利下げは株価急落のトリガー!?
筆者はウォール街の大方の見方と異なり、FRBの利下げは株価急落のトリガーを引くと考えている。市場でこのような見方は少なく、FRBの利下げは株の買い材料と考えられているようだ。
筆者と同じく「利下げが市場の転換点になる」と考えているのは、ブラックスワン・ファンドの運用者であるユニバーサのマーク・スピッツナーゲルである。
【ブラックスワン的なイベントに備えるファンド(ブラックスワン・ファンド)を運用するユニバーサ・インベストメンツのマーク・スピッツナーゲル最高投資責任者(CIO)は、株式市場は今後大きく値上がりするだろうとし、その後米金融当局が利下げに転じると急転する可能性が高いとの見方を示した。スピッツナーゲル氏は「その時が本当にひどい状況になる」と語った。同氏は10年以上にわたる低金利と国債買い入れプログラムを通じて、市場が米金融当局の支援に過度に依存していることへの懸念を強めている】
出所:『ブラックスワン・ファンドの運用者、FRBが利下げに転じた時を懸念』 2023年11月10日(ブルームバーグ)
これは昨年11月の報道である。スピッツナーゲルの予測の通りその後株価は大きく上昇したが、利下げは株式市場の転換ポイントになりかねない。
歴史は「ピボット」が本当の暴落の引き金になることを示している
スタンレー・ドラッケンミラーはYouTubeの対談で以下のように述べた。
【歴史的に2つのことが起こりやすいことがわかっている。
第一に、「資産バブル」に続いて、「最悪の経済的結果」が生じる傾向があること。
第二に、私たちの業界の大きな原則は「連邦準備制度と戦うな」ということである。私は今、これまで見た中で最大かつ最も広範な資産バブルを見ている。それは10年から11年続いており、今やグランドフィナーレを迎えている。
私はここに座って、おそらく最大かつ最も広範な資産バブルを目の前にしている。これまで見てきたことや、これまで研究してきたことは忘れてほしい】
出所:YouTube『キリル・ソコロフ、スタンリー・ドラッケンミラーと対談』
ドラッケンミラーは「2、3年後には信じられないようなチャンスが到来する。チャンスが訪れるまで資金を温存しておくことが大切だ」と語っている。
ドル/円相場 1990年7月以来33年8カ月ぶりの円安水準に
ドル/円相場はおととしの10月につけた151円94銭を一時上回り、152円台に迫っている。日本銀行はマイナス金利を解除すれば円高になると考えていたのかもしれないが、「日銀は金利をゼロに戻すだけで、おおむね米大統領選挙までは何もしないだろう」と市場からは思われている。
昨日、日銀、外務省、金融庁が緊急会合を開催したが、物価やインフレの番人として円安を止めたいのであれば、介入ではなく利上げをすべきだろう。「ゼロに戻しただけで金利を上げないのだから、そりゃあ、円安になるでしょう」というのが市場の認識である。
ドル/円(日足)
ドル/円(月足)
この人工的な円安が継続するかぎり日本株や日本の不動産は上昇する傾向にある。現在、1980年代後半のような資産バブルが起きつつある。
日経平均CFD(日足)
日経平均CFD(週足)
日経平均(月足)
しかし、この物語には、「低金利と円安によって日本の資産バブルがこのまま進めば、貧富の差が社会問題となり、日銀は予想外の大幅な利上げに追い込まれる」という落とし穴がある。資産バブルに続いて、最悪の経済的結果が生じる傾向があることを頭に入れておくべきだろう。