中国経済はどうなるのか?

 米中首脳会談の実現と中国経済を巡る動向は無関係ではない、むしろ関係は大あり、というのが私の見方です。

 10月下旬に中国に出張した際、現地で実感したのが、次の2点です。

  1. 中国経済に底打ち感は漂うものの、景気回復に向けた抜本的原動力に欠けること
  2. 景気回復に向けて外部環境、特に米中関係を大々的に解決する必要があること

 中国の企業家や消費者、海外の実業家や投資家を含めて、中国の経済や市場動向を判断する上で、米国との関係は当然気にするでしょう。端的にいえば、米国との関係を安定的に管理できない、事あるごとに対立し、制裁合戦の状態にあるようでは、中国経済なんて信用できない、中国市場に投資する気になんてなれない、という心境に陥るのは当然でしょう。

 その意味でのグッドニュースは、次の2点。

  1. 景気回復のために対米関係を改善させる必要があると中国政府は考えていること
  2. そのために、実際に米中首脳会談の実現にこぎつけたこと

 今年も残すところ1カ月強となりましたが、これから中国経済はどうなるか。

 米中首脳会談とほぼ同時刻に発表された10月(1~10月)の主要経済統計結果を、第2四半期以降との比較の元一覧表にしてみました。

  10月 9月 8月 7月 6月 5月 4月
工業生産 4.6% 4.5% 4.5% 3.7% 4.4% 3.5% 5.6%
小売売上高 7.6% 5.5% 4.6% 2.5% 3.1% 12.7% 18.4%
固定資産投資
(1~10月)
2.9% 3.1% 3.2%
(1~8月)
3.4%
(1~7月)
3.8%
(1~6月)
4.0%
(1~5月)
4.7%
(1~4月)
不動産開発投資
(1~10月)
▲9.3% ▲9.1% ▲8.8%
(1~8月)
▲8.5%
(1~7月)
▲7.9%
(1~6月)
▲7.2%
(1~5月)
▲6.2%
(1~4月)
調査失業率
(農村部を除く)
5.0% 5.0% 5.2% 5.3% 5.2% 5.2% 5.2%
同25~59歳         4.1% 4.1% 4.2%
同16~24歳         21.3% 20.8% 20.4%
消費者物価指数(CPI) ▲0.2% 0.0% 0.1% ▲0.3% 0.0% 0.2% 0.1%
生産者物価指数(PPI) ▲2.6% ▲2.5% ▲3.0% ▲4.4% ▲5.4% ▲4.6% ▲3.6%
中国国家統計局の発表を基に作成 数字は前年同月(期)比。▲はマイナス

 工業生産、個人消費は回復基調にあります。一方、固定資産投資、特に不動産開発投資は依然低迷しています。またCPI(消費者物価指数)、PPIにも表れているように、中国経済の「日本化」という観点からも先行きが懸念されるデフレ傾向に改善の兆しは見いだせません。

 中国政府は今年のGDP(国内総生産)実質成長率の目標を5.0%前後に設定しています。この目標自体の達成は十分可能だと私は見ています。10~12月期に4.5%成長すれば数値的にはクリアです。

 ただ、より重要なのはその中身です。特に注目されるのが、中国政府がテコ入れを続けている不動産市場の回復、不動産企業の復活、およびGDPの約3割を占めるとされる不動産業界に依存しない成長モデルの構築、そのための構造改革だと思います。