日経平均最高値が視野に、新NISA資金流入期待は一段と高まる

 2024年1月からは新NISAがスタートしていますが、それに伴うNISA資金の流入状況の詳細は現状で定かになっていません。ただ、年初から株式市場の上昇ペースは加速しており、1989年の日経平均最高値3万8,915円も一気に視界に入ってくる状況となっています。

 最高値水準が接近するに従い、株式市場への関心は一段と高まる可能性が高く、今年から税制優遇措置が一層拡充された新NISAがスタートしていることもあり、新たな投資家層の参入は大いに想定されてくるでしょう。とりわけ、配当権利取りとなる3月末にかけては、高配当利回りの大型株にはNISA資金の流入期待が高いといえます。

 主に長期資金での投資となるNISA投資の対象としては、高配当利回りに加えて、業績成長力の高さも注目されやすいと考えられます。今回は高配当利回りで、かつ、新型コロナウイルス感染拡大前の2018年度と比較して収益水準が大きく拡大している銘柄をスクリーニングしています。

(表)収益成長率の高い高配当利回り銘柄

コード 銘柄名 配当利回り
(%)
1月22日終値
(円)
時価総額
(億円)
成長率
(%)
1662 石油資源開発 4.27 5,860.0 3,349 84.0
5334 日本特殊陶業 4.04 3,960.0 8,085 13.4
5406 神戸製鋼所 4.50 1,998.0 7,918 27.9
5803 フジクラ 3.78 1,189.5 3,519 14.3
9104 商船三井 3.65 5,200.0 18,824 19.0
注:成長率は今期予想含めた5期間の営業利益平均成長率

銘柄選定の要件

  1. 配当利回りが3.5%以上(1月22日現在)
  2. 時価総額が3,000億円以上
  3. 今期予想含め5期間の営業利益年平均成長率が10%以上

厳選・高配当銘柄(5銘柄)

1 石油資源開発(1662・東証プライム)

 原油や天然ガスなどの開発、採掘、生産、販売を行う資源開発会社です。現在、国内10カ所(北海道・秋田・山形・新潟)の油ガス田で原油・天然ガスを生産しています。海外では5カ所でプロジェクトを遂行中、また、シンガポールを拠点としたLNG(液化天然ガス)の調達なども行っています。

 原油価格の影響度としては、1ドル/バレルの上昇で3.5億円の純利益プラス要因、為替の影響度としては、1円/ドル円安で3.4億円の純利益プラス要因となるようです。

 2024年3月期第2四半期(4-9月期)の営業利益は285億円で前年同期比47.6%増となっています。米国、イラクなどの海外E&P(石油・天然ガス産業における探鉱・開発・生産フェーズ)事業、I/U(インフラ・ユーティリティ)事業などが増益に寄与しました。

 2024年3月期営業利益は488億円で前期比21.4%減の見通しで、上半期決算時に従来予想の389億円から上方修正しています。国産原油や国産天然ガス販売価格の上昇が主な上振れ要因となるようです。上方修正と合わせて、年間配当金も従来計画の200円から250円に引き上げています。前期比では120円の減配となる形です。

 営業利益は2021年3月期の41億円から2022年3月期には198億円、2023年3月期には620億円と、2年間で急激に拡大しています。原油価格の上昇、LNGの販売量増加・販売価格上昇などが主要因となっています。2023年3月期からは連結配当性向を導入し、配当水準も大きく引き上がっています。

 利回り水準が高いほか、ネットキャッシュが極めて豊富である状況下、東証のPBR1倍割れ改善要請もあり、継続的な自社株買い実施など一段の株主還元強化が図られていく可能性もありそうです。

2 日本特殊陶業(5334・東証プライム)

 世界最大のセラミックス企業グループと位置付けられる森村グループの一員です。自動車部品では、スパークプラグで世界シェア45%、センサで同40%のシェアを占めています。ほか、半導体用のセラミック製品なども手掛けていますが、自動車部品が利益の大半を占めます。

 輸出比率は8割超と高水準で、相対的に中国依存度は低く、欧州構成比が高くなっています。スパークプラグは補修用のウエートが高いため、比較的収益水準は安定しています。

 2024年3月期第2四半期(4-9月期)の営業利益は570億円で前年同期比6.4%増となっています。自動車生産の回復に伴って、プラグやセンサなど主力の自動車関連事業が伸長し、価格改善効果や為替の円安進展などもプラスに寄与しました。

 2024年3月期通期予想は従来の965億円から1,100億円、前期比23.3%増に上方修正しています。補修用プラグや半導体分野が想定以上に底堅かったことや為替の円安効果が上振れ要因となっているようです。会社側では配当性向40%を基本方針としており、年間配当金は従来計画の133円から160円(前期比6円減配)に引き上げています。

 2022年3月期営業利益が前期比59.3%増、2023年3月期が同18.2%増、さらに2024年3月期は同23.3%増と、ここ3年間は収益の拡大基調が継続する形になっています。半導体製造装置向けセラミックの収益拡大がけん引役ですが、2024年3月期に関しては自動車関連分野の改善が寄与しました。

 2025年3月期以降は市況回復に伴って再度半導体分野の伸長が期待でき、収益拡大基調は継続の見通しです。現在、200億円を上限とする自己株式の取得実施も行っています。なお、全固体電池など次世代電池の材料開発を進めていること、水素関連技術の高さなども今後折に触れ注目される可能性があるでしょう。