3 神戸製鋼所(5406・東証プライム)

 国内第3位の高炉メーカーです。事業領域は幅広く、アルミ圧延品、素形材、溶接材、建設機械・産業機械、プラント・電力など、バランスの取れた事業ポートフォリオとなっています。一方、鉄鋼大手の中では相対的に輸出比率は低く、自動車業界向け比率が高いことが特徴です。

 利益構成比は、素材系、機械系、電力の3分野で大きな差がなくなっている状況です。日本製鉄が第3位の大株主になっています。主に天然ガスを使用して鉄鉱石を還元する直接還元鉄事業に注力しています。

 2024年3月期第2四半期(4-9月期)経常利益は916億円で前年同期比2.2倍となっています。鉄鋼メタルスプレッドの大幅な改善、神戸発電所4号機の稼働や燃料費調整の時期ずれ影響の改善などが大幅増益に寄与しました。2024年3月期通期見通しは1,450億円で前期比35.7%増の見通しです。

 第2四半期業績が上振れたにもかかわらず、従来予想を据え置きと保守的な印象があります。機械や電力事業を上方修正する一方で、販売数量減少から鉄鋼アルミ事業は当初見込みを下振れるようです。年間配当金は前期比50円増の90円を計画しています。

 2022年3月期に経常利益は前期比5.7倍と急拡大しましたが、2024年3月期も一段と収益水準は高まる見込みになっています。機械事業や電力事業が収益成長をけん引する形となっています。2023年8月には配当性向の見直しを発表しており、これまで15~25%程度を目安としていたものを30%程度目安に変更しています。

 鉄鋼大手の中では市況変動による業績変動リスクは相対的に低く、中長期的な買い安心感があるといえるでしょう。また、日本製鉄とは株式持合い関係にある一方、JFEホールディングスとの鉄鋼事業統合が度々思惑視されるなど、業界再編の核とみられていることも買い材料といえるでしょう。 

4 フジクラ(5803・東証プライム)

 電線大手の一角となります。1957年にワイヤーハーネス、1979年に電子機器用FPC(フレキシブルプリント基板)の生産を開始、1980年代には光ファイバを開発し、電力・通信向けケーブルを含めたこれら製品が現在の主力事業となっています。

 自社工場跡地を活用した「深川ギャザリア」などの不動産賃貸収入も安定収入源です。近年では、収益性の高い高密度光ファイバケーブルの販売が業績拡大のけん引役となっています。1円の円安で年8億円程度の営業増益になるとみられています。

 2024年3月期第2四半期(4-9月期)営業利益は307億円で前年同期比12.7%減となっています。エネルギー事業は国内の新工場建設に伴う需要が好調でしたが、エレクトロニクス事業の減収の影響が響きました。一方、円安効果もあって従来計画の240億円は上回る着地になっています。

 2024年3月期通期では540億円で前期比23.0%減の見通しで、従来計画の600億円から下方修正しています。エレクトロニクス部門が下振れするようです。2024年3月期からは配当性向を30%とする方針で、年間配当金は前期比15円増の45円を計画しています。

 2023年3月期に業績は急拡大、営業利益は前期比83.2%増と大幅増益になりました。2024年3月期は減益見通しといえ、前期に続く過去2番目の高水準ではあります。北米でのエネルギー事業や情報通信事業部門におけるデータセンタ、FTTx(Fiber To The x)向け需要の拡大が背景となっているようです。

 現在、米国では補助金の動向を見極めるため通信キャリアの投資決定が先延ばしされているとみられており、今後は潜在需要の顕在化が見込めるでしょう。また、AI市場の拡大に伴いデータセンタ向けの光ケーブル・光部品需要も引き続き成長が見込めると考えます。

5 商船三井(9104・東証プライム)

 海運業界大手の一角です。2023年3月末現在、グループ運航船舶規模は697隻で5,067万重量トンとなっています。ドライバルク船(ばら積み船)では世界最大規模の戦隊を擁するなど強みを持つほか、自動車船は国内で初めて就航させ、LNG船でも世界トップクラスのシェアとなっています。

 2017年7月に、日本郵船(9101)、川崎汽船(9107)と定期コンテナ船事業を統合しています。2020年にはアジアで初めてSOV(Service Operation Vessel、洋上風力メンテナンス支援船)事業に参入しています。

 2024年3月期第2四半期(4-9月期)経常利益は1,545億円で前年同期比74.2%減となっています。持分法適用会社ONEで展開しているコンテナ船事業が、前年の市況高騰の反動で大幅減益となったことが減益決算の背景です。ただ、想定ほどの落ち込みはなく、従来予想比で経常利益は195億円ほど上振れました。

 2024年3月期通期では2,200億円で前期比72.4%減の見通しです。コンテナ船事業を下方修正する一方、ドライバルク、エネルギー事業を引き上げたことで、従来予想を据え置いています。年間配当金は前期比370円減配となる190円を計画しています。なお、配当性向は30%ですが、年間の下限配当は150円としています。

 コンテナ運賃市況の急騰によって、2022年3月期、2023年3月期の経常利益は破格の水準となり、これはあくまで特殊要因であったと捉えるべきでしょう。ただ、営業利益も2023年3月期は4.4倍と急拡大し、2024年3月期も続伸見通しとなっています。鉄鋼原料船やドライバルク、タンカーなどの市況回復が背景となっています。

 海運業界は総じて業績の変動率が大きくなりやすいですが、2024年3月期業績見通しにおける市況前提は平常時のものと捉えられ、2025年3月期以降は業績反動減の余地は乏しいでしょう。なお、コンテナ運賃は2024年に入って急伸しており、短期的には2024年3月期の業績上振れ期待が高まるものと考えられます。