【トウシル編集チームより注意喚起】
SNS上で多発している「なりすまし」投稿にご注意ください。

数カ月前より、複数のSNSにおいて、楽天証券および楽天証券経済研究所の関係者、トウシルの著者を装った偽アカウントが確認されました。
楽天証券公式アカウント以外からのダイレクトメッセージおよびリプライにご注意ください。
不審な投稿を見つけた場合は、決して個人情報の入力や金銭の振り込みなどを行わないよう、十分にお気を付けください。
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偽物の投資勧誘が現れる

 一か月以上前からポツリポツリとなのだが、ネット上にある筆者の画像を使い、アカウントをなりすました形で、「山崎元が投資を教える」と会員を募るような広告が、Facebook、LINE、Twitter、Instagram、などのSNSにしばしば現れるようになり、これに気づいた知り合いから連絡が来るようになった。

 本件は、筆者の名前を騙る、「偽・山崎元」による投資勧誘で、筆者の個人的なトラブルなのだが、楽天証券経済研究所のメンバーにも同様の被害に遭った者がいることもあり、今回はその顛末と教訓を書くことにする。

SNSの対応は鈍い

 SNSの世界で言う、アカウントの「なりすまし」であり、不正行為なので、最初はそれぞれのプラットフォームに不正を報告して対処して貰おうと考えた。特定のSNSの批判を行うことは本稿の趣旨ではないし、傾向として似たもの同士でもあるのだが、筆者から不正を報告しても、広告を見たユーザーが報告しても、それぞれのプラットフォームの対応は極めて鈍く、率直に言って有効なものではなかった。

 昨今では、イーロン・マスク氏が買収して経営改革中のTwitter社がよく話題になるが、Facebookなどその他のSNSも、多くは成長が止まり、経営的に次の一手を模索中だ。些か深読みのしすぎかも知れないが、「なりすまし」に対する対策を十分行うことなどを付帯サービスとする有料アカウントのサービスと準備するために、意図的に手を抜いているのか、と勘ぐりたい気持ちになった。

 流石に社内で「なりすまし対策は当面手を抜け」とは言わないだろうが、対策に割り当てる人の配置を減らすと同様の効果があるので、可能性が全く無いということもあるまい。

 近年、常に存在し無料で使えることが当然のようなつもりで、SNSを友人との連絡手段として利用して来たが、今後、どのSNSが利用に適するのかを見直す必要が出てきているように思う。例えば、Facebookだけで繋がっている連絡関係は見直しが必要かも知れない。

 ともかく、今回のなりすまし広告に関して、SNSのプラットフォーマーは頼りにならなかった。

 こうしている間にも、「偽・山崎元」を使った広告は各所に登場し、Twitterや筆者の会社のメール問い合わせのアドレスなどに、「これは山崎さん本人が関わっているものですか?」との問い合わせが増えて来た。

 問い合わせをくれた方々からの情報によると、「株式の個別銘柄投資のコーチ」であったり、「目新しい仮想通貨取引所への誘導」であったり、「投資案件の紹介(蓄電池など)」であったりと、勧誘を行っている連中が「カネを引っ張ろうとしている手段」は多様であるようだった。但し、「連中」は実は一人なのかも知れないし、複数なのかも知れない。複数の集団があるのかも知れないし、一つの集団がいろいろなものを繰り出しているのかも知れない。正体は不明だ。

 中には、相当の会員数が集まっているらしいグループもあると聞いた(そのように見せかけているだけかも知れないが)。

 問い合わせには、もちろん、「私は関わっていません。気を付けて下さい」という趣旨を答える訳だが、被害が出るかも知れず、少なからず不安な気持ちになった。

「私は投資勧誘をしません宣言」をする

 SNSのプラットフォーマーの対応に期待できないとなると、誤解する人を減らすべく、「私、経済評論家の山崎元は、ネット上で投資を教えることもありませんし、投資案件の勧誘を行うこともありません」という趣旨の発信をすることにした。

 筆者は、満足して使っているわけではないが、SNSではFacebookやLINEよりはまだしも「相対的にマシ」だと思ってTwitterを使っている。一日に一回程度、上記のような趣旨の発信をしてみた。

 すると、「危なく引っ掛かるところでした」とか、「おかしいと思っていました」という人がかなりの数で現れて、「偽・山崎元」の広告がかなり広い範囲に亘っていることがうかがえた。率直に言って気が滅入る。

 しかし、当面できることは、「私は投資勧誘をしません。山崎元を騙る広告は、私ではありません」と言い続けることしかない。同時に、山崎元は悪い投資勧誘をしないとの信用を付けるしかないとも思っていた。

 Twitterでは、筆者のツイートをリツイートして拡散してくれる人もいれば、揚げ足を取ろうとする人もいる。中には、「ネットに記事を散々書いておいて、それを利用されるのは自業自得だ。しかし、こいつはどの連載もきっと止めないよ」といった趣旨の、(売れない書き手の?)逆恨みなのかとも思える寒々しいツイートがあったりで、「威張る」、「批判する」、「揚げ足取り」、「自説の繰り返し」などが飛び交うSNSの殺伐とした雰囲気は相変わらずだ。昨今却って酷くなっているのかも知れない。

 ところで、宣言のツイートを書きながら思ったのだが、あれは「偽物の山崎元」ですと書くとして、自分には、「本物の山崎元」だと名乗る資格があるのだろうか。仮に、同姓同名の山崎元さんがやっているとした場合、彼は偽物なのだろうか? 筆者の画像を使っている点で、こちらが本物だと主張できそうに思えるが、「私が、本物の山崎元です」と言える根拠は何だ、などとも考えた。弱気である。

 この辺りまでの対応は、率直に言って、ぎこちないし、効果的でもない。不慣れな事態に巻き込まれて、当惑していると言ってもいいだろう。

「本物だったら、どうする気だったの?」

 何か特別に冴えた打ち手が見つかったわけではないのだが、発想上の転機が訪れた。

 山崎元を騙るLINEのグループで投資の勧誘(新しい名前の仮想通貨取引所への案内)を受けている方から、「これは山崎元さん、ご本人が関わっている案件ですか?」と問い合わせがあった。「私、経済評論家の山崎元は関わっていません」と答えたところ、「ありがとうございます。おかげで、引っ掛からずに済みました」という丁寧な返信が来たのだった。

 適切な疑問が一つ湧いた。「この人は、本物の山崎元がやっているなら、架空の仮想通貨取引所でも信用するか?」。それは、まずかろう。

「本物がやるなら信用してみてもいいかも知れない」という脆弱なマネーリテラシーでは、この人は、一生の間に一体何度騙されるのだろうか。率直に言って、こういう人とは関わりを持ちたくないし、そんな人は一人もいて欲しくない。

 そもそも、お金の問題で他人を信用してはいけないという原則は、日頃から筆者が発信し続けている内容の一つではないか。少し元気が湧いて来た。

 投資案件の勧誘については、「偽物の山崎元を信用してはいけないし、本物の山崎元でも信用してはいけない!」という点がポイントだ。

 結論を大書しておこう。

「仮に本物であっても、信用してはいけません!」

 筆者の反応は最初からこうあるべきだった。何とも愚図でお恥ずかしい限りだが、注意の喚起と、それ以上に「もっと大切なこと」を伝達しようと思って本記事を書いた。

 結論を繰り返す。「仮に本物であっても、信用してはいけません!」。