今週は9月18日(月)が祝日で休場でした。9月19日(火)から22日(金)の日本株市場は、先週に引き続き、石油株や自動車株、銀行株など重厚長大産業の大型株の続伸に期待が持てそうです。

 ただ、米国の政策金利を決めるFOMC(連邦公開市場委員会)が20日(水)夜に終了します。

 利上げ見送りが濃厚なものの、同日発表されるFOMCの参加理事による今後の政策金利水準の予想図「ドット・チャート」に注目が集まるでしょう。

 2023年末の予想金利の中央値が前回公表の6月時点から引き上げられた場合、株価が急落する恐れもあります。

 さらに、21日(木)から22日(金)には、日本銀行の金融政策決定会合も開催されます。植田和男総裁が9日付の読売新聞のインタビューでマイナス金利解除の選択肢について言及しましたが、従来通りの粘り強い金融緩和継続の方針が変わらなければ、日本株が急伸する可能性もあります。

 先週(9月11~15日)の日経平均株価は、15日(金)終値が前週末比926円高の3万3,533円まで上昇しました。6月19日の取引時間中につけた高値3万3,772円に約200円まで接近するなど、今週はバブル後最高値更新も視野に入ってきました。

 週明け19日(火)の日経平均は、前週末の米国株式市場でのハイテク株安を受け、反落して始まりました。自動車など大型株の買いは継続しましたが、半導体関連など値がさ株の下げが響き、終値は前週末比290円安の3万3,242円でした。

 米国株の代表的指数で、多くの機関投資家が運用指針にしているS&P500種指数の先週15日(金)終値は、前週末比0.16%安と2週連続の下落となりました。

 今週18日(月)のS&P500は、20日(水)のFOMCで利上げが行われないだろうという期待感もあり、前日比0.07%高と小動きで終了しています。

先週:植田日銀総裁の年内政策転換示唆でも日本株は銀行株中心に強い!

 先週の日本株市場では、植田総裁のマイナス金利政策解除に関する発言が、相場を動かすキーファクターになりました。

 植田総裁は9月9日(土)付の読売新聞のインタビューで、賃金上昇をともなう持続的な物価上昇に確信が持てた場合、マイナス金利に代表される量的緩和策の解除も含めた「いろいろなオプション(選択肢)がある」と発言。

 また、金融政策の変更に必要な判断材料について、「2023年末までに十分な情報やデータがそろう可能性はゼロではない」と述べました。

 この発言を受け、週明け11日(月)の日本の金融市場では、長期金利の代表的な指標である10年国債の利回りが約9年8カ月ぶりに0.7%台に到達しました。

 日本株は、金利の上昇の影響を受けやすいハイテク株を中心に下落しました。

 しかし、翌12日(火)には、一時1ドル146円台を割り込んだ為替レートが147円台の円安水準を回復したことで、勢いよく反転上昇しました。

 1週間を通してみると、TOPIX(東証株価指数)は15日(金)に再びバブル後最高値を更新するなど力強い上昇に転じました。

 そのけん引役になったのは、日銀が金融緩和策を転換して、国内の金利が正常化することで収益向上が見込める銀行株や生保・損保株、証券株でした。

 メガバンク最大手の三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)の15日(金)終値は前週比6.6%高となり、同社の時価総額は15日(金)時点で16兆3,861億円に拡大。ソニーグループ(6758)NTT(9432)をわずかに抜いて、国内2位に浮上しました。

 本来、日銀が量的緩和策を転換すると、株式市場に流れ込む資金の量が減るため、株価にとって大きな悪材料です。にもかかわらず、先週TOPIXや日経平均株価が上昇したのは、日本株の上げトレンドの強さを物語っていると言えそうです。

 一方、先週は海外でもイベントや重要経済指標の発表が満載の1週間でした。

 13日(水)に発表された米国の8月CPI(消費者物価指数)は、変動の大きいエネルギーと食料品を除くコアCPIが前年同月比4.3%の上昇と、7月の4.7%上昇から減速したことで、米国株は上昇。

 翌14日(木)には、ユーロ圏の中央銀行にあたるECB(欧州中央銀行)が、大方の予想に反して10会合連続となる利上げに踏み切りました。しかし、声明文の中にこれが最後の利上げになる可能性が示唆されていたため、欧州株は上昇しました。

 同日、ソフトバンクグループ(9984)傘下の英国半導体設計会社アーム・ホールディングス(ARM)が米国ナスダック市場に新規上場しました。

 上場初日の終値が売出価格を25%上回ったことが、AI(人工知能)関連株など米国巨大IT企業の株高につながりました。

 しかし、同日発表した米国の8月PPI(卸売物価指数)は前月比0.7%の上昇と伸び率が拡大。

 8月小売売上高も前月比0.6%増と予想以上の伸びとなりましたが、両方とも主な原因はガソリン価格の上昇によるものです。原油高で米国の物価が再上昇するリスクが高まっている、気がかりな指標も相次いでいます。

 さらに15日(金)には、米国の自動車メーカー大手3社が加盟する労働組合UAW(全米自動車労組)が一部の工場でストライキを開始しました。

 今週18日(月)夜時点でもストライキは続いており、自動車価格の高騰やUAW以外にも労働争議が拡大して米国の賃金上昇に拍車がかかる警戒感も高まっています。

 15日は、米国ミシガン大学の9月消費者信頼感指数の速報値が予想を下回ったことも米国の景気のソフトランディング(軟着陸)期待に疑問符をつける格好になり、S&P500やナスダック総合指数が週間でマイナス転換する要因になりました。

 このように、先週の日本株は金利正常化期待とそれにもかかわらず為替レートが1ドル147円台の円安水準で高止まりしていることで、大型株主体に上昇が際立ちました。

 主力のトヨタ自動車(7203)が前週比8.4%上昇して上場来高値を更新、世界中に石油の権益を保有するINPEX(1605)が前週比6.0%高と続伸しています。

 一方、米国株は物価高再燃の兆しもあって、好・悪材料が入り乱れる状況が続いており、世界的に見ても「日本株最強」といえる状況が今週も続くかどうかに注目が集まります。

今週:20日夜のFOMC、22日の日銀金融政策決定会合を無事通過なら日本株続騰!?

 今週は米国、英国、日本などの中央銀行が政策金利の発表を行う「中央銀行ウイーク」です。

 中でも、20日(水)に終了する米国FOMCの決定に対する株式市場の反応が一番の注目ポイントです。

 単純に利上げの休止が好感されるか、それとも2023年内の利上げ打ち止めが明確に示されないことがネガティブ視されるか、どちらに転ぶかが焦点になるでしょう。

 米国では、21日(木)に9月のフィラデルフィア連邦準備銀行製造業景気指数や8月中古住宅販売件数、22日(金)に9月製造業およびサービス部門のPMI(購買担当者指数)速報値など、景気や住宅に関連する指標も発表されます。

 日本株にとっては、22日(金)に終了する日銀の金融政策決定会合の政策発表が非常に重要になるでしょう。

 会合では重要な政策変更はないというのが大方の予想です。

 ただ、会合終了後の記者会見で、植田総裁が9日のインタビュー記事で示唆した金融緩和策の転換について、どれぐらい具体的に言及するかが大きな関心を集めることになりそうです。

 また、22日(金)の取引時間前には日本の8月CPIも発表になります。

 生鮮食品を除くコアCPIは前年同月比3.0%上昇と伸び率が低下する予想です。

 日本の国内物価が予想以上に高止まりするようだと、植田総裁率いる日銀の量的緩和政策の転換時期が早まるのではないかという懸念で、円高や株安が進む恐れもないとはいえません。

 例年、10月以降は年末に向けて株価の上昇が続くことの多い時期です。

 9月も残すところ2週間となった今週は、一足早く年末に向けた上昇相場入りを果たせるか、それとも10月までにもう一波乱起こるか、日本株の明暗を握る重要な一週間になりそうです。

 ただ、日米中央銀行の金融政策や根強い円安基調、原油高などに大きな変化がない限り、上場来高値更新が続くトヨタ自動車(7203)や銀行株、石油株、商社株、海運株など、株価が割安な重厚長大産業の上昇相場が当面続きそうな勢いです。