年末年始に増える「株価予想」「為替予想」

 年末年始の風物詩といえば、「2024年の株価はどうなる」「為替はどうなる」といった予想記事です。

 雑誌は2024年の相場予想で誌面をにぎわせますし、ネットでもそうした記事がたくさんシェアされています。

 株価予想は1年前のものをチェックしてみると、趣深いものがあります。現実はやはり予想を超えてくるところがあって、予想はなかなか的中しないことが確認できるからです。

 例えば、2023年の年初に発行されたとある経済紙では、日経平均株価の高値予想の平均値が3万1,000円台で、安値予想の平均が2万5,000円台だったそうです。ご存じのとおり、2023年の大引けは3万3,464円でした。予想はなかなか当たらないわけです。

 とはいえ、個別に見解を読めば、「大幅上昇する」「小幅に上昇する」「ほぼ横ばい」「小幅に下落する」「大幅下落する」という5種類のコメントがそろうのが一般的ですから、誰かは「予想的中」ということにはなります。

 また、5%くらいの株価上昇を中心に置いたレンジで予想を立てれば、当たる可能性は高くなります。そもそも国内株式の期待リターンが5.6%ほど(国の年金運用の基本ポートフォリオで用いている数字)だからです。

個人はつい、自分の期待する方向を選択して読んでしまう

 個人投資家がこうした未来予想で参考になるところはあるでしょうか。私はあまり参考にしないほうがいいかと思います。

 そもそも個人が1年後の世界経済、国内経済の動向を読み解くことは困難です。もちろん何らかの予想はできます。専門家は専門的知見を加えて、ロジックに基づく予想を試みます。

 しかし個人の心理的にみて、誰かの予想を中立的に判断することは難しいでしょう。人は自分の期待する方向感を持っています。そうなると同方向、同水準で予想を立てた経済評論家のコメントを読むのがもっとも「心地よい」ことになります。自分の意見の追認のためだけに読むのであればあまり有用ではありません。

 自分の予想とは乖離(かいり)、特に逆の予想を立てている意見を読むのは心地よくないことからそれを退けることになります。専門家のロジックや分析力を評価して、「私と考えが異なるが、この人の考え方が賛同できる」というなら未来予想のチェックもまだ意義がありますが、なかなか難しいものです。

 また、値下がり可能性についての警鐘はどうしても避けがちです。「新春にそんな記事を書くなよ」なんて感想を持ったとしたら、あなたはもう自分の中のバイアス(偏り)を認めたのと同じです。

 結局、自分の意見を再確認し、自分の居心地を良くするためにしか役に立たない可能性が高いわけです。

「上がる」「下がる」予想の横に「分からない」予想を書き足してみる

 もちろん、中長期的に考えれば小幅あるいは大幅な騰落を繰り返しながら右肩上がりになる可能性が高いことは間違いありません。先ほども指摘しましたが国内株式を年平均にならした場合に5~6%上昇するのはそうおかしいことではないからです。

 しかし、いつ、どの程度の騰落となるのか、一年後どの水準に位置するのかは「分からない(期待値としては現在よりやや上)」というところが正直な予想でしょう。

 実はどんな経済評論家でも、「あえて予想をすれば」という前置きの上でそれぞれの相場予想を語っています。紙面に掲載されるコメントになるとき、切り取られているわけですが、本音では分からないということを誰もが感じています。

 だとすれば、私たち個人としては、株価予想、為替予想は楽しみつつも、自分の評価としては「分からない」でいいし、「分からないけれど、中長期的にはイノベーションが世界を豊かにし株価も上昇するだろう」と信じておくことが、中長期投資においてはちょうどいいスタンスだと思います。

新NISAスタート後も中長期投資を心がけていこう

 2024年1月から新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)がスタートしたわけですが、これを活用して資産形成を考えている皆さんは、恒例行事としての株価予想などは気にしなくてもいいでしょう(iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)を利用している人も同様です)。

 今、あなたが投入できる資金を無理のない範囲で設定し、基本的には定額の積立投資でつみたて投資枠を埋めていく運用をすればよいのです。

 そもそも、中長期の投資を考えているあなたにとって「2024年末」や「2025年末」のようなタイミングでの株価水準はささいなことです。実際にそのお金を2024年末に使うわけではないからです。

 だったら、20XX年末に株価がどうなっているかは気にせずに、「自分が運用を終わりにするとき、プラスになっていればよし」というくらいのスタンスにしておけばいいでしょう。

 ……でもまあ、経済予想を読むのが楽しいことは間違いありません。あまり入れ込みすぎず、ほどほどに楽しんでみてください。