1日死去した経済評論家の山崎元氏は、資産形成に関する正しい情報発信に心血を注いできた。全ての人がお金の心配なく、充実した人生を送ることができるよう導きながら、金融業界の未来のために警鐘を鳴らすことも忘れなかった。トウシルの連載から、読者や金融業界に向けられた言葉を振り返る。

お金の損得よりも大事なものに気づくスイッチは、「怒り」です

「世の中には、お金よりも大事なものがあるのは明らかだが、具体的にどうやったらそれに気づくことができるのか」という問いかけに対し、熟慮の末たどり着いた回答だ。

 山崎氏は、住友信託銀行に勤めていた30代の頃、会社や業界の不正を内部告発したことがある。「『怒り』が損得を忘れさせて、考えをリセットするスイッチになった」と振り返る。

 一方、「『怒り』はそのままにしておいてはいけない」とも述べ、物事を判断する段階において、怒りを変換させることの大切さにも言及している。

「お金より大事なもの」にどうやって気づくか(2023/12/12)

問題を正しく理解して悪い商売を止めてくれる人が増えるなら、きっとわれわれ金融マンは、もっとマシな気分のいい世界でビジネスが出来るようになるのではないでしょうか

 金融業界の不都合な真実について警鐘を鳴らし続けた山崎氏。忖度のない発言、気骨な人柄とのイメージが強いが、その目的は決して批判や論破だけではない。

 根底には、「自分の仲間である金融マンが、もっと気持ち良く働くことが出来るような状態を作りたい」との思いがあった。「相手の『訂正可能性』にいつも開かれた状態でありたい」と述べ、人が改心し、自己改善する可能性を信じていた。

山崎元がホンネで回答「人生の生き方として、歯に衣を着せない発言は行うべき?」(2023/12/7)

偽物の山崎元を信用してはいけないし、本物の山崎元でも信用してはいけない!」という点がポイントだ

 SNSにおいて、山崎氏を装った投資勧誘が多発した問題を受け、読者へ注意を呼び掛けた。さらに、「もっと大切なこと」を伝えたいと発信したのがこの言葉だ。

「そもそも、お金の問題で他人を信用してはいけないという原則は、日頃から筆者が発信し続けている内容の一つ」と強調し、「仮に本物であっても、信用してはいけません!」と訴えている。問題の根底にある、個人投資家の金融リテラシーについて考えさせられるメッセージだ。

あなたは「山崎元」の投資勧誘を信じますか?なりすましから学ぶ金融リテラシー(2023/5/16)

リボ払いはダメ!、がん保険はダメ!、お任せ運用はダメ!。そして、「運用はほったらかし投資術」でいい

 記事は、山崎氏が大学生向けにマネーリテラシーに関する授業を依頼され、作成したスピーチ案が基になっている。受講者の記憶に残りやすいようシンプルな事例に絞り、山崎氏が繰り返し主張してきた内容を凝縮させた。

 ダメなことといいことの理由をたどると、金融経済という業界の構造を理解し、お金の無駄を避けるために何を選択すべきか、考えるヒントが得られる。記事公開後、「同じ感じで話してくれる人が、全国のあちこちに現れるといい」とも語っていた。

一コマで、一生役立つマネーリテラシー講座(2023/10/17)

新NISAは、(1)できるだけ早くNISA口座に資産を集めて、(2)全世界株式のインデックスファンド1本で運用すればいい。なすべきことは、それだけだ

 投資家のタイプや相場の状況によって最適な運用方法は異なる、という考え方に対して、「疑ってかかったほうがいい」というのが山崎氏の意見だ。2024年に始まった新しいNISAに関しても同様で、論理的に正しい方法は一つであると強調している。

 しかし、実際に個人投資家が新しいNISAを活用する際には、先入観などが影響し、最適解を選び損ねてしまうケースもあり得ると懸念。「『唯一の正しい方法』以外に注意を向けることは時間とコストの大きな無駄だ」と断言する理由を、丁寧に説明している。

新NISAの論理的に正しい唯一の活用法(2023/2/14)

お金は自由だ!

 お金は本来自由なものだが、「多くの人や金融サービスがその自由を無意味に制約している」と指摘。お金が持つ3つの自由(1.使い道の自由、2.大きさの自由、3.形の自由)を順に解説しながら、複雑にみえる金融ビジネスのからくりを解いている。

 この「3つの自由」の概念は、今日の山崎氏の主張の原点ともいえる。一見当たり前のように思える内容を突き詰めて考えると、「運用商品の手数料で対価を得るアドバイザー」「投資家の属性に合った運用」など、山崎氏が強く異を唱えるテーマにたどり着く。

 記事を再掲載する際、「この記事は、過去に筆者が書いた記事の中で最高のものである」とコメントしている。

お金が持つ3つの自由~その論理的帰結~(2023/11/21)

病気の現状はサンクコスト(埋没費用)だ

 山崎氏が癌にかかり、治療を通じて考えたことの一つに、人生の「持ち時間」がある。

「病気の現状はサンクコストだ」と言い切り、回収できないことへの後悔よりも、これからの「持ち時間」に集中すべきだと強調した。サンクコストの捉え方や、現時点で予想出来ないことにどう対処すべきか、といった考え方は、山崎氏が大切にしてきた投資思想とも共通する。

「癌によって『持ち時間』の使い方を意識すると、何をしたらいいかの見通しが案外立てやすい」との言葉通り、治療中も多方面で活動を続けた。トウシルでは連載「ホンネの投資教室」を休まず執筆したばかりか、読者の疑問に答える新連載も始動。お金に関する正しいことを発信するため、全力を注いだ。

「持ち時間」を有効活用し、豊かな人生を送ることの大切さを、身をもって示した。

山崎元、癌になってみて考えた。「どうでもいいこと」と「持ち時間」(2023/1/24)