先週の日経平均株価(225種)は1週間で1,589円(4.3%)高の3万8,487円まで劇的に上昇し、16日(金)の取引時間中には一時3万8,865円となり、バブル最盛期の1989年12月29日に付けた終値の市場最高値3万8,915円まであと約50円に迫りました。
日経平均が34年2カ月ぶりに史上最高値を更新する「歴史的な日」が今週訪れる可能性も高く、4万円の大台に乗るのも「時間の問題」かもしれません。
ハイテク株の組み入れ比率が高い日経平均の急上昇を支えているのは、前週比18.8%も上昇した東京エレクトロン(8035)をはじめとした半導体関連株です。
東京エレクトロンは9日(金)に2024年3月期の業績上方修正と1株当たり配当の27円増額を発表して以降、株価の推移は堅調でした。さらに米国の半導体製造装置メーカー大手のアプライド・マテリアルズ(AMAT)の2024年2-4月期の売上高見通しが市場予想を上回ったことも追い風となり、16日(金)の東京エレクトロンの株価は前週末比7.4%高となりました。
今週21日(水)夜には、AI(人工知能)熱狂相場に火を付けた高速半導体メーカーのエヌビディア(NVDA)の2023年11月-2024年1月期の四半期決算が発表されます。
株価は2023年の1年間で前年末の約3.3倍に跳ね上がった後、2024年も前年末比46.6%まで上昇を続けています。
先週14日(水)にはグーグルの親会社アルファベット(GOOG)を抜いて米国第3位の時価総額まで上り詰めてきただけに、その決算発表次第で相場が大きく乱高下する可能性が高いでしょう。
先週の米国では物価の高止まりを示す1月のCPI(消費者物価指数)、PPI(卸売物価指数)の発表で、機関投資家が運用指針にするS&P500種指数は16日(金)、前週末比0.42%安と6週ぶりに下落。
物価が高止まりすると金利も上昇しやすくなるため、長期金利の指標である米国の10年国債の金利は4.2~4.3%台まで再上昇し、米国株の足を引っ張っています。
懸念材料が出てきた先週の米国株の影響で、週明け19日(月)の東京株式市場の日経平均終値は反落し、前週末比16円安の3万8,470円でした。相場上昇を引っ張ってきた半導体関連の東京エレクトロンやアドバンテスト(6857)が売られました。ただ、商社や銀行などバリュー(割安)株が堅調で、日経平均の下落幅を抑えました。
先週:日本株は業績・株主還元相場が続く、米国の物価指標高止まりが懸念材料に急浮上!
先週の日本株は引き続き2023年10-12月期の決算発表で好業績や増配、自社株買い、株主優待新設を発表した企業の株価が急騰しました。
全体相場にとってもインパクトが大きかったのは、9日(金)に予想を上回る業績見通しを発表した東京エレクトロンや半導体成膜装置のKOKUSAI ELECTRIC(6525)。16日(金)のKOKUSAI ELECTRICの株価は前週末比21%も上昇しました。
そのほか、オフィス家具メーカーのイトーキ(7972)が13日(火)に、2024年12月期の2ケタ連続増益予想と1株当たり10円の大幅増配計画を発表。16日(金)の株価は前週末比43%も上昇するなど、内需株も健闘しました。
ITセキュリティ会社のセグエグループ(3968)は13日(火)、2023年12月期の2ケタ増収に加えて株主優待制度の新設を発表。
優待内容が株式3分割後に1,000株(投資金額約61.3万円予定)を保有する株主に年間3万円のクオカード贈呈という非常に魅力的なものだったこともあり、株価が1週間で2倍以上に値上がりしました。
個人投資家にも人気の高い株主優待制度の新設が株価倍増につながるのは、ひとえに全体相場が好調だからでしょう。
一方、米国では13日(火)発表の1月CPIが前年同月比3.1%の伸びで市場予想を上回りました。変動の大きい食品・エネルギーを除くコアCPIも前年同月比3.9%の上昇で前回12月から横ばいと、予想に反して高止まりしました。
15日(木)発表の1月小売売上高は前月比0.8%減と予想を大幅に超える落ち込みになり、米国の個人消費の鈍化で早期利下げ期待が再燃したため、米国株は上昇。
しかし、16日(金)発表の1月PPIが、病院外来費やホテル代などサービス価格の伸びで前月比0.3%増と予想以上に上昇したことで、インフレ懸念が台頭。AI関連株が集まるナスダック総合指数が前週末比1.34%下落するなど、米国の主要3株価指数は週間でそろって下落しました。
これを受け、米国金融界の重鎮であるサマーズ元米財務長官が「次の動きが利下げではなく、利上げになる可能性はそれなりにある」と発言するなど、米国株上昇の大前提になってきた2024年早期利下げ期待が大きく後退しました。
ただ、米国で物価が高止まりすると、米国の金利が上昇して日米金利差拡大による円安トレンドが強まります。
実際、先週の為替市場では米国1月CPIの高止まりを受け、外国為替市場の円相場は1ドル=150円台に再突入しました。
円安トレンド継続は日本株にとっては追い風になるため、今後は日本株が米国株を上回る上昇を続ける可能性もあります。
今週: 日経平均の最高値到達は秒読み段階?FOMC議事録&エヌビディア決算で乱高下必至!?
今週の日本株は決算発表シーズンが終わったこともあり、材料出尽くし、材料難で反落する恐れもありそうです。
ただ、19日(月)の米国市場が祝日で休場のため、20日(火)までは米国株の動向に大きな影響を受けません。先週までの勢いが続けば、1ドル=150円台の円安を好感して、意外にあっさりと日経平均が史上最高値を更新する可能性もあります。
米国では、2024年3月利下げに否定的な姿勢が鮮明になった1月31日(水)終了のFOMC(連邦準備制度理事会)の議事録が21日(水)に公表されます。
FOMCの参加理事たちがもし「利下げ時期は2024年後半以降」と明言しているようなら、現在、5月利下げ開始を織り込んでいる米国株にとってはネガティブといえるでしょう。
同じ21日(水)にはAI熱狂相場の火付け役になっている米国の高速半導体メーカー・エヌビディアの決算発表も控えます。
前回決算発表時の今四半期の売上見通しはAI向け半導体の旺盛な需要で予想を上回ったものの、米国の対中半導体輸出規制の影響で主力の中国販売は大幅減収予想でした。
そんなエヌビディアの業績が市場予想を大幅に上回れば、日本の半導体株もツレ高するはずなので、日経平均が史上最高値を更新する可能性がぐっと高まりそうです。
一方、中国での減収が予想以上に業績の足を引っ張るようだと、ここまで急上昇し過ぎてきた分、日米半導体株が急落する引き金になりかねません。
決算発表が行われるのは日本時間の22日(木)早朝のため、22日(木)の日本株は急騰、急落のどちらに振れても、非常に激しい値動きになりそうです。
先週15日(木)には日本の2023年10-12月期実質GDP(国内総生産)の速報値が発表になり、前期比年率換算でマイナス0.4%成長だったことが判明しました。
事前予想は前期比年率プラス1.2%成長でしたが、予想を大きく下振れ。物価高や実質賃金の低下による個人消費の落ち込みが響きました。
物価上昇も考慮した日本の名目GDPはドイツに抜かれて世界第4位に転落。日本経済は一般的に「景気後退」と定義される2四半期連続のマイナス成長に落ち込んでいます。
景気後退(リセッション)入りしている国の株価が史上最高値を更新して、なお上昇し続けるのはなかなか難しいところ。
先週の日本株はこの景気後退をまったく材料視せず、ある意味、「勢い」だけで上昇を続けました。しかし、今週は決算発表終了で個別企業の業績や株主還元策の面での後押しがなくなることもあり、株価が調整局面に入っても不思議ではありません。
日経平均の採用銘柄225社の株価が今期の予想1株当たり純利益の何倍まで買われているかを示す予想PER(株価収益率)は16日(金)終値時点で16.27倍まで上昇。
PERが20倍前後で推移する米国のS&P500に比べるとなお割安ですが、日経平均のPERの適正水準といわれる15倍を超え、割高感が出ている点も気がかりです。
特に主力の東京エレクトロンの予想PERは約48倍で、2024年3月期の1株当たり純利益の48年分を織り込んだ水準まで上昇。半導体関連株は「バブル」といっていいほど割高な水準まで買われています。
とにかく、今週は日米の株価急上昇のけん引役だった米国エヌビディアの日本時間22日(木)早朝の決算発表次第で相場が上にも下にも大きく動く乱高下が予想されます。
いったん急騰した後に急落するパターンもあるので注意が必要でしょう。
ただ、もし急落するとしたら、それは上昇トレンド中の株価が利益確定売りで調整する「押し目」になる可能性も高く、その後の反転上昇を狙った押し目買いのチャンスといえるかもしれません。