政府のデフレ脱却宣言と異次元緩和の正常化(マイナス金利解除)はワンセット

 それでは、なぜ今なのか。当然、そこには2%を大きく上回るインフレと過度な円安があります(図表2)。矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、物価指数がどんなに上昇していても、政府の正式な判断がデフレのままでは、日本銀行は金融政策の正常化(マイナス金利解除)に踏み切ることができません。

 つまり、インフレであるにもかかわらず、インフレと正式に認めるためにインフレを促す、そんな妙なことが起きているわけです。それにしても、なぜ日銀は政府の判断に縛られるのか。

図表2 インフレ指標と円相場

(注)消費者物価指数は生鮮食品およびエネルギーを除く総合(消費税調整済み)。
   消費者物価指数、GDPデフレーターとも1994年=100に換算。
(出所)総務省、内閣府、日本銀行、楽天証券経済研究所作成

 政府と日銀は2013年1月22日、「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について」という共同声明を発出しました。この共同声明とともに日銀は「物価安定の目標」2%を設定し、その実現を目指して異次元緩和を続けています。

 したがって、日銀が正常化に踏み切るためには、少なくともデフレから脱却したという認識が政府と一致する必要があります。そこで、政府は経済対策を打ってGDPギャップを押し上げ、正式にデフレ脱却宣言を行うことで日銀を共同声明の呪縛から解放し、政策の成果をアピールしながら正常化に移行する。これが今回の経済対策の真の狙いだとみています。

 対策を今打てば、効果が現れるのは2023年10~12月期から2024年1~3月期にかけて。その2024年1~3月期のGDP統計は5月中旬に公表されますので、その時点でGDPギャップがどの程度改善したか確認できます。

 仮にしっかりとしたプラスになっていれば、例えば一つのアイデアですが、6月に発表される「骨太の方針」(経済財政諮問会議の「経済財政運営と改革の基本方針」)で「もはやデフレではなくなった」と現状評価をすれば、それで立派なデフレ脱却宣言になるように思います。