好決算や株主還元策の大盤振る舞いもあって、先週の日本株は続伸しました。

 9日(金)の東京株式市場の日経平均株価(225種)終値は前週末比739円(2.0%)高の3万6,897円で終了。

 9日(金)の取引時間中には一時3万7,287円の高値をつけました。

 先週の日本株上昇に弾みを付けたのは、米国市場でAI(人工知能)熱狂相場が再来したこと、日本の金融政策を決める日本銀行の総裁、副総裁から金融緩和継続を肯定するハト派発言が飛び出したことの2点でした。

  AIの普及もあって、英国の半導体設計会社アーム・ホールディングス(ARM)は7日(水)、2024年3月期の通期業績見通しを大幅上方修正。米国市場に上場したADR(米国預託証券)が9日、前週末比62.3%高と急上昇。

 同社のハースCEO(最高経営責任者)の「AIは一生で最も大きな好機。そしてまだ始まったばかり」という発言がAIブームの再加熱につながりました。

 英アームHDの親会社である日本のソフトバンクグループ(9984)も7日(木)以降急騰し、9日の株価は前週末比23.8%も上昇。

 同社の組み入れ比率が高い日経平均株価続伸の原動力になりました。

 日銀の内田真一副総裁が8日(木)、奈良県で開かれた金融経済懇談会で「マイナス金利を解除しても、その後、どんどん利上げしていくことは考えにくい」と発言。

 この発言が日銀の超低金利政策が当面続くと受け止められ、8日の東京外国為替市場では1ドル=149円50銭近くまで円が売られたことも外需株の上昇に拍車をかけました。

 植田和男総裁が翌9日に衆議院予算委員会で、「マイナス金利解除を実施したとしても、緩和的な金融環境が当面続く可能性は高い」と発言し、日銀の緩和姿勢継続が改めて強調されました。

 死角といえる死角がほとんど見当たらない日本株ですが、過去のアノマリー(値動きのクセ)では、年末年始に上昇相場が続くと2月に急落するケースも多いもの。

 ただ、12日(月)の米国市場ではAI関連の主力株である高速半導体メーカーのエヌビディア(NVDA)アマゾン・ドット・コム(AMZN)を一時抜いて時価総額で米国企業4位になるなどAI熱狂相場が続きました。米景気の先行きへの安心感から投資家がリスク選好姿勢を強め、ハイテク銘柄が物色されました。

 連休明けの13日(火)の東京株式市場では、日経平均終値が前週末比1,066円高の3万7,963円でした。バブル経済期の1990年1月以来約34年ぶりの高値となりました。2024年3月期業績予想を上方修正した東京エレクトロン(8035)が大幅に上昇したほか、ソフトバンクグループなども値を押し上げました。

 午後の取引では一時3万8,000円の大台に乗りました。今週前半も日本企業の2023年10-12月期の決算発表が続きます。好決算続出なら、日経平均株価が史上最高値を更新する可能性もありそうです。

先週:1ドル150円に迫る円安と好決算・自社株買いで続騰、AI熱狂相場に沸く米国株も強い! 

 先週は好業績や増配・自社株買いなど手厚い株主還元策を発表した企業の株価が勢いよく上昇する相場展開でした。

 三井不動産(8801)の大株主、米国投資会社エリオット・マネジメントが三井不動産に対して1兆円の自社株買いを要求していると報じられました。三井不動産株は急騰し、週間では前週末比9.8%高となり上場来高値を更新。

 トヨタ自動車(7203)が6日(火)の取引時間中に2024年3月期の通期純利益予想を4.5兆円に上方修正しました。週間では12.6%も上昇しました。

 7日(水)までのたった1日で時価総額が6兆円も増えるほどの巨額マネーが、トヨタ株に流入しました。

 6日(火)に減益決算を発表した三菱商事(8058)でしたが、発行済み株式の10%に相当する5,000億円もの大規模自社株買いを表明して、週間で8.8%も上昇。

 ただ、2023年10-12月期の営業利益が前年同期比で減益に転じた空調設備世界一のダイキン工業(6367)が8.8%安。

 2024年3月期の通期業績予想を下方修正したシャープ(6753)が16.4%安。

 同じく通期業績予想を下方修正した三井化学(4183)が9.0%安に沈むなど、業績の悪い企業は大きく値を下げました。

 どんなに強い上昇相場でも、「足元の業績はどうか」「投資家のその銘柄や業種に対する期待感はどうか」という視点で旬な銘柄を選ぶことが個別株投資には必要です。

 一方、米国株は引き続き日本株以上に絶好調でした。

 機関投資家が運用指針にする9日のS&P500種指数は前週末比1.37%高で、ついに5,000ポイントの大台を超え、上値にまったく売り圧力がない状況です。

 上昇の原動力になっているのが、2024年に入って2月13日(月)終値までで前年末比45.9%も上昇している高速半導体メーカーのエヌビディア(NVDA)や32.5%高のフェイスブックの親会社メタ・プラットフォームズ(META)など「マグニフィセント・セブン」といわれる巨大IT企業。

 米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長が4日(日)のテレビ番組で「利下げ時期の検討は慎重に行う」と発言した他、多くの連邦準備銀行の地区総裁が2024年中の早期利下げを否定するなど、株式市場の逆風になりかねない発言を行いました。

 にもかかわらず、7日(水)夜の英国半導体設計会社アームHDの強気の業績見通しをきっかけにAI熱狂相場に火がつくなど、悪材料になりそうな話題がある中でも株価が上昇している点は注目に値します。

 日本では、2024年に入ってから9日(金)終値までの上昇率が前年比36.5%と群を抜くアドバンテスト(6857)あたりがAI関連株の主役かもしれません。

 先週のアーム決算で株価が急反発したアームの親会社ソフトバンクグループもAI関連株の主軸として注目が集まりそうです。

今週:日本は内需株決算に注目、米国は1月CPI鈍化なら続騰!? 急落リスクは? 

 今週前半は引き続き日本企業の2023年10-12月期決算が集中します。

 13日(火)には株価が割安で株主還元策の発表に期待が持てる資源会社のINPEX(1605)鹿島(1812)など数多くの建設会社。

 14日(水)には日銀による金融正常化が追い風になる第一生命ホールディングス(8750)など生保・損保会社やファミレスのすかいらーくホールディングズ(3197)など外食や食品会社など多くの内需企業が決算を発表します。

 米労働省が13日(火)に1月のCPI(消費者物価指数)を発表。

 市場予想では、前年同月比2.9%の上昇にとどまり、物価高の勢いが鈍化する予想です。

 ただ、前回の2023年12月CPIでも高止まりしていた家賃や宿泊代を含む住居費の上昇が鈍化しないようだと、株価がいったん調整モードに入るかもしれません。

 予想以上に伸びが鈍化すれば、ただでさえ上昇ムードが充満した日米の株価がさらに続伸する起爆剤になりそうです。

 15日(木)には米国の1月小売売上高、16日(金)には1月PPI(卸売物価指数)や2月のミシガン大学消費者態度指数の速報値も発表になります。

 順調に物価高が鈍化し、にもかかわらず小売売上高などが堅調で米国の個人消費が衰えていないのがベストシナリオでしょう。

 日本では15日(木)に2023年10-12月期の実質GDP(国内総生産)が発表されます。

 前期比年率換算で1.2%の成長が予想されていますが、堅調な外需などで上振れするようなら日本株がさらなる高値を更新する原動力になりそうです。

 では、絶好調の株式市場が急落するようなリスクは果たして、どこにあるのでしょうか?

 先々週に商業用不動産融資の焦げ付きによる業績悪化で株価が急落していたニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)株は、9日(金)に経営陣が自社株を購入したことが買い安心感につながり株価が急反発しています。

 2月10日(土)~17日(土)春節(旧正月)の休暇がスタートした中国では不動産バブルの崩壊や内需不振もあって、8日(木)発表の1月CPIが前年同月比0.8%のマイナスと4カ月連続で物価が下落するなど、かつての日本のようなデフレ経済に突入する懸念が広がっています。

 そのせいで中国株の代表的指数である香港ハンセン指数はこの1年ほどで20%近く下落していますが、1月下旬以降は中国政府の意向を受けた政府系金融機関「国家隊」による株価の買い支えやカラ売り規制で反転上昇。

 先週の香港ハンセン指数は前週比1.37%の上昇に転じています。

 自民党の裏金問題など政治の混乱や能登半島地震のような天災も不安要素といえば不安要素でしょう。

 2024年11月に控える米国の大統領選挙の共和党候補に選出される可能性が高いトランプ前大統領がもし新大統領になって従来の政策を大転換したら、という「もしトラ」リスクも浮上しています。

 ただ、本当の危機は誰もが思いもよらないところから出現するもの。

 株式市場をけん引するエヌビディアや日本の半導体関連株はさすがに上がり過ぎていますが、バブルがいつまで続くか、いつ終わるかは誰も予測不能。

 バブルが終わるまで上昇相場に便乗することが資産を大きく増やす近道なのも事実です。

 今週も、日経平均株価がバブル時の最高値3万8,915円に向かって足場を固めるような上昇相場が続く可能性は高そうです。