週明け4日(月)の東京株式市場の日経平均株価(225種)は軽々と4万円の大台を突破して始まり、終値は前週末比198円高の4万0,109円まで上昇しました。先週、米長期金利の低下を背景に半導体など米ハイテク株が上昇した流れを受けて、日経平均は史上最高値を再び更新し、初めて4万円の大台に乗せました。

 先週の相場では、1日(金)の米国株が続伸し、機関投資家が運用指針にするS&P500種指数は前週比0.95%高の5,137ポイントで史上最高値を更新。ハイテク株が集まるナスダック総合指数も米国の物価指標が予想通り低下したことを好感して、2021年11月に付けた取引時間中の史上最高値を2年3カ月ぶりに更新。1日の終値は前週末比1.74%高と大きく上昇しました。

 3月1日(金)までの日本株は「手じまい売り」と「押し目買い」、「高値警戒感」と「循環物色」「見直し買い」が綱引きする一進一退の展開でした。しかし、日本株は1日(金)に急騰。日経平均株価は前日比744円上昇して史上最高値を更新。4万円の大台まであと90円に迫る3万9,910円で取引を終了しました。

 先週1週間を通じて目立ったのは、出遅れ銘柄の物色です。

 銀行セクターが国内の金利上昇に伴い、週間の業種別上昇率ランキングの首位に。主力の三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)は1日前週末比5.4%高でした。

 また中国経済悪化懸念で上昇相場のカヤの外にいた中国向けファクトリー・オートメーション関連株のファナック(6954)が5.8%高、安川電機(6506)が10.4%高。

 これまで「冷酷なまでに」といっていいほど無視されてきた中小型の成長株にも物色の輪が広がり、新興のIT関連株が多数組み入れられた東証グロース市場250指数も2.9%高と上昇。

 同指数の組み入れ比率上位銘柄であるオンライン会計ソフトのフリー(4478)が44.3%も急騰するなど、個人投資家に人気が高い新興成長株にも盛り上がりの兆しが見えてきました。

 ただ、日経平均がバブル経済期から34年ぶりに最高値を更新した2月第3週(19~22日)には外国人投資家が日本の現物株を8週ぶりに売り越し、売却額は786億円だったことが判明。日経平均4万円乗せで目標達成感が高まり、今週は利益確定売りに押されて上昇相場が調整期間に入る可能性もありそうです。

 一方、米国では29日(木)に発表された1月の個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)が予想通り前期比2.4%の伸びまで低下し、インフレ率の鈍化が想定通り進んでいることが判明。週初には4.3%台だった米国の長期金利の指標となる10年国債の金利は3月1日(金)には4.1%台まで低下。

「悪い経済指標」が金利の低下をうながすことで、逆にナスダックが史上最高値を更新するなど株式市場は活気づきました。

 ただ2月29日(木)には、米国の商業用不動産向け融資の焦げ付きで業績が悪化しているニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)が内部統制に重大な欠陥があると発表して経営陣の交代を表明。

 3月1日(金)に株価が前日比26%下落するなど、米地方銀行の信用不安が再燃している点は気がかりです。

先週:出遅れ銘柄や半導体脇役株上昇が目立った日本株!米国の地銀不安再燃!

 先週、国内の金利正常化が進むのではないかという思惑で最も買われたのは銀行株でした。

 千葉興業銀行(8337)が前週末比23.5%高、肥後銀行や鹿児島銀行などを傘下に持つ九州フィナンシャルグループ(7180)が22.0%高となるなど、地銀株の上昇が目立ちました。

 また、船舶向けのディーゼルエンジンを製造する三井E&S(7003)は2月14日(水)に2024年3月期の業績上方修正を発表して以降、出遅れ株として急上昇していましたが、先週は米国政府による湾港クレーン国産化の恩恵を受けそうなことが材料視されストップ高を連発。2月の1カ月だけで株価は2.4倍以上も急上昇。

 このように相場が絶好調なときには一種のマネーゲームの対象になるような「材料株」が登場し、株価の急騰劇が話題になることが多くなります。

 そんな中、2月29日(木)発表の米国の1月PCEデフレーターが予想通り物価高の鈍化を示したことから、金利低下が追い風となる半導体関連株も上昇。

 半導体製造に必要な超純水製造装置メーカーの野村マイクロ・サイエンス(6254)が26.0%高。

 半導体の樹脂封止装置大手のTOWA(6315)が20.6%高と急伸するなど、半導体関連の「脇役」的銘柄に物色の波が広がりました。

 先週は久々に日本の中央銀行にあたる日本銀行高官の発言にも注目が集まりました。

 2月29日(木)、日銀の高田創審議委員が滋賀県で開かれた金融経済懇談会後に「物価目標の実現がようやく見通せる状況になってきた」と発言したことで、3月19日(火)終了の金融政策決定会合でマイナス金利解除が行われる見通しが浮上。

 国内の金利が上昇し、為替市場では1ドル=149円20銭台まで円高が進行しました。

 しかし、植田和男日銀総裁が29日(日本時間3月1日(金))、ブラジル・サンパウロで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議後の記者会見で、「物価目標の実現はまだ見通せる状況にないと否定したことでドル/円相場は再び1ドル=150円台に上昇。3月1日の日本株急騰を後押ししました。

 日本株と同様、先週の米国株は物価指標のPCEデフレーターの鈍化を好感。

 AI(人工知能)向け半導体製造でエヌビディア(NVDA)に次ぐ存在として注目される半導体メーカーのアドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)が前週比14.8%も急伸するなど、引き続きAI関連株が市場をけん引しています。

 ただ、ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)が内部統制の重大な欠陥を理由に経営陣の交代を迫られるなど、米国地銀の商業用不動産を巡る信用不安は今後も全体相場の急落要因になりそうです。

 現状は小粒な米国地銀の株価下落に過ぎませんが、米国同様に商業用不動産の価格下落に苦しむ欧州の銀行などに金融不安が飛び火すると、世界的な株安につながるリスクがないとはいえません。

今週:パウエル議長の6月利下げ説排除や日銀の3月マイナス金利解除見通しで下落も!?

 3月に入った今週は、米国の経済指標・イベントが満載の1週間になります。

 3月5日(火)には、ISM(全米供給管理協会)の2月非製造業景況指数が発表に。米国は製造業が不振にもかかわらず非製造業=サービス業が好調なことで景気がハードランディング(急降下)せずに済んでいるだけに注目度の高い指標です。

 今週最大の注目は、6日(水)夜に米議会下院の金融委員会、7日(木)夜に上院銀行委員会で行われるFRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長による議会証言です。

 米国市場では物価高の鈍化で6月利下げ説が台頭し、株価上昇の下支え役になっています。パウエル議長がその希望的観測を完全に打ち消して、2024年後半以降まで様子見、場合によっては2024年中の利下げ回数を減らす、といった発言をすると、相場が急落するきっかけになるかもしれません。

 8日(金)には、2月の米国雇用統計も発表。農業部門以外の新規雇用者数は前月比19.0万人増の予想ですが、前回2月2日(金)発表の1月分は前月比35.3万人増と予想を大幅に上回り、平均時給も約2年ぶりの伸びでした。

 2月の雇用統計があまりに良すぎるとFRBの利下げ時期が2024年最終盤までズレ込む悲観論が台頭する可能性もあるため、株価には逆にネガティブでしょう。

 一方、国内では、日銀の中川順子審議委員が7日(木)に島根県の会合で挨拶を予定しており、再び同様の発言があるのかどうか関心が集まります。

 2月29日(木)~3月1日(金)にブラジルで行われたG20では各国首脳が、インフレ率の後退や世界経済がソフトランディング(軟着陸)する可能性が高いという認識を共有したものの、ロシア・ウクライナ戦争による対立から共同声明を採択するには至りませんでした。

 実際、4月以降もOPEC(石油輸出国機構)プラスが原油の減産措置を続けるという見方が台頭し、2月後半以降、原油価格が上昇するなど、世界的な資源価格の高止まりが続きそうです。

 先週表面化したニューヨーク・コミュニティ・バンコープの信用不安が拡大するかどうか。

 また、2月第3週に日本の現物株を小幅売り越しに転じたように、外国人投資家が日経平均4万円台到達を機に利益確定売りに走るかどうかなどが、今週の注目要因になりそうです。

 先週同様に旺盛な循環物色が続き、日経平均が4万1,000円、4万2,000円台を目指して、するすると上昇する展開も考えられますが、高値警戒感や材料出尽くしでいったん上昇相場が調整するリスクに注意すべき1週間といえるでしょう。