共同声明との整合性と多角的レビュー第2回ワークショップの活用

 明確に言えるのは、1月の段階で物価安定の目標が持続的・安定的に実現すると断言することはできない、ということです。2013年1月に政府と交わした共同声明との平仄(ひょうそく)もあります。

 その共同声明とともに物価安定の目標「2%」が設定されたのですから、政府がデフレ脱却を判断してもいないのに、日銀だけが「2%」達成を宣言して正常化に向かうことは、常識的には考えられません。

 仮に、1月の段階で「十分な確度をもって見通せる状況になった」と判断したとしても、その蓋然(がいぜん)性の高さについては引き続き検討せざるを得ませんし、言うまでもないことですが、そうならなかったときの金融政策運営の進め方も検討しておく必要があります。そこで考えられるのが、「多角的レビュー」の活用です。

 このレポートで何度も登場している多角的レビューですが、25年にわたって実施してきた非伝統的金融政策をさまざまな角度から検証するというもので、その第2回ワークショップが来年5月にセットされています。そこで、中長期的な物価・賃金の姿や、その下での金融政策運営の在り方などが検討されるとみています。

 図表1は、12月4日に開催された第1回ワークショップのプレゼン資料から、各セッションの「まとめ」を筆者が簡単にまとめたものですが、このうち第4セッションの3.に、残された課題として第2回ワークショップのテーマに関するヒントが出ています。

<図表1 「多角的レビュー」の第1回ワークショップ>

出所:日本銀行、楽天証券経済研究所作成

 5月中旬には24年1-3月期のGDP(国内総生産)統計が発表され、GDPギャップがしっかりプラスになったか確認できますので、そこで政府がデフレ脱却を宣言できる環境が整い(かなり希望的な観測になりますが)、実際に宣言すれば、日銀としても正常化のお墨付きを得ることになります。

 11月2日に閣議決定した経済対策のタイトルが「デフレ完全脱却のための総合経済対策」であることからも、政府がデフレ脱却宣言を狙っていることは明らかです。政府と協調しながら正常化を進める道を開いた後、多角的レビューの第2回ワークショップの結果も踏まえつつ、慎重に次の一手を進めていくのではないかと予想しています。