(1)「報告書」は悪くない

 まず、問題とされた報告書自体に大きな問題はない。

 中学生程度の国語力がある人が丁寧に読むと、「2,000万円」は単なる試算結果であって、これを作れと脅したり強制したりするものではないし、まして、公的年金が破綻するなどとはどこにも書いていない。

 老後に備えて、計画的に資産を形成し管理することが大事だと、常識的なことを言っているだけだ。

 参考になるアドバイスがいくつかあるので、読者も実際に報告書を読んでみるといい。

(2)公的年金は破綻しない

 報告書は公的年金への不安を煽ったと言う向きがあるが、それは正しくない。

 公的年金は、加入者が自分のお金を積み立てておいて、後から受け取る方式ではなく、将来の保険料と国庫負担、それに積立金の取り崩しを財源に、年金が支給される仕組みなので(「賦課(ふか)方式」と呼ぶ)、日本という国が連続性を持って続いている限り、将来支給額が実質的に縮むことはあっても、ポッキリと折れるように破綻することは考えにくい。

 また、年金の実質的な支給額が「マクロスライド方式」と呼ばれる方法で調整される予定であることは、2004年の年金制度改革以来、公表されている事実であって、今、明らかにされた話ではない。

 報告書には、公的年金制度の持続性に疑問を呈する箇所は1つもないし、批判者が口にする「年金は100年安心」とは、年金財政の持続性が保たれることの表現であって、年金だけで個人の老後費用が全て賄えることを指すものではない。

「100年安心」を曲解して議論するのは不毛だ。

 では、年金に関して普通の個人はどうしたらいいのか。以下の3点を覚えて置くといいだろう。

【1】年金保険料を払って、それが条件でもあるiDeCoなどを積極的に利用する方が「得」だ

【2】将来の年金額を計算に入れて計画的に人生設計を考えるべきだ

【3】公的年金は終身支給されるので「長生きのリスク」への保険として有効活用したい