今日の為替ウォーキング

今日の一言

トレーディングは単純であるが、決してたやすくはないということを彼らは認識していない

I Can't Go For That

 FRBが期待しているのは「良い失業」の増加だ。「悪い失業」とは、不況リストラによる失業率の上昇だが、「良い失業」とは、労働力人口の増加によって失業率が上昇することだ。いったん仕事を辞めた労働者や失業給付金を使い果たした人たちが再び雇用市場に戻ってくることで、人手不足が解消に向かい、賃金上昇率も低下する状況をFRBは待っているのだ。

 しかし、現実は厳しい。2021年は、1月から10月までの就業者が毎月平均55万人増えたが、2022年の同期間は月平均43万人と、大幅に鈍化した。さらに2023年は月平均26万人と、2021年の半分以下に落ち込んでいる。

 これは、米労働市場の利用可能な労働力の原資がほぼ使い果たされてしまったからだ。つまり、働く意思のある者はすでになんらかの仕事に就いているということであり、これ以上いくら待ったところで就業者は増えない可能性が高い。雇用市場のヒートアップは今後も続き、企業は労働力を確保するために賃金を引き上げ続けるなかで、インフレは高止まりすることになる。

 するとFRBに残された最後の手段は、リセッション覚悟の利上げを行うことでインフレ率を引き下げることしかない。最終的にFRBは勝利して、インフレは低下するだろう。しかし、その引き換えに米経済は深い傷を負い、不況とリストラによる真の雇用喪失という「悪い失業」が大量発生することになる。

今週の注目経済指標

出所:楽天証券作成