為替DI:10月のドル/円、個人投資家の予想は?

楽天証券FXディーリング部 荒地 潤

 楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスの時は「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示します。

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 DIは「強さ」ではなく、「多さ」を測ります。DIは、円安や円高の「強さ」がどの程度なのかを示しているわけではありませんが、個人投資家の相場観が正確に反映されていると考えるならば、DIの「多さ」は同時に「強さ」を示すことになります。

「10月のドル/円は、円安、円高のどちらへ動くと予想しますか?」

 楽天証券がドル/円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家の「円安/ドル高」見通しは9月に比べて「円安/ドル高」見通しはさらに増え、全体の82%を占めました。9月は78%でした。円安見通しから円高見通しを引いたDIは、前月から8ポイント増加して+64になりました。

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成
出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

9月FOMCは「タカ派的据え置き」

 FOMC(米連邦公開市場委員会)は9月19日と20日に開催した定例会合において、主要政策金利であるFF(フェデラルファンド)金利の誘導目標レンジを5.25%から5.5%に据え置くことを決定しました。

 この決定は「タカ派的据え置き」と評されました。

 その理由は、FOMC会合後に公表される「経済見通しの要約」(Summary of Economic Projections: SEP)の一部として掲載されたドットチャート(FOMC参加者による政策金利の予想散布図)で、参加者の半数以上が2023年末の水準を5.75%と予想しているからです。

 年内追加利上げの可能性がまだ「50%」あるということで、かなり強気な金利見通しといえます。パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長も記者会見で「年内あと一回の利上げを行う可能性が高い」との見解を示しました。

 一方で、6月時点では1.0%あった2024年の利下げ幅の予想中央値は0.5%にとどまりました。1.0%以上の利下げを予想する参加者はわずか5人で、0.25%は4名でした。1名は2024年の利下げゼロを予想しています。

 さらに、2026年末の金利予想は2.5%から2.9%まで引き上げられました。FRBの高金利が「少なくとも3年間」は続くことを示唆しています。

 FOMCの声明文と経済予測(SEP)でも、FOMC参加者が、6月時点やその前年に比べて「さらに長期にわたり、さらに引き締め的な政策」に傾いていることがはっきり読み取れます。

 パウエルFRB議長は中立金利(インフレにもデフレにもならない金利水準)が高くなったことを、今回の記者会見で初めて公式に認めました。

 金利水準がまだ十分に引き締め的ではない、つまり一段の利上げ余地があることを示唆する発言です。このような理由から、マーケットは9月のFOMCを「タカ派的据え置き」と位置づけました。金利市場が予想する最初の「利下げ」時期も、2024年3月まで後退しています。

ユーロ/円

 楽天証券が10月のユーロ/円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家の「円安/ユーロ高」の予想がさらに増え、全体の78%を占めました。9月は76%でした。

 円安見通しから円高見通しを引いたDIは、前月から4ポイント増えて+56になりました。

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成
出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

豪ドル/円

 楽天証券が10月の豪ドル/円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家の「円安/豪ドル高」の予想がさらに増え、全体の77%を占めました。9月は73%でした。
円安見通しから円高見通しを引いたDIは、前月から8ポイント増えて+54になりました。

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成
出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

今後、投資してみたい金融商品・国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 今回は、毎月実施している質問「今後投資してみたい国(地域)」で「日本」「アメリカ」を選択した人の割合に注目します。各質問の選択肢は、ページ下部の表のとおり、13個です(複数選択可)。

図:「日本」「アメリカ」を選択した人の割合の推移

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 2023年9月の調査で、「日本」を選択した人は81%(全回答者3,607名中、2,927名が日本を選択)、「アメリカ」は58%でした。日本にとって81%は、日本が選択肢に含まれた2016年5月以降、最高です。

 9月前半、TOPIXがバブル後の最高値を更新したことが大きかったと考えられます。中国経済への不安感が一時的に後退したこと、円安が進行して輸出関連株が買われやすかったこと、原油高をきっかけに資源関連株が買われやすかったこと、こうした地合いを受けて大型株が買われやすくなったことなどが、高値更新の背景だと考えられます。

 株価上昇は、投資意欲を増幅させる要因だと言えます。今後も、日本の株価指数の値動きと「日本」を選択した人の割合の推移に注目していきたいと思います。

表:今後、投資してみたい金融商品 2023年9月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

表:今後、投資してみたい国(地域) 2023年9月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成