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著者の愛宕伸康が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
植田日銀総裁の朝日新聞インタビューは追加利上げに向けたキックオフ!

 日本銀行の植田和男総裁は、4月5日付の朝日新聞によるインタビューで、春闘の結果が「夏から秋にかけて物価にも反映され」、物価安定の目標2%が持続的・安定的に実現する「可能性がどんどん高まる」と述べました。これは追加利上げに向けた植田総裁によるキックオフと受け取れます。

 植田総裁は今回も「普通の金融政策」との言い回しを使って、経済・物価情勢に応じて動くことを示唆しました。つまり、足元停滞気味の景気が、今年後半にかけて回復傾向を強めるかどうかが重要なポイントであり、急激な円安でもない限り、夏までに追加利上げに動くことはないでしょう。

 今週はその植田総裁のインタビューの内容を詳しく解説し、先週紹介した追加利上げの見通しとの整合性をチェックします。

事前にヒントを与えるのが植田日銀のコミュニケーション~昨年9月のインタビュー~

 植田総裁のインタビュー記事といえば、昨年9月9日の読売新聞によるものが思い出されます。そこで総裁は、

経済・物価情勢が上振れした場合、いろいろな手段について選択肢はある。マイナス金利の解除後も物価目標の達成が可能と判断すれば、(利上げを)やる。

(マイナス金利解除の時期について)来春の賃上げ動向を含め、年末までに十分な情報やデータがそろう可能性はゼロではない。

(出所)読売新聞、楽天証券経済研究所作成

 と述べ、当時、市場を大きく反応させました。改めて上の発言を振り返ると、二つの重要なポイントに気付きます。

 一つ目は、追加利上げのヒントです。「マイナス金利の解除後も物価目標の達成が可能と判断すれば」というくだり、実は今回の朝日新聞のインタビューでも同様の趣旨のことを、より詳しく説明しています(後述)。ちなみに、文中の(利上げを)は筆者による付記です。読売新聞の付記は(解除を)ですが、筆者の判断で意味が通るよう修正しています。

 二つ目は、「年末までに十分な情報やデータがそろう可能性はゼロではない」という発言。明らかに1月の金融政策決定会合(MPM)での解除を意識させたものであり、事前にヒントを与えるのが植田日銀流のコミュニケーションであることを明確に示しています。

 実際には、元日に発生した能登半島地震によって解除は見送られましたが、後に公表された1月MPMの議事要旨を見ると、マイナス金利解除が予定されていたと思わせるような記述になっています。ともかく、今回の朝日新聞のインタビュー記事も、植田総裁による事前のヒントであることに間違いはありません。