安川電機8月中間決算から機械業界の動向を先取り

 日経平均株価(225種)は3万1,000円台から3万3,000円台を行ったり来たりしている中、私は、10月6日に2023年8月中間決算の発表が予定されている安川電機(6506)の決算内容に着目しています。

 日本では3月決算銘柄が多い中、安川電機は2月決算銘柄です。3月決算銘柄よりも約1カ月早く決算発表をするため、私はその後の電気機器・機械業界の動向を見る上での参考にしています。安川電機は工作機械に使われるサーボモーターなどを製造している電気機器メーカーです。

 私が安川電機で印象に残っていることといえば、2018年10月の中間決算発表の時です。それまでの業績は順調に推移していましたが、10月10日の決算発表時に通期業績見通しの下方修正を出し、安川電機がきっかけとなったとは思いませんが、その日の夜に米国株式市場は大きく下落、翌11日の日経平均は一時、1,000円を超える大幅安となりました。

 この時期は、米中貿易戦争まっただ中で、米中がお互いに関税をかけ合う形となり、日本企業においても中国からの工作機械受注が2018年夏から急速に減少するなど、実際に2019年にかけて企業業績が悪化していった時期でした。

 当時の日経平均の動きは、安川電機の下方修正のあと、アナリストの企業業績見通しの下方修正が多く出て、2018年10月頭には2万4,000円を付けていましたが、12月下旬には2万円を割り込む動きとなりました。

 振り返ってみると、2015年から2016年にかけて下落したときも中国の人民元切り下げがきっかけでチャイナショックと言われ、2018年から2019年にかけての下落も米中貿易戦争、2020年の新型コロナショックも発生源は中国ということで、このところの景気悪化、株安の局面においては中国が関連する形となっています。

 現在、中国においては、米中貿易摩擦に加え、不動産業界や地方財政の問題を抱え、それに外資系企業の縮小・撤退なども加わり、厳しい状態にあることが聞こえてきている状況にあります。

 このため、10月6日の安川電機の決算発表が、その後にアナリストの業績見通しの下方修正を招き、2018年のような下落局面につながるか否かに着目しています。

2019年2月期は中国からの受注減をいち早く反映

 まずは、2018年を振り返ってみましょう。

 10月10日の安川電機の2019年2月期第2四半期決算発表において、売上高、営業利益は次のように修正されました。

(表1)安川電機の2019年2月期業績見通し

出所:安川電機 決算短信よりマネーブレインが作成

 2019年2月期中間決算の決算短信には、下方修正の理由は、「第2四半期連結累計期間の実績および、半導体需要の減速や中国市場の弱含みなど直近の受注動向等を踏まえ」と書かれています。

 当時の安川電機の受注動向、加えて、日本工作機械工業会が公表している工作機械受注動向についても見てみましょう。

(表2)受注動向(1)

出所:安川電機 2019年2月期第2四半期 決算補足説明資料、一般社団法人日本工作機械工業会公表データよりマネーブレインが作成

 安川電機の受注は、2019年2月期第2四半期に前年同期比でマイナスに転じ、これが業績悪化を連想させる一つの要因となりました。同時期において、日本工作機械工業会の工作機械受注額の総額は前年同期比で9.9%の上昇とまだマイナスにはなっていませんが、中国からの受注は、安川電機の第1四半期の時期(2018年3-5月期)に早々と前年同期比でマイナスに転じていたことが見て取れます。

安川電機中間決算の五つの着目点

 では、足もとではどうなっているのでしょうか? 安川電機の今期の業績見通し、受注動向は次のようになっています。

(表3)安川電機の今期業績見通し

出所:安川電機 決算短信よりマネーブレインが作成

(表4)受注動向(2)

出所:安川電機 2024年2月期第1四半期 決算補足説明資料、一般社団法人日本工作機械工業会公表データよりマネーブレインが作成

 安川電機の受注は、2023年2月期第4四半期(2022年12月~2023年2月期)の時点ですでに前年同期比でマイナスに転じています。また、日本工作機械工業会のデータをみると、中国からの2023年6月、7月の受注が大きく落ち込んでおり、2018年の時と同様に、中国の落ち込みが今後の業績悪化をもたらす可能性もあるのではないかと連想させます。

 ただ、安川電機は受注残を多く抱えていることもあり、今期の会社の通期見通し(売上高:5,800億円、営業利益:700億円)は、前期(売上高:5,559.55億円、営業利益:683.01億円)に比べて、増収増益の見通しとなっています。

 9月26日時点におけるアナリストのコンセンサス予想についても確認しておきましょう。

(表5)安川電機の会社業績見通しとアナリスト予想

*2023年9月26日時点
出所:会社予想は安川電機 2024年2月期第1四半期 決算短信より、コンセンサス予想はIFIS提供データより作成

 アナリストのコンセンサス予想は、会社予想に比べて売上高、営業利益ともに金額は下で、前期に比べて増収・減益の予想となっています。一方で、来期と再来期については、増収増益見通しとなっていて、来期、再来期ともに過去最高益を更新する予想となっています。

 このため、受注残を多く抱えているとはいえ、直近において減少傾向にある受注が今後盛り返し、来期、再来期のアナリストのコンセンサス予想を達成するまでのものになるのかという点も、気になるところです。

 10月6日の第2四半期発表での着目点をまとめると、次の通りです。

(1)売上高、営業利益の進捗(しんちょく)率はコンセンサス予想の50%を超え、順調に推移するか? 
(2)会社の通期見通しの修正はあるのか?
(3)受注額の前年比、前期比は?
(4)決算発表後の株価の動きは?
(5)決算発表後のコンセンサス予想の変化は?

 いずれにしても、電気機器、機械業界の動向、また、日経平均の今後を占う上で、どのような内容の決算が出てくるのか、大いに着目したいと考えています。

 投資はあくまでも自己責任で。