10月から11月に月が替わる今週の日本株市場は、11月3日(金)が祝日休場のため、10月30日(月)から11月2日(木)まで4営業日と短くなります。

 しかし、株価に影響を与える重大イベントがてんこ盛りの1週間です。

 まずは、10月31日(火)に日本銀行の金融政策決定会合が終了。

 翌11月1日(水)夜には米国のFOMC(連邦公開市場委員会)で今後の金融政策が決定され、10月以降、株価の足を引っ張ってきた米国の金利急上昇がさらに加速するか、一服するかの、非常に重要な転機になりそうです。

 日本市場が休場の11月3日(金)には米国の10月雇用統計も発表されます。

 米国では強すぎる労働市場が物価の高止まりや乱高下の続く債券相場、それに伴う株式市場の低迷につながっているだけに、大きな注目を浴びそうです。

 日本や米国企業の2023年7-9月期の決算発表も相次ぎます。

 日本では、10月31日(火)には300社以上の決算発表が集中。11月1日(水)には日本一の時価総額を誇るトヨタ自動車(7203)が決算を発表します。

 一方、米国でも10月30日(月)のマクドナルド(MCD)、31日(火)の重機会社キャタピラー(CAT)、11月2日(木、日本時間では祝日3日早朝)には世界一の企業アップル(AAPL)が決算発表。

 アップルの決算内容次第では、米国市場が急変動する可能性もあります。

 先週末27日の日経平均株価(225種)は前週末比267円(0.9%)安の3万0,991円と続落。

 6月19日につけた年初来高値3万3,772円からの下落率は約8.2%に達し、10月4日(水)につけた安値3万0,487円を下抜けて、3万円台を割り込む恐れも出てきました。

 日本株以上に株価の下落が激しいのが米国株です。

 機関投資家が運用指針にするS&P500種指数は27日(金)夜も続落して前週末比2.5%安の4,117ポイントまで値下がり。

 7月高値4,606ポイントからの下落率は株価の調整局面と見なされる10%を超えました。

 ハイテク株が集まるナスダック総合指数の7月高値から27日(金)終値までの下落率はそれを上回るマイナス12.5%に達しています。

 27日(金)夜の米国市場では物価指標が落ち着きを見せたため、長期金利の指標となる10年国債の金利は4.8%台まで低下しました。

 にもかかわらずS&P500種指数などは景気後退懸念の台頭で下落。週明け30日(月)の東京株式市場の日経平均株価(225種)は反落し、終値は前週末比294円安の3万0,696円でした。

先週:米国株は調整局面入り、金利上昇と米国企業の悪決算で下げ続く!

 先週の株式市場は引き続き、米国の金利上昇やイスラエルのパレスチナ・ガザ地区への軍事攻撃などを嫌気して下落しました。

 米国の10年国債の金利は23日(月)に5%の大台を超え、今週も高止まりが続くようだと相場の下落要因になりそうです。

 27日(金)発表の9月の米国個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)が前年同月比3.7%の伸びと予想通りだったにもかかわらず、S&P500種が下落したのも、金利高止まりへの警戒感が強い証拠です。

 また、26日(木)発表の米国2023年7-9月期の実質GDP(国内総生産)は個人消費が相変わらず堅調で、前期比年率4.9%増と非常に高い伸びを示し、「良すぎて逆に悪い」結果になりました。

 さらに、先週の株価下落に拍車をかけたのは米国企業の決算発表でした。

 先週は「GAFAM」と総称される米国巨大IT企業のうち、アップル(AAPL)を除く4社が2023年7-9月期決算を発表。

 AI(人工知能)ブームによるクラウドビジネスがともに好調だったマイクロソフト(MSFT)アマゾン・ドット・コム(AMZN)の株価は小幅上昇しました。

 しかし、24日(火)発表のグーグルの親会社アルファベット(GOOG)の決算は売上・利益が予想を上回ったものの、クラウド事業が市場予想に届かず、株価は前週比10%近く下落。

 UAW(全米自動車労働組合)のストライキで生産活動が停滞して2023年の通期見通しを撤回したフォード・モーター(F)も前週比14%安と急落。

 米国の2023年7-9月期の実質GDPは高い伸びを示したものの、個別企業の業績が高金利や賃金上昇で悪化し、今後、米国が景気後退に陥るのではないかという懸念が台頭しています。

 一方、日本では、23日(月)に電気自動車向け車載モーター部門が中国企業との価格競争で減益になったことを発表したニデック(6594)の株価が24日(火)、10.5%も急落。週間でも前週比16%安に沈みました。

 26日(木)には日本の10年国債の金利も10年ぶりに0.886%まで上昇するなど、米国をはじめとした世界的な金利上昇を受けて日経平均株価が前日比668円安。

 東証マザーズ指数の27日(金)の終値が前週末比2.3%安と4週連続で下落し、2022年以来の安値に接近するなど、株価が割高なため、金利上昇に弱い新興成長株の受難の日々が続いています。

 そんな中、25日(水)に日立国際電気(非上場会社)の半導体製造装置部門を分社化したKOKUSAI ELECTRIC(6525)が東証プライム市場に新規上場し、27日(金)の終値が25日につけた初値から25%超も上昇。

 下げ相場の中では一際、目立つグッドニュースになりました。

今週: 日銀会合、FOMC通過で状況好転?トヨタなど日本企業決算に注目! 

 2023年も残すところ2カ月を切った今週は、株価が年末に向けて反転上昇モードに入るか、それとも下落し続けるかを決定する重要な1週間になるでしょう。

 その一大転機となる11月1日(水)終了の米国のFOMCでは、追加利上げは見送られる見通しです。

 ただ、利上げ休止予想が大半にもかかわらず、これまで米国の金利が急上昇してきた背景には、米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)の要人発言がちぐはぐだったことも影響していました。

 一部のFRB要人は「最近の金利上昇が景気を抑制するので、これ以上、利上げする必要はない」といった発言を繰り返し、利上げ終了に対する期待感を株式市場に与えてきました。

 一方、FRBのパウエル議長は10月19日(木)の民間講演で「今の金融政策は引き締め過ぎではない」と、いまだ金融政策に積極的なタカ派姿勢を崩していません。

 今回のFOMC後の記者会見で、パウエル議長が株式市場に配慮し、今後の利上げ打ち止めを明言するなどFRBが向かう方向性をよりクリアに一本化すれば、下落続きだった株価が劇的に落ち着く可能性もあるでしょう。

 米国FOMCの前日10月31日(火)には日銀の金融政策決定会合も終了します。

 日銀は7月の金融政策決定会合で、短期から長期までの国債利回りが描く曲線を適正な水準に保つYCC(イールドカーブ・コントロール:長短金利操作)政策を柔軟化。

 10年国債の金利変動幅の事実上の上限を1.0%に引き上げました。

 しかし、現状の10年国債の金利は先週0.88%台に到達し、上限の1.0%に迫ってきています。

 今回の会合で日銀の植田和男総裁がYCC政策の長期金利の上限をさらに引き上げるサプライズ決定を表明した場合、株価にとってはネガティブかもしれません。

 ただ、先週27日(金)発表の、東京都区部の生鮮食品を除くコアCPI(消費者物価指数)は前年同月比2.7%の上昇となり、上昇率は4カ月ぶりに前月を上回りました。

 1ドル=150円台に達する円安や天候不順による生鮮野菜の価格高騰もあって、物価高がさらに続くようなら、国民の不満が高まり、岸田自民党政権の支持率がこれまで以上に低迷するのは必至でしょう。

 日銀の政策変更を促すような「政治的圧力」がかかり、日銀の植田総裁が円安是正に向けた金融正常化を急ぐようなら、株価にとってはネガティブでしょう。

 今週は日本の2023年7-9月期決算も本格化します。

 先週急落したニデックと同じく中国関連のファナック(6954)、半導体関連の人気株であるレーザーテック(6920)ソシオネクスト(6526)など300社を超える決算発表が集中する10月31日(火)、トヨタ自動車(7203)の決算発表が取引時間中の午後1時55分に予定されている11月1日(水)は要注意です。

 日本市場が休場の11月3日(金)には、早くも米国の10月雇用統計が発表。

 非農業部門の新規雇用者数は前月比18.3万人増、平均時給は前月比0.3%上昇の予想ですが、10月には自動車メーカーのストライキがあったため、新規雇用者数の増加が急減して米国株にとってポジティブに働く可能性もあります。

 日米の中央銀行の政策会合と日米の企業決算集中で株価が乱高下するのは必至の情勢ですが、できれば相場が反転上昇に向かうことを期待したいものです。