まるで「脱ウクライナ危機」

 賛成票が減る可能性があるため決議案の提出を断念した…との趣旨の報道があったのは、ロシアによるウクライナ侵攻が始まって2年になるのに合わせて開催された国連総会直後です。2月23日に開催されたこの総会ではロシアを非難する決議案は提出されませんでした。

図:ウクライナ関連のロシアを非難する国連総会決議(危機勃発直後および2023年)

出所:UN Watch Databaseのデータをもとに筆者作成

 上図の通り、侵攻から1年が経過した2023年2月、ウクライナが提出したロシアを非難する決議案は193の加盟国中141カ国(73%)の賛成で採択されました。ですが、同年5月の決議では賛成は87カ国(45%)に減り、12月の決議では78カ国(40%)に減りました。

 こうした賛成票の減少傾向を憂慮し、2年目となった今年の総会では決議案の提出が見送られました(ウクライナ側の判断だったと報じられている)。

 賛成票が減少したのは、「欠席」と「棄権」という明確な姿勢を示さない票が増加したためです。2023年12月の決議の際、世界の52%(棄権41%+欠席11%)がロシアを明確に非難しなかったことは、大変大きな事態です。

 棄権票だけで賛成票(40%)を上回る決議は、そもそもその決議案への関心度が低いか、多くの国が賛成も反対もできない理由を抱えているか、いずれかでしょう。世界では「脱ウクライナ危機」(くれぐれも脱ウクライナではない)が進んでいるようにみえます。