金融経済懇談会と発言が注目される政策委員

 このように、よく見ておけば気付くようなヒントを事前に出すのが日本銀行のコミュニケーション・スタイルだと認識したとして、それが今後の金融政策運営を占う上でどのように役に立つのでしょうか。この点を考えてみたいと思います。

 日本銀行の政策委員は総裁、副総裁2名、審議委員6名の全9名です。このうち、副総裁と審議委員の8名は年に2回のペースで地方出張し、その地域の財界関係者と「金融経済懇談会」を開催しています。

 これも重要なコミュニケーションの一つで、金融経済懇談会の後には記者会見も行われます。その最近の実績と当面の予定を確認すれば、今後どの政策委員がいつごろ情報発信するのか読めます。図表2に、現在の政策委員の金融経済懇談会の実績と予定を掲載しました。

<図表2 金融経済懇談会の開催実績と当面の予定>

出所:日本銀行、楽天証券経済研究所作成

 これを見ると、目先に予定されている安達誠司審議委員の愛媛県(11月29日)、中村豊明審議委員の兵庫県(11月30日)を含めると、6名の審議委員が全員2023年中の金融経済懇談会を終了したことになります。したがって、12月に開催される可能性があるとすれば副総裁の2人。特に注目したいのは、図表1でも紹介した内田副総裁の動向でしょう。

 12月は「多角的レビュー」の第1回ワークショップが4日に予定されています。12月のMPMは18~19日。その間に内田副総裁の金融経済懇談会がセットされるかどうか。セットされれば、多角的レビューのワークショップを踏まえた金融政策のヒントが出るかもしれません。

 来年の1~3月は、順当にいけば、田村直樹審議委員、中川順子審議委員、高田創審議委員の金融経済懇談会の開催が想定されます。特に田村審議委員は今年8月の金融経済懇談会で、「(物価安定の目標の)実現がはっきりと視界に捉えられる状況になった。来年1~3月ごろには解像度が一段と上がると期待している」と述べています。

 高田審議委員も、9月の金融経済懇談会で「物価安定の目標の達成に向けた「芽」がようやく見えてきた状況にある。見極めるにはこれからの1年間が重要」と述べています。物価安定の目標の持続的・安定的な実現に関する重要なコメントがあるかもしれません。注目したいと思います。