先週の日本株は2023年10-12月期の決算発表が本格化し、好業績や増配・自社株買いを打ち出した企業を中心に底堅い展開でした。
日経平均株価(225種)の2月2日(金)終値は前週末比406円高の3万6,158円(前週比1.1%高)と大台を維持。
時価総額が大きな重厚長大企業の影響力が強いTOPIX(東証株価指数)が前週比1.7%高で日経平均の上昇率を上回るなど、割安な大型株が買われやすい相場展開でした。
PBR(株価純資産倍率)が0.6倍台で、株価が会社の解散価値に比べて割安な日本テレビホールディングス(9404)が国内の放送法によって株主名簿に記載されていない外国人株主に対する配当実施の定款変更や自社株買いを表明して前週比26.4%高となるなど、テレビ局の株が急騰しました。
日本株以上の強さを見せたのが米国株です。
米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)は1月31日(水)、FOMC(米連邦公開市場委員会)後の記者会見で、FRBのパウエル議長が2024年3月利下げの可能性は低いと発言。
31日には米国の地方銀行ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)が2023年10-12月期の赤字転落と減配を発表し、株価が急落。コロナ禍以降のオフィス需要の停滞による商業用不動産向け融資が不調で米地銀の金融不安が再燃しました。
しかし、2月2日(金)には、前日に2023年10-12月期の好決算と7兆円超の追加自社株買い・初の四半期配当実施を表明したフェイスブックの親会社メタ・プラットフォームズ(META)が前日比20.3%も上昇。
機関投資家が運用指針にするS&P500種指数が前週比1.38%高、ハイテク株主体のナスダック総合指数も史上最高値を更新しました。
AI(人工知能)の進化で本業のデジタル広告の業績が好調なメタをはじめとした巨大IT企業をけん引役に、米国株は日本株以上に絶好調で先週の取引を終えました。
米労働省は2日、1月の雇用統計を発表し、非農業部門新規雇用者数が予想を大幅に上回る前月比35.3万人増になるなど、米国の雇用が引き続き堅調なことが判明。
米国では金利が上昇し、日米金利差の拡大から2日のニューヨーク外国為替市場の円相場は1ドル=148円37~40銭と円安トレンドが進行。
日本株にとって追い風となる円安の進行や今週の好決算期待もあって、週明け5日(月)の日経平均の終値は前週末比196円高の3万6,354円となりました。
先週:決算本格化で割安大型株相場に!メタ・プラットフォームズ好決算が米国の地銀不安払しょく
先週は半導体株の急騰が一服したこともあって、2023年10-12月期決算で好業績や増配を発表した個別企業の株価上昇が目立つ相場展開でした。
1月31日(水)に今期2024年3月期の過去最高益更新予想を上方修正した九州電力(9508)は期末配当を20円から25円に増額したこともあって、2日(金)の終値は前週末比12.2%高。
電力価格の引き上げや足元の燃料価格下落で業績回復にわく電力・ガス業が業種別上昇率ランキング2位に輝くなど、日ごろは地味な業種にも市場のスポットライトが当たるのはひとえに相場が好調だからといえるでしょう。
スマートフォン向け偏光板など中国販売が収益源の日東電工(6988)が1月26日(金)に2023年10-12月期の好業績と自社株買いを発表し、2日(金)の終値は前週末比13.5%と高騰。
食品メーカーのカゴメ(2811)は1日(木)に前期の年間配当増額と今期2024年12月期の2期連続最高益更新予想を発表。2日の終値は前週比17.7%高となり、銘柄物色のすそ野も拡大しています。
相場が好調なときほど好業績な決算を発表した企業の株価は上がりやすくなるので、2024年現在の日本株市場は個別株投資を始めるには最適な時期かもしれません。
ただ先週は、相場の先行きに暗雲を投げかける米国発のニュースもありました。
一つは、先週31日(水)に政策金利の据え置きを決定したFOMC後の記者会見で、パウエルFRB議長が「3月利下げの可能性が高いとは考えていない」と述べたこと。
米国景気があまりに堅調すぎると、株価にとって追い風となる米国の利下げはかなり後にずれ込むかもしれません。
同じ31日(水)には、商業用不動産関連融資が多いニューヨーク・コミュニティ・バンコープが決算発表の席で予想外の赤字や減配を表明し、商業用不動産への関与が高い米国のほかの地銀にも金融不安の芽が広がりました。それを受けて、31日(水)のS&P500は前日比1.55%安と2024年最大の下げ幅を記録しました。
昨年2023年3月には、当時全米16位の資産規模だったシリコンバレー銀行が保有資産である米国債の価格の下落(金利は上昇)や、それにともなう預金者の取り付け騒ぎで破たんに追い込まれるなど、第1次米国地銀ショックが発生。
果たして、今回のニューヨーク・コミュニティ・バンコープの赤字決算が米国地銀第2の危機につながるかどうかは予断を許さない状況です。
ただ、先週の米国株はメタ・プラットフォームズの好決算などを受けて、FOMCや米国地銀などの悪材料を完全に払しょく。
米国の雇用関連指標も、30日(火)発表のJOLTS(雇用動態調査)の2023年12月求人件数は予想を超える902.6万件と労働需要は引き続き活発。
2月2日(金)発表の1月雇用統計の新規雇用者数は予想より大幅に良好で、平均時給も前月比0.6%上昇と加速。
米国の雇用が堅調そのものであることが米国株の4週連続の続騰を後押ししました。
今週:6日のトヨタ決算に対する反応は?好決算・円安続けば日本株は高値更新!?
米国の地銀の経営状況が少し不安ですが、先週の日米株を見ると、まさに好材料しかない、もしくは好材料しか注目されない相場環境となっており、日本企業の2023年10-12月決算がピークを迎える今週も続伸に期待できそうです。
中でも注目は、6日(火)の取引時間中13時半ごろに予定されているトヨタ自動車(7203)の決算発表。
同社はグループ会社の豊田自動織機(6201)によるディーゼルエンジンの国内排ガス認証不正を受け、同エンジン搭載車両の出荷停止に踏み切りましたが、その影響が出るかどうかに注目が集まります。
先週2日のトヨタ自動車の株価は前週末比2.0%高、不正を行った豊田自動織機も2日(金)発表の大幅増益決算に支えられて3.2%高となり、悪材料を無視して株価は上昇。
6日の決算発表で続伸となるか、材料出尽くしで下がるのか、さらなる悪材料発覚で急落するのかは、日本一の時価総額を誇る大企業だけあって全体相場にも影響しそうです。
その他、7日(水)にはPBR1倍割れの割安高配当株として注目される日本製鉄(5401)、8日(木)には業績安定の高配当株として新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の成長投資枠の投資対象としても人気が高いNTT(9432)や海外のIT企業の投資成績向上に期待できそうなソフトバンクグループ(9984)などが決算発表。
9日(金)には急騰する半導体株の主力である東京エレトクロン(8035)をはじめ575社が発表します。
今週、米国では5日(月)にISM(全米供給管理協会)の1月非製造業景況指数のほか、あまり大きな経済指標の発表はありません。
米国の中央銀行にあたるFRB理事の発言が複数予定されており、早期利下げの否定や、物価が高止まりした場合の利上げ再開についての言及があると、多少の悪影響が出るかもしれません。
米国でも、5日(月)に重機製造のキャタピラー(CAT)やマクドナルド(MCD)、7日(水)にウォルト・ディズニー(DIS)など、2023年10-12月の決算発表が続きます。
日本では6日(火)に12月の毎月勤労統計調査が発表。
物価上昇を考慮した実質賃金は前回11月分まで20カ月連続でマイナスが続いていますが、3月の春闘に向け日本の賃金上昇動向に注目が集まるかもしれません。
米国では先週2日(金)の予想を大幅に上回る好調な1月雇用統計の結果を受けて、長期金利の指標となる米国の10年国債の金利が再び4%を超えました。
米国経済がソフトランディング(景気軟着陸)どころかノーランディング(好景気持続)を続ける場合、再び物価が上昇に転じて、FRBが利下げではなく、利上げを再開する懸念が生まれる恐れもあります。
ただ、米国の緩やかな金利上昇は日米金利差の拡大による円安の進行で、日本株にとっては追い風。
円安や国内のインバウンド(訪日外国人)需要などを背景にした日本企業の好決算や増配・自社株買いで、日経平均がバブル後最高値更新に向かう流れに期待したいところです。