SNSでよく見かける「今のNISA、売らなくちゃ」という誤解
2024年からスタートする新しいNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)制度について、情報発信が増えています。雑誌の特集も増えているようです。
新規でNISA口座を開設する人向けに、申し込み手続きがスタートしています。すでにNISA口座を開設済みの方で金融機関変更を特に希望しない場合、引き続き同一の金融機関で2024年からのNISA口座が自動的に開設されます。
つみたて投資枠(あるいは一般NISA)で積立投資を設定している場合、これを自動的に引き継げるかどうかは金融機関ごとの取り扱いを確認することが必要です。楽天証券の場合では、つみたてNISAの積立投資設定は新しいNISAのつみたて投資枠に、一般NISAでの積立投資設定は新しいNISAでの成長投資枠での積立設定にそれぞれ引き継がれます。
2023年まで続いてきた一般NISA、つみたてNISAの歴史はひとまず終了することになるわけですが、誤解をしている人をしばしば見かけます。
「2023年末までに、現行NISAの保有株や投資信託については売らなくてはいけない」
という誤解です。先日も、とある投資系の掲示板を覗いていたところ、同様の投稿を見かけました。投稿主はもちろん、コメントをされている別の投稿者も誤解をしていてちょっと心配になりました。
そこで「今あるNISAは年内に売らなくちゃいけない」という誤解を整理してみたいと思います。
2023年までに開設したNISAは「満期」まで持ち続けられる
「売らなくちゃ」という誤解はおそらくいくつかの情報が組み合わさったものと思われます。
例えば「2019年に投資をした一般NISAが5年目の年末を迎える」場合、これは何らかの選択が必要になります。投資年度から数えて5年目の年末であり、非課税投資期間が満了するからです。
ここに「新しいNISAにロールオーバーできない」という情報が加わり、また「新しいNISAと従来のNISAは別もの」となりますので、これは売らなくては、という判断が生まれます。
これを側聞した別の人が、非課税投資期間が終了するわけではない2020年以降のNISA口座も売らなくちゃいけないと誤解したり、つみたてNISAも同様だと誤解したりして、ミスリードが拡散しているような印象です。
まず、2019年の一般NISAが5年目の年末を迎えても、売らずに証券口座に移管することができます。ロールオーバーはできないものの移管時点での価格を取得価格と見なすように移管することで、5年間の値上がり分については課税されないことになります。
それ以降に開設した一般NISAおよびつみたてNISAについては、原則として「それぞれの非課税投資期間が終了するまで持ち続けることができる」ということを確認しておきましょう。つまり焦って2023年末に売る必要はまったくないわけです。
まずは非課税投資期間の持ちきりを考えてみよう
売らなくていいとなると、判断はシンプルになってきます。2023年末に売るかどうかの判断が必要なのは2019年に開設した一般NISA口座だけになります。
それ以外の人はひとまず「2023年末に売らなくちゃ」という発想は後送りにしていいと思います。
つみたてNISAであれば開設年から数えて20年目の年末、2020年に開設した一般NISAであれば来年末、以降2021年開設分は2025年末、2022年開設分は2026年末、2023年開設分は2027年末まで非課税投資期間がそれぞれ維持されます。
これは新しいNISAの非課税投資枠である1,800万円とは重複しません。新しいNISAが大幅に枠を拡充するのとは別カウントで非課税枠を保持できるわけですから、基本的には持ちきったほうがいいでしょう。
ちょっと悩ましいのはつみたてNISAのほうでしょうか。1年あたり40万円という相対的に小規模枠な割に20年後というかなり長い非課税投資期間になります。最後まで持ちきるのが面倒だなあと思ったら、頃合いを見て、手放すことはあっていいでしょう(といっても5~10年後くらい後に改めて考えてみてください)。
ロールオーバーと同じことをしたい場合は、再買い付けが必要だが2023年末に限るわけではない
さて、2023年末に非課税投資期間が到来する一般NISA口座についてもう一度考えてみます。
ロールオーバーと同等のことを希望して、2024年からの新しいNISA制度に入金をしたいと思う場合は、
2023年内に一般NISAで売却する(非課税)
↓
その現金を2024年まで持ち越す
↓
2024年以降の新しいNISA口座で新規買い付けをする(年360万円の枠があることに注意)
という流れで新しいNISAに入金ができます。ここだけはひと手間かかりますが、年360万円という大きな投資枠がありますから、値上がりしたとしても5年前の一般NISAから非課税投資を継続することができそうです。
ただし、全ての一般NISAを売却する必要はないので、毎年末に5年目がやってきた一般NISAを手放しては新しいNISAに移し替えていくようなペースで十分でしょう。やはり、慌てて売る必要はないといえます。
もちろん、売却の決断は自由ですし、それもNISAのメリットです。しかし、誤解に基づいて焦って売却してしまうことのないように注意をしてください。