【質問】
 現在52歳の自営業者の男です。外で友人とお酒を飲んで話をするのが大好きです。山崎さんもご病気をされる前はお酒をよく召し上がっていたと思いますが、一カ月に使う交際費としては幾らぐらいが妥当だと思いますか?
(眉毛小僧)

【回答】ご質問に回答します。





 

 質問者の眉毛小僧さんは52歳ですか。美味しいものを食べられる味覚と体力があるでしょうし、お酒の味も分かる年齢かと拝察します。しかも、一緒に飲んで、話して楽しい友達がいる。

「交際費」という概念整理が少し気になりますが、「比率」を気にしないで、大らかに飲んだらいいのではないかと回答者は思います。

 私は、自分のお金に関心が薄く、記録や手掛かりになるデータはありませんが、質問者の年齢の頃は、実質的な可処分所得の3割くらいを飲んでいたのではないかと思います。

 本業のような副業のような複数の仕事の収入と、自分の小さな会社を持っていたのでこの会社の経費を使う事が出来たので、まあまあの収入がありましたが、一切合切を含めて、生活費や子供の学費などと並べた総支出額の3割です。これを多いと見るか、少ないと見るかは、見る人次第ですが、いかがでしょうか。私自身は、それで家計に無理がないのなら、4割でも良かったと思っています。

 一人でも飲みましたし、仕事仲間、友人、後輩ともよく飲みました。大した額ではないけれども、一緒に飲む相手に奢るのも好きでした。率直に言って、細かく割り勘する人間を心の中で軽蔑していました。勘定は、お金があって、機嫌のいい人が払えばいい。何度か飲むうちに、自ずと負担のバランスが取れるような関係なら、さらに大変好ましい。

 自分で稼いだお金です。自分の「楽しむ能力」が十分あるうちに使う事に、何の遠慮も要りません。

「交際費」が気になると申し上げたのは、ビジネス的な見返りを意識した「飲み」がどれくらいあるかが問題だからです。見返りを意識した会食や飲み会は、もちろん結果として自分が楽しんでもいいのですが、周到に計画して手抜きをせずに実行する必要があります。実施のタイミングの問題もありますし、予算の管理も必要でしょう。

 振り返ってみて、回答者の飲み代の見返りは何だったのでしょうか。

 営業マインドの乏しい評論家である私には、直接的に自分のビジネスの利益になったような仕掛けの「飲み」があった記憶はありません。結果的に営業になっていた「飲み」は、むしろ相手方が用意してくれた酒席に機嫌良く顔を出して、大いにご馳走して貰った時ばかりでした。奢られて楽しむ能力も大事です。

 結局自分の支払いで得たものは、その時の楽しみと共に、その後、健康だったら毎晩でも私と会って飲みたいと思う友達を調達できるような人間関係だけですが、これで不足があるとは思っていません。

 ところで、個人のお金の問題に取り組む際に、「比率」で考えることが、しばしば適当ではないことが多いことに気づきます。個人の状況は、資産も負債も柔軟に変化します。例えば、投資の際のリスク資産の保有額も、「比率」よりも、「金額」を直接考える方が適切な意思決定が出来ます。

 データから一般的に語られている比率を考えることよりも、その人の状況に合った行動の原則と、ポイントになる決定の具体的数字を求めることが大事です。

 それでもつい「比率」で考える人が多いのは、自分でものを考えることの出来ない能力の低いアドバイザーがデータに頼りたがるからなのだろうと思っています。個々の人は「平均」ではないのに、困ったことです。

 もっとも、取りあえず比率で、「手取り所得の20%くらい貯めていれば、老後の備えはまあまあではないですか」などと答えておくのは、楽な回答ではあるので、私もやることがあります。

 さて、最後に一言だけ、元大酒飲みの仲間として付け加えておきます。

 お酒は、決して憂さ晴らしのために飲まないで下さい。ヤケ酒を飲みたい時は、むしろお酒を遠ざけるくらいであるべきです。

 美味しく、機嫌良く飲むことが、絶対に大切です。お金の問題は、小さい、小さい!