メタ・プラットフォームズ

1.2023年12月期4Qは、24.7%増収、営業利益2.56倍

 メタ・プラットフォームズ(以下メタ)の2023年12月期4Q(2023年10-12月期、以下前4Q)は、売上高401.11億ドル(前年比24.7%増)、営業利益163.84億ドル(同2.56倍)となりました。前3Qに続き大幅増収増益となりました。

 前4Qをセグメント別に見ると、フェイスブック、インスタグラム、メッセンジャー、ワッツアップの4大アプリ(メタはこの4大アプリをファミリーと呼んでいる)の広告収入が主たる収入となるファミリー・オブ・アプスは、売上高390.40億ドル(同24.2%増)、営業利益210.30億ドル(同96.9%増)となり、大幅増収増益となりました。このうち、広告売上高は387.06億ドル(同23.8%増)となりました。このセグメントの営業利益率は前3Q51.5%からさらに上昇し前4Q53.9%となりました。

 広告売上高の地域別売上高を見ると、前4Qはアメリカ&カナダが177.84億ドル(前年比18.5%増)、欧州が91.59億ドル(同32.7%増)、アジア太平洋が73.16億ドル(同22.6%増)、その他地域が44.47億ドル(同31.7%増)となりました。収益力の高いアメリカ市場で広告売上高が好調だったこと、欧州市場が回復してきたこと、中国の大口広告主からゲーム、ネット通販等の海外展開のための大口の広告発注があったことなどが寄与しました。

 一方、リアリティ・ラブス(もともとはメタバース事業のセグメントだったが、現在はこのセグメントで大規模ネットワークの構築を行っている)は、売上高10.71億ドル(同47.3%増)、営業損失46.46億ドル(前年同期は42.79億ドルの赤字)となりました。設備投資は前3Q65.43億ドルから前4Q76.65億ドルへ増加しました。1年前の2022年10-12月期90.43億ドルから減少しましたが、大規模ネットワーク構築のために設備投資が増加する傾向にあります。この結果、前4Qの減価償却費は31.72億ドルと1年前の2022年10-12月期23.76億ドルから増加しました。

 大規模ネットワークの構築継続がこのセグメントの赤字拡大の要因ですが、会社側は大規模ネットワーク構築を継続する方針なので、当分の間、リアリティ・ラブスの営業赤字は続く見込みです。

表11 メタ・プラットフォームズの業績

株価 469.59ドル(2024年2月7日)
時価総額 1,204,968百万ドル(2024年2月7日)
発行済株数 2,630百万株(完全希薄化後、Diluted)
発行済株数 2,566百万株(完全希薄化前、Basic)
単位:百万ドル、%、倍
出所:会社資料より楽天証券作成。
注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。
注2:EPSは完全希薄化後(Diluted)発行済株数で計算。ただし、時価総額は完全希薄化前(Basic)で計算。
注3:会社予想は予想レンジの平均値。

表12 メタ・プラットフォームズのセグメント別業績(四半期)

単位:100万ドル
出所:会社資料より楽天証券作成

グラフ3 メタ・プラットフォームズ:アプリ・ファミリーのDAU、MAU

単位:億人、出所:会社資料より楽天証券作成、注:フェイスブック、インスタグラム、メッセンジャー、ワッツアップのいずれかに最低1回ログインしたユーザーのDAU、MAU

グラフ4 メタ・プラットフォームズ:アプリ・ファミリーの1人当たり売上高

単位:ドル/人、出所:会社資料より楽天証券作成、注:フェイスブック、インスタグラム、メッセンジャー、ワッツアップの総売上高をマンスリーアクティブユーザー数(1カ月にこれら4アプリのいずれかに最低1回ログインした人の数)で割ったもの

2.メタ・プラットフォームズが描く生成AI時代のビジネスモデル

 メタが進めている大規模ネットワークの構築は、2021年にメタがメタバースを事業の中心にすると宣言してからです。ただし、メタバースがメタが当初予想していたほど早く立ち上がらないことが分かってからも大規模ネットワークの構築を継続しています。

 これは、生成AI時代になって、今も増加が続いているフェイスブック、インスタグラム等の主力アプリのユーザー31.9億人(フェイスブック、インスタグラム、メッセンジャー、ワッツアップのいずれかのアプリに1日1回以上ログインするユーザー数。2023年10-12月期)のスマートフォンの画面に効率的に広告を送るため、その広告を作成する広告主が広告を効率的に制作するための自社製生成AIを提供するため(すでに提供を始めています)、さらに主力アプリのユーザーも生成AIを使うために、今持っている以上の大規模ネットワークが必要になるためです。

 また、メタが開発した生成AI「Llama(ラーマ)」の商業版「Llama2」が2023年7月18日にオープンソースとして公開されました。これによって、多くの個人、企業が「Llama2」を使うことができ、「Llama2」を組み込んだAIシステムを構築することもできるようになります(実際には、クラウドサービスのようにアクティブユーザー数が多い場合には使用に制限がある模様)。また、オープンソースのコミュニティが不良箇所を見つけてくれたり、改良の手助けをしてくれるようになるため、メタの人的資金的負担も軽くなると思われます。「Llama2」はアマゾンのAWS、マイクロソフトのAzureにも提供されています。

 このビジネスモデルが完成すれば、メタの業績はこれまで以上のスピードで拡大する可能性があります。収益力も一層向上すると思われます。メタの新しいビジネスモデルに注目したいと思います。

3.楽天証券では2024年12月期、2025年12月期の高成長を予想

 今1Q(2024年1-3月期)の会社側は売上高ガイダンスは、345~370億ドルであり、レンジ平均値は357.5億ドル(前年比24.8%増)となる見込みです。引き続き好調な売上増加と利益増加が予想されます。

 また、2024年12月期通期については、会社側は売上高見通しを示していませんが、総コスト(売上原価+販管費)は940~990億ドルとしています。設備投資計画は前期実績281億ドル(固定資産投資+ファイナンスリース支払額。以下同様)に対して今期計画は300~370億ドルです。主な投資対象はAIサーバーと非AIサーバー、それらを置く次世代型データセンターです。AI等の優先分野の開発を強化するために優秀な人材を採用するため人件費も増加する見込みです。このため、リアリティ・ラブスの営業赤字は前期よりも拡大する見通しです。

 これらの会社側ガイダンスと、前4Qまでの実績を参考にして、楽天証券では2024年12月期業績を売上高1,650億ドル(前年比22.3%増)、営業利益660億ドル(同41.2%増)、2025年12月期を売上高2,000億ドル(同21.2%増)、営業利益860億ドル(同30.3%増)と予想します。2025年12月期は引き続きリアリティ・ラブスの営業赤字拡大が続くと想定したため、営業増益率が鈍化すると予想しましたが、増益率自体は高い状態が続くと予想されます。

表13 メタ・プラットフォームズのセグメント別業績

単位:100万ドル
出所:会社資料より楽天証券作成

グラフ5 メタ・プラットフォームズの年間設備投資

単位:億ドル、出所:会社資料より楽天証券作成

4.今後6~12カ月間の目標株価を前回の420ドルを640ドルに引き上げる

 今後6~12カ月間のメタ・プラットフォームズの目標株価を、前回の420ドルから640ドルに引き上げます。

 楽天証券の2024年12月期予想EPS21.33ドルに、想定PER30~35倍を当てはめました。楽天証券の2024年12月期予想営業増益率は41.2%ですが、大規模ネットワーク構築のためにリアリティ・ラブスの赤字が拡大しており、この赤字が会社想定以上に拡大した場合、全社の増益率が低下する懸念があることを考慮しました。

 引き続き中長期で投資妙味を感じます。

本レポートに掲載した銘柄アドバンテスト(6857、東証プライム)マイクロソフト(MSFT、NASDAQ)メタ・プラットフォームズ(META、NASDAQ)