2023年10-12月期決算が好感された高配当利回り銘柄に注目

 2023年10-12月期の決算発表も2月14日でほぼ一巡します。10-12月期決算は年度の後半、第3四半期の決算となる企業が多く、ここで業績への評価が高まった銘柄は、2025年3月期の業績に対しても相対的に安心感が高まりやすいでしょう。

 2025年3月期のさらなる増配なども想定できることで、10-12月期決算評価が高まった高配当利回り銘柄に注目したいと考えます。3月末にかけては、高配当利回り銘柄へのNISA資金も流入が見込めることで、今年は例年以上に配当権利取りの動きが活発化しやすい状況ともみられます。

 2月9日現在で配当利回りが4%以上ある銘柄の中で、主に長期資金のNISA投資の対象となりやすい大型株、さらに、10-12月期の決算発表を受けて、直後に株価が上昇という形で反応した銘柄をピックアップしています。

(表)足元好業績で高配当利回りの大型株

コード 銘柄名 配当利回り
(%)
2月9日終値
(円)
時価総額
(億円)
成長率
(%)
5938 LIXIL 4.60 1,956.0 5,615 7.0
5401 日本製鉄 4.50 3,557.0 33,802 4.8
4042 東ソー 4.17 1,918.0 6,235 5.9
8130 サンゲツ 4.12 3,400.0 2,012 6.5
1820 西松建設 4.01 4,314.0 2,398 9.9
注:上昇率は決算発表(業績修正)後の最大上昇率

銘柄選定の要件

  1. 配当利回りが4.0%以上(2月9日現在)
  2. 時価総額が2,000億円以上
  3. 直近の決算発表を受けて株価が上昇

厳選・高配当銘柄(5銘柄)

1 LIXIL(5938・東証プライム)

 2011年にトステム、INAX、新日軽、サンウエーブ工業、東洋エクステリアの5社が統合して誕生した国内最大手の住宅設備機器メーカーです。トイレ、洗面化粧台、浴室、キッチンなどのウォーターテクノロジー事業(LWT)、窓や玄関ドア、エクステリア製品、インテリア建材などのハウジングテクノロジー事業(LHT)を展開します。

 世界150カ国以上で事業展開、ショールーム数は16市場116拠点(2023年3月末現在)にのぼります。GROHE、American Standardといった世界的ブランドも傘下に収めています。

 2024年3月期第3四半期(4-12月期)の事業利益は266億円で前年同期比26.7%増となっています。LHTが価格改定の浸透に加えて、断熱リフォーム商材の伸長によって大幅増益となり、LWTの減益をカバーする形になっています。2024年3月期通期では400億円で前期比55.4%増の予想と、期初計画を据え置いています。年間配当金は前期比横ばいの90円を計画しています。

 LWTの欧米販売が低迷しているため、2024年3月期の会社側業績計画は下振れるとの見方がコンセンサスになっています。

 ただ、10-12月期の決算は、リフォーム実施者に政府から補助金が付与される「窓リノベ事業」でサッシ事業が好調推移となったことから、市場予想は上回る着地になりました。市場の過度に悲観的な見通しは今後改善に向かう可能性が高いでしょう。

 また、売却済み子会社に関連する損失を10-12月期に特別損失に計上していますが、これは悪材料出尽くしとも捉えられそうです。

2 日本製鉄(5401・東証プライム)

 2012年に住友金属と合併して誕生した鉄鋼大手企業です。粗鋼生産は国内で4割強のシェアを占めるほか、世界でも第4位の位置づけとなっています。自動車用鋼板、高級シームレス鋼管、電磁鋼板など高級鋼板に強みを持っています。国内に6製鉄所を構えるほか、海外でも15カ国、51社(2023年5月現在)の製造拠点があります。

 エネルギーロスを低減させる電磁鋼板や自動車の軽量化につながる超ハイテン鋼板など、カーボンニュートラル貢献製品に注力しています。需要分野別では自動車、土木・建築で焼く7割を占めます。

 2024年3月期第3四半期(4-12月期)の事業利益は6,923億円で前年同期比9.1%減となっています。世界粗鋼生産の低水準の推移が続く中、海外市況分野のスプレッド低迷など厳しい事業環境となっています。

 ただ、2024年3月期通期事業利益は従来予想の7,400億円から8,000億円、前期比12.7%減に上方修正しています。本体の国内製鉄事業の利益上振れが主因となるようです。年間配当金も150円から160円に増配を発表しています(前期比20円減)。

 厳しい事業環境下での増額修正・増配にはポジティブなインパクトが強いと感じられます。2025年3月期には、中国景気の底打ちが期待されるほか、カナダ原料炭鉱山のElk Valley Resourcesの持分損益がプラスに寄与し始めることで、高い配当水準の継続が見込めるでしょう。

 また、足元で米USスチールの買収を発表しています。買収金額の負担は大きく、目先的には一段の株主還元拡充期待は高めにくいですが、業容拡大に向けた積極施策として中長期観点からは大いに評価できると考えます。