世界の民主主義の行き詰まりも関心低下要因

 もともと世界が一枚岩になれない状況だったことも、「脱ウクライナ危機」を加速させた一因であると考えられます。ロシア非難、戦争停止を採決できないのは、世界が分断のさなかにあるためです。

 以下は、スウェーデンのヨーテボリ大学のV-Dem研究所が公表する、自由民主主義指数の状況です。同指数が0.4以下の「民主的な度合いが低い国」の数と0.6以上の「民主的な度合いが高い国」の数の推移です。2010年ごろから西側と非西側の分断が進んだ様子を確認することができます。

図:自由民主主義指数0.4以下および0.6以上の国の数(1945~2022年)

出所:V-Dem研究所のデータをもとに筆者作成

 こうした西側と非西側の分断は、冒頭の国連総会の決議の結果にも表れています。長期視点分断の流れの延長線上に、ウクライナ戦争にかかわるロシア非難の決議の分断があるといえます。

 以下は、賛成が70%を上回った2023年2月の決議時にロシアを非難する賛成を選択し、かつ賛成が40%にとどまった同年12月の決議時に棄権、欠席、反対を選択した国の数、つまりエネルギー価格の急落などで事態が急変した2023年に、ロシア非難における姿勢を賛成からそれ以外に変更した国の数です。193カ国中、63カ国が賛成からそれ以外に変更しています。

 ほとんどが中南米、アフリカ、中東など自由民主主義指数が比較的低い非西側の国です。インドネシアやマレーシア、ブラジルの名前があるのは比較的石油を重用している(自国で生産して自国で消費、余剰を輸出している)国々です。

 ロシアを強く非難する西側諸国は安定的に賛成(ロシア非難)です。それと同じ賛成を選択していた非西側の国々が昨年、賛成以外にいわば大移動したわけです。こうした大移動は、長期視点の西側・非西側の分断の延長線上にあると考えるのが自然でしょう。

 危機勃発直後は世論を配慮してロシアを非難したものの、もともと一枚岩になれない分断状態にあった上、エネルギー価格が急落してウクライナ危機と距離を置く隙(すき)ができたため、分断が顕在化したと筆者は考えています。この点は「脱ウクライナ危機」を加速させたといえます。

図:2023年2月23日から12月19日にかけて賛成からそれ以外に姿勢を変えた国

出所:国連の資料をもとに筆者作成