるかの瀬戸際に立たされている、といえるでしょう。

先週:バフェット日本株買い増しに期待!流通株下落など相場の熱量低下が心配

 先週の日経平均株価は株価上昇につながるような好材料が数多くありました。

 ひとつは、9日(火)に米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる投資会社バークシャー・ハサウェイ(BRK.B)が2023年11月以来、8度目の円建て社債の発行を進めていると報じられたこと。

 バフェット氏は昨年2023年4月、保有する大手商社株の買い増しを表明して、その後の日本株急上昇の火付け役になっただけに、買い増し期待で保有株の三井物産(8031)が前週比5.1%も上昇しました。

 同じ9日には、米マイクロソフト(MSFT)が日本でのクラウド事業やAIインフラ強化のため、今後2年間で29億ドル(約4,400億円)を投資すると発表。

 国内でデータセンターを運営するさくらインターネット(3778)が思惑買いで前週比33.7%高。

 9日(火)に「先端AIデータイノベーション研究所」を設立すると発表した東証グロース市場上場のデータセクション(3905)がストップ高を連発して1週間で株価が約1.5倍も急騰するなど、データセクター関連株が活況でした。

 また地政学的リスクの高まりで金や銅など資源価格の上昇が続いていることから、業種別上昇率ランキング上位には、非鉄金属や鉱業、石油・石炭商品といった資源セクターがランクイン。

 銅や金を世界各地で採掘する住友金属鉱山(5713)が2月末の終値以降、12日(金)終値まで約1カ月半で36%も上昇しました。

 米労働省が11日(木)発表した米国3月PPI(卸売物価指数)は前月比の上昇率が0.2%と、2月の前月比0.6%上昇から大幅に鈍化したことを受け、米国では11日に物価高鈍化で株価が上昇しやすいハイテク株主体のナスダック総合指数が史上最高値を更新。

 その結果も影響し、11日(木)に2025年2月期の営業最高益や実質増配を発表した半導体運搬装置のローツェ(6323)が前週比27.9%高。

 日の丸半導体復活に必要な半導体設計技術を持つソシオネクスト(6526)が先週比11.0%高と続伸するなど、半導体関連株も堅調でした。

 一方、10日(水)に2024年2月期の本決算を発表したセブン&アイ・ホールディングス(3382)は前週比6.6%安、イオン(8267)は前週比4.3%安でした。

 両社ともに今期2025年2月期も増益予想と好決算でしたが、想定内と見なされ、材料出尽くしの売りに押されるなど、内需株の下落が目立ちました。

 9日(火)、10日(水)の東証プライム市場の売買代金が大台の4兆円を約2カ月ぶりに割り込み、投資家の売買熱が冷め始めているのも懸念材料でしょう。

 米国では物価高止まりにともない、インフレに弱い債券が売られ、長期金利の指標となる米国10年国債の利回りが4.5%台まで上昇。

 中東情勢の緊迫化で12日(金)に北海油田で産出する英国産の北海ブレント原油が1バレル92ドル台まで急上昇して6カ月ぶりの高値をつけるなど、原油価格の上昇も続いています。

 12日(金)の米国大手銀行の決算が「期待外れ」と見なされ総じて株価が下落するなど、重厚長大産業の組み入れ比率が大きいダウ工業株30種平均は先週5日連続で下落して前週比2.37%安となりました。

 ただし、本来金利上昇に最も弱いナスダックが11日(木)に史上最高値を更新するなど、ちぐはぐな動きも目立つ1週間でした。

今週:中東情勢の緊迫化で急落!?米国企業決算や為替介入に警戒必要! 

 今週はイラン・イスラエルの軍事衝突の深刻化がなによりも株価の下落要因になりそうです。

 戦闘開始当初は事態がどれほど深刻化するか不透明なため、株価の反応も大きくなりやすいので注意が必要です。

 今週は米国で2024年1-3月期の決算発表が本格化。

 15日(月)には大手投資銀行のゴールドマン・サックス・グループ(GS)、18日(木)には映画ネット配信のネットフリックス(NFLX)、19日(金)には日用品世界大手のプロクター・アンド・ギャンブル(PG)の決算発表が予定されています。

 15日(月)には米国の個人消費の動向が分かる3月の小売売上高や4月のニューヨーク連邦準備銀行製造業景気指数、16日(火)にはパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長とカナダの中央銀行に当たるカナダ銀行総裁との対談も行われます。

 日本では小売・サービス業に多い2024年2月期決算が15日(月)で一段落。大きな決算発表はありません。

 12日(金)の取引終了後には百貨店大手の高島屋(8233)が2025年2月期の過去最高益更新と実質増配予想を発表しました。

 同社のような好決算を発表した内需株が今週、素直に続伸するか、材料出尽くしの売りで下落するかも相場の雰囲気に影響を与えそうです。

 イランとイスラエルの軍事的緊張がこれほど株式市場に影響を与えるのは、中東諸国の多くが産油国で、戦闘激化が原油価格高騰につながる可能性が高いから。

 原油価格の上昇は世界的なインフレ再燃、ひいては株価の大敵といえる米国の高金利政策の長期化につながりかねません。

 ここまでAI向け半導体の爆発的な普及を好感して株価が急騰してきた日米の半導体株もさすがに上がり過ぎでバブル崩壊の恐れがないとはいえません。

 ただ、著名投資家のウォーレン・バフェット氏の買い増しの動きでも分かるように、日本株は世界的に見て、まだまだ割安で長期的な上昇余地はありそうです。

 急落後に上昇に転じたところは格好の押し目買いのチャンスになるかもしれません。

 気になる政府・日銀の為替介入に関しては、今すぐ介入があってもおかしくないという意見もあれば、1ドル=155円台まで円安が進行しなければ為替介入はないという意見もあるなど、財務省の元財務官の間でも見解が分かれているようです。

 18日(木)には金融緩和に積極的な「リフレ派」といわれる野口旭日銀審議委員が佐賀県の金融経済懇談会で発言します。

 引き続き、財務省や日銀高官の発言、さらには実際の為替介入による株価急落に注意が必要になるでしょう。