短期視点で、もう一段高が見られるか

 金(ゴールド)相場を読む際のポイントを整理します。短中期視点では有事ムード、代替資産、代替通貨の三つ、中長期視点では中国・インドなどの新興国の宝飾需要、中央銀行、鉱山会社の三つ、超長期視点では見えないリスクの一つの合計七つです。円建て金(ゴールド)は、これらにドル円の変動を追加した八つです。

図:金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(2024年 筆者イメージ)

出所:筆者作成

 本レポートで触れた中央銀行の動向については、中長期視点の材料です。2010年ごろに始まった買い越しが続いた場合、金(ゴールド)価格は中長期視点で上値を追う可能性があります。西側が脱炭素を諦めて非西側との分断が解消するまで、価格は上昇する可能性すらあるのではないでしょうか。

 短中期視点では、先述の通り、有事ムード、代替資産、代替通貨の三つに注目します。ウクライナ戦争、イスラエル・ハマスの戦争が沈静化する兆しが見えないため(国連の機能不全が大きい)、今後も短期視点の資金の逃避先として、金(ゴールド)に注目が集まる可能性があります。

 また、代替資産については、各種株価指数が高値を更新しているため、金利が付く株と金利が付かない金(ゴールド)の対比で、金(ゴールド)相場に下落圧力をかける材料になり得ます(現在も代替資産起因の下落圧力は生じている)。

 一方、代替通貨については、以下の図の通り、今年のいずれかのタイミングで行われようとしている米国の利下げが、ドル安および代替通貨の保有妙味を増加させる要因になり得るため、金(ゴールド)相場に上昇圧力をかける可能性があります。

図:FRBの金利引き下げ示唆の影響

出所:筆者作成

 米国の利下げは、金(ゴールド)のほか、ハイテク株やそれを含んだ株価指数、原油、非鉄金属、農産物(穀物を除く)などの相場に、幅広く上昇圧力をかける要因になり得ます。

 実際に、米国の利下げが行われ、今にも増して、景気回復期待、ドル建てコモディティ(国際商品)の割安感、代替通貨の保有妙味、投機筋の物色気配などが強まった場合、金(ゴールド)はもとより、株価指数や、原油を含んださまざまなコモディティ銘柄の相場が上昇する可能性があります。

 2010年ごろから続いている株高・金(ゴールド)高は、米国の利下げをきっかけに短中期的に、西側・非西側の分断をきっかけに中長期的に、継続し得ると筆者はみています。株価が上昇しているからといって、かつ、金(ゴールド)自体が歴史的な高値水準にあるからといって、金(ゴールド)相場がすぐさま大幅に下落するとは限りません。

 予断を持たず、そして過去の常識にとらわれず、価格が新たな水準に達したことにならい、フレッシュな気持ちで各種相場に向き合うことが重要であると、考えます。

[参考]貴金属関連の投資商品例

長期:

純金積立(当社ではクレジットカード決済で購入可能)
純金積立・スポット購入
投資信託(当社ではクレジットカード決済、楽天ポイントで購入可能。以下はNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)対応)
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)
三菱UFJ 純金ファンド
ゴールド・ファンド(為替ヘッジなし)

中期:

関連ETF(NISA対応)
SPDRゴールド・シェア(1326)
NF金価格連動型上場投資信託(1328)
純金上場信託(金の果実)(1540)
NN金先物ダブルブルETN(2036)
NN金先物ベアETN(2037)
SPDR ゴールド・ミニシェアーズ・トラスト(GLDM)
iシェアーズ ゴールド・トラスト(IAU)
ヴァンエック・金鉱株ETF(GDX)

短期:

商品先物
国内商品先物
海外商品先物
CFD
金(ゴールド)、プラチナ、銀、パラジウム