先週の株式市場は上昇したものの、利益確定売りに押されて、思ったほど上がらない1週間でした。

 今週は米国で景気、住宅指標の発表が相次ぎ、月末の11月30日(木)には米国の10月個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)も発表されます。

 米国の物価鈍化や景気のソフトランディング(軟着陸)期待が高まって、金利がさらに低下するようなら、日米の株価は利益確定売りをこなして上昇が加速しそうです。

 月が替わる12月1日(金)には米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長の民間講演も控えています。

 米国では、物価上昇の鈍化で来年2024年半ばには利上げではなく利下げが始まるという期待感が先行している面もあります。

 市場の楽観とパウエル議長をはじめFRBの厳しい見方のかい離がクローズアップされると、先週に引き続き上昇相場が停滞する恐れもあるでしょう。

 先週の東京株式市場の日経平均株価(225種)は20日(月)の取引時間中に3万3,853円のバブル経済崩壊後最高値をつけましたが、24日(金)終値は前週末比40円高(0.1%上昇)の3万3,625円とほぼ横ばいで終わりました。

 米国の金利低下を受けて週明け早々に付けた高値を抜け切れなかったのは、日経平均が11月13日(月)始値から20日(月)取引時間中の高値まで6営業日で1,000円弱も急上昇したことによる利益確定売りが主因だと思われます。

 また、米国の金利が低下して日米金利差が縮小したことで、日本株の上昇要因になっていた円安ドル高のトレンドが転換。

 21日(火)には、円相場が1ドル=147円台前半まで上昇するなど、かなり急速な円高が進んでいます。

 24日(金)のニューヨーク外国為替市場の終値は1ドル=149円45銭前後まで円安ドル高に振れましたが、今週も為替市場で円高が再び進行すれば、海外で利益を稼ぐ日本の外需株にとっては下げ要因になりそうです。

 一方、先週の米国株は高値圏で小幅続伸しました。

 機関投資家が運用指針にするS&P500種指数の24日(金)終値は前週末比1.0%高。

 ハイテク株主体のナスダック総合指数も0.9%高と4週連続で上昇したものの、伸び悩みました。

 週明け27日(月)の東京株式市場の日経平均は続伸して始まり、前週末終値比の上げ幅は一時180円以上となりました。しかし、引き続き高値警戒感が強く、下落に転じ、終値は177円安の3万3,447円でした。

先週:利益確定売りに押されるも小幅上昇!円高進行で輸入・成長株高、自動車株安

 先週の日経平均は株価急上昇による短期的な相場の過熱感や一時、1ドル=147円台まで円高が進行したことが警戒され、高値圏で一進一退が続く展開でした。

 海外で生産した家具を輸入して販売しているニトリホールディングス(9843)が24日、前週末比12%高となるなど、円高が収益拡大につながる輸入企業の株は堅調でした。

 その一方、円高になると円換算した海外収益が目減りしてしまう輸送用機器セクターが週間の業種別上昇率ランキングでも最下位に沈みました。

 マツダ(7261)が6.4%の下落、スズキ(7269)が5.3%の下落となるなど、9~11月の円安進行で勢いよく年初来高値を更新していた自動車株ほど下げがきつくなりました。

 先々週は絶好調だった半導体株も、システム半導体メーカーのソシオネクスト(6526)が6.8%安だったのを筆頭に低調でした。

 半導体株の勢いが失速した原因としては、生成AI(人工知能)関連の主力株である米国の高速半導体メーカー・エヌビディア(NVDA)が23日(木)に好決算を発表したにもかかわらず、24日には前週末比3.1%安と下落したことも影響しています。

 同社の2023年8-10月期はAI向け半導体販売が絶好調で、売上高が前年同期の約3.1倍、純利益が約13.6倍に達するなど「驚異的」といっていいほどの好決算でした。

 しかし、米国の対中国向け半導体輸出規制の影響で今後、中国での売上が減少する見通しが嫌気されて株価は反落。

 株価がこれまで急上昇してきたことの反動にすぎない面もありますが、日米半導体株がすぐに上昇を再開できるかどうかは不透明といえるでしょう。

 一方、先週目を引いたのは、新興成長株の値動きを指数化した東証グロース市場250指数(過去の東証マザーズ指数)が前週末比3.3%高と4週連続で上昇したこと。

 東証グロース市場は成長著しいサービス関連やIT関連の中小型株の宝庫ですが、2022年から2023年にかけて米国で利上げが続き株式市場にお金が流れ込みにくくなったことが影響して、株価の低迷が続いてきました。

 しかし、米国の金利低下を受けて、日本の10年国債の金利も一時の0.9%台後半から先週24日(金)終値が0.771%まで低下しましたが、日本の成長株の上昇につながっているようです。

 先週も、韓国のK-Pop関連事業を手がけるBirdman(7063)が2日連続ストップ高で前週比46.6%も上昇するなど、東証グロース市場の小型株はちょっとした材料で株価が急騰する点が大きな魅力。

 個人投資家にも人気が高い投資対象なだけに、年末に向けて好材料の出た東証グロース市場の成長株の売買が大いに盛り上がりそうです。

 米国では21日(火)夜に11月1日(水)に2会合連続で利上げの見送りを決めたFOMC(米連邦公開市場委員会)の議事録が公開されました。

「インフレ率低下が不十分なら追加利上げが適切」というタカ派的な姿勢は変わりませんでしたが、市場の反応は限定的でした。

 最近の米国や欧州の物価上昇は着実に鈍化しており、株式市場ではFRBやECB(欧州中央銀行)が2024年半ばには利下げに転じるだろうという楽観的な見通しも台頭しています。

 しかし、FRBやECBが利下げに転じるということは、景気が落ち込んだり、金融危機が発生したり、利下げしてお金の巡りを良くしなければならない緊急事態が発生していることを意味します。

 2024年に入って実際に利下げが正当化される景気後退や金融危機が現実のものになると、期待先行で急上昇した分、株価の下落が激しくなる恐れもあります。

今週:PCEデフレーターなど米国の景気・物価指標に一喜一憂する展開?

 今週は米国の景気、住宅、物価関連指標の発表が相次ぎます。

 27日(月)には米国の10月新築住宅販売件数、28日(火)には民間調査会社コンファレンス・ボードの11月消費者信頼感指数や11月のリッチモンド連銀製造業指数が発表。

 29日(水)には米国の2023年7-9月期の実質GDP(国内総生産)の改定値も発表されます。

 10月に発表された実質GDPの速報値は堅調な個人消費をけん引役に前期比年率4.9%と高い伸び率でしたが、改定値はそれ以上の成長率になる予想です。

 30日(木)にはFRBが米国の物価指標として最重要視する10月個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)も発表になります。

 変動の激しいエネルギー・食品を除くコアPCEデフレーターは前年同月比3.5%まで低下する予想で、予想以上に鈍化すれば、いよいよFRBが物価上昇率の目標とする2%台が目前になるため、株価の上昇モードに再スイッチが入るでしょう。

 月が替わる12月1日(金)には、FRBのパウエル議長が民間講演で発言するほか、ISM(全米供給管理協会)の11月製造業景況指数も発表されます。

 一連の景気、物価指数に関しては多少の落ち込みはFRBの高金利政策の終了を期待させるので株価にとって悪くない材料です。

 しかし、あまりに大きく落ち込むと、米国の景気後退に対する警戒感が強まり悪材料に。

 かといって、あまりに良すぎると高金利政策の長期化懸念につながります。

 米国の景気、物価指標が良くもなく悪くもない状況が理想といえるでしょう。

 先週24日(金)に発表された日本の10月の生鮮食料品を除くコアCPI(全国消費者物価指数)は前年同月比2.9%の上昇となり、4カ月ぶりに伸び率が拡大したものの、市場予想を下回りました。

 ただ、消費者の財布を直撃する食料品は7%以上の値上がりが11カ月連続で続いており、今後はこれまで内需株の上昇に貢献してきた個人消費の落ち込みが心配です。

 円高が続くと、旺盛なインバウンド(訪日外国人)需要が失速する懸念も生まれかねないため、内需株の株価も不安定になりそうです。

 とはいうものの、外国人投資家による日本株の11月第3週の買い越し額は現物株・先物合わせて2週連続で1兆円を超えています。

 外国人投資家の大規模な買い越しが続く限り、日本株の上昇は続くもの。

 米国株が良くもなく悪くもない景気、物価指標を好感して上昇するようなら、今週はバブル後最高値を更新するような日経平均やTOPIX(東証株価指数)の上昇に期待が持てそうです。