先週末9月22日(金)の日経平均株価終値は3万2,402円となりました。前週末終値(3万3,533円)からは1,131円安と下げ幅が大きくなったほか、週足ベースでも下落に転じています。

 また、TOPIX(東証株価指数)については、2,376pで22日(金)の取引を終え、前週末終値(2,428p)比で52p安、週足ベースで5週ぶりの下落となっています。

 9月最終週となる今週ですが、意外と難易度が高い相場地合いになるかもしれません。その点について紐解く前に、まずはいつものように先週の日本株の値動きから確認して行きます。

先週の日経平均は下落、200日移動平均線と株価の関係に注目

図1 日経平均(日足)とMACDの動き(2023年9月22日時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週の国内株市場は祝日明けで4営業日でしたが、上の図1で先週の日経平均の値動きを振り返ると、週を通じて下落が続きました。

 株価の下落に伴って、7月3日と8月1日の戻り高値を結んだ「上値ライン」のほか、3万3,000円台水準、そして、25日・50日・75日の3本の移動平均線など、テクニカル分析において、サポート(支持)として機能して欲しい「節目」を次々と下抜けてしまった格好です。

 さらに、下段のMACDも、シグナルを下抜けるクロスが出現しており、全体的にチャートの形状は悪化しています。

 とはいえ、週末22日(金)のローソク足は株価が下落する中でも陽線で終えています。この日は、日銀の金融政策決定会合で金融政策の現状維持の決定が伝わり、下げ幅が縮小していきました。

 また、日経平均は6月19日の取引時間中に高値(3万3,772円)をつけて以降、方向感の欠いた展開がかれこれ3カ月も続いています。先ほど移動平均線について言及しましたが、移動平均線には「指定した期間の値動きの中心線」という意味があります。

 6月の高値から1カ月経過したあたりで25日移動平均線が下向きに転じ、2カ月が経過すると、次は50日移動平均線が下向きに転じています。ですので、そろそろ3カ月の値動きの中心線である75日移動平均線が上向きから横ばい、そして下向きへと転じやすくなるタイミングになると考えられます。

 なお、200日移動平均線については、図1を見るかぎりでは現在の株価との距離がまだありそうですが、中長期的な展開を見据えるのであれば、今のうちから意識しておく必要があるかもしれません。

図2 日経平均(日足)と200日移動平均線乖離率(2023年9月22日時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図2は、期間が長めの日経平均の日足チャートの下段に200日移動平均線の乖離率を表示させたものです。2015年からの動きを見ると、プラス20%あたりまで200日移動平均線と株価の乖離が進むと、その後は修正される傾向にあることが分かります。

「株価が値動きの中心線からあまりにも離れているのは行き過ぎ」という考え方です。足元の状況も6月に乖離率がプラス20%まで進んだ後、その乖離を修正しつつある局面と捉えることができます。

 図2の過去の例では、株価が一気に下落して乖離を修正する「値幅修正」と、時間をかけて株価と移動平均線との距離を縮める「時間修正」のパターンが見受けられますが、今回については、6月高値からの推移を踏まえると、時間をかけて修正する動きのように見えます。

 ちなみに、2017年時のように、株価水準を維持しながら200日移動平均線が株価にキャッチアップする修正が理想的ではあります。

TOPIXは上昇基調を維持したが、目先は売られる場面も想定する必要アリ

 次に、TOPIXの動きについても確認していきます。

図3 TOPIX(日足)とMACD(2023年9月22日時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週のTOPIXも日経平均と同様に、週末にかけて下落して行きましたが、上の図3を見ても分かるように、「上値ライン」がサポートラインとして機能しており、こちらはまだ上昇基調を維持しているように見えます。

 下段のMACDがシグナルを下抜けるクロスが出現しているのは気掛かりですが、5月下旬から6月上旬の時のように、MACDとシグナルのクロスが交互に現われながらも、株価が上昇していく展開も想定されるため、現時点で過度に警戒する必要はなく、今週の株価が反発できるかどうかで見極める余裕はありそうです。

 ちなみに、TOPIXの今後の値動きの参考として、多重移動平均線が使えるかもしれません。

図4 TOPIX(日足)の多重移動平均線(28日間・2日刻み)(2023年9月22日時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図4は、以前のレポートでも紹介した多重移動平均線です。

 多重移動平均線とは、期間の短いものから長いものまで、複数の移動平均線を同時に表示させることで、トレンドの強さや転換点などを探るのに使います。上の図4では、2日移動平均線から、4日、6日といった具合に2日間刻みで期間を長くし、最大の28日までの14本の移動平均線で描かれています。

 今回注目するのは、株価と多重移動平均線の位置関係です。最近までは、TOPIXの株価上昇に伴って多重移動平均線もすべての線が上向きとなる強めのトレンドが発生していましたが、現在は株価が多重移動平均線の束の中に入り込んでいる状況です。

 図4のチャートで過去をさかのぼると、再び株価が上昇に転じるまでに時間が掛かっていたことが分かります。そのため、このまま株価が下落し、多重移動平均線の束を下抜けてしまった場合には注意が必要です。

日本株は追い風の材料が吹くか?

 続いて、相場環境や材料などを整理して今後の相場展開について考えて行きます。

 今週は日米の金融政策イベントを通過して迎えます。本来であれば、イベント通過のアク抜け感や、先週の株価下落の反動などによって、株価の上昇スタートに期待したいところですが、日米でちょっと温度感が異なっている印象です。

 まずは、日本株についてです。先週末の日銀金融政策決定会合では、従来の金融政策の維持が決定されました。会合前の植田総裁のインタビュー報道の内容などから、一部で政策の修正もあり得るとの見方もあったのですが、いざ蓋を開けてみれば何の波乱もなく、その後の植田総裁の記者会見でも政策修正について明確な発言はありませんでした。

 日銀による政策の修正を見越した買いが銀行株などに入っていた可能性もありますが、基本的な見方としては、無難なイベント通過の安心感で買い戻しが入りやすくなると思われます。

 もっとも、金融政策の修正は「日本が長年のデフレから本格的に脱却した証」でもあります。

 実際には、国内の実質賃金が思ったように伸びず、消費支出が減速傾向にあること、GDP(国内総生産)の内訳も外需に支えられている面が強いことなどを踏まえると、現時点で金融政策の修正を実施するのは難しい面もありますが、今回の会合では、植田総裁の受け答えが曖昧な表現にとどまり、金融政策の修正を市場が前向きに捉えてもらえるような地ならしをできたかと言えば微妙です。

 そのため、今後は会合の度に、単純に「政策の修正をする・しない」の思惑だけで相場が動く状況が続くことになりそうです。

 このほか、今週は28日(木)に9月の権利落ち日を迎え、いわゆる「配当落ち」による株価下落をカバーできるのか、また、日経平均の銘柄入れ替えに伴う売買などの需給動向なども相場に影響を与えそうです。

 とはいえ、今週のあたまには、岸田政権の経済対策の柱が打ち出される見込みであるほか、25日(月)から来週10月6日(金)にかけて、金融庁が主催する『ジャパン・ウィークス』が開催され、多くの海外の機関投資家が招待されていることなど、日本株への関心を海外から呼び込むイベントもあるため、こうしたイベントの内容によっては、今週の日本株はしっかりした展開になることも考えられます。

米国株の波乱に注意

 その一方で、米国株市場の動きには要警戒です。

 先週開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)では、市場の予想通り、政策金利の据え置きが決定されたものの、同時に公表された見通し(ドット・チャート)では、年内にあと1回の利上げや、来年の利下げの想定が4回から2回に減少していることが示されました。

 さらに、FOMC後のパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の会見でも追加利上げの可能性について否定しなかったことなど、全体的には「タカ派」と受け止められ、米長期金利の上昇に伴って、米国株市場は下落するという初期反応を見せました。

 このほか、米自動車業界のストライキの動向、「つなぎ予算」をめぐる米議会の対立など、政治的な動向も波乱要因として燻っています。

 個別銘柄では、米半導体製造企業のマイクロン・テクノロジーが今週決算を発表します。先週の半導体関連株は大きく下落していたこともあり、同社の決算が株価反転のきっかけになるかも注目されそうです。

 さらに、テクニカル分析的には、米国の主要株価3指数(S&P500種指数・ナスダック総合指数・ダウ工業株30種平均)が、いずれも株価の下振れが警戒される状況となっています。

図5 米S&P500(日足)とMACD(2023年9月22日時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週のS&P500は下落し、8月18日の直近安値を下回りました。これにより、7月後半から形成しつつあった「保ち合い」が崩れたほか、6月16日、7月27日、9月1日の戻り高値を頂点とする「トリプル・トップ」のネックラインを下抜けしつつあります。

 移動平均線の並びについても、株価の安い順に、5日、25日、50日と並ぶ「パーフェクト・オーダー」となっているため、さらなる株価下落が警戒される状況です。

図6 米NASDAQ(日足)とMACD(2023年9月22日時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 トリプル・トップの形成は米ナスダックでも見られます。6月16日、7月19日、9月1日の高値を頂点としていますが、こちらは8月18日の直近安値を下回っておらず、株価もまだネックラインより上に位置しているため、トリプル・トップの完成を回避できるかが注目されます。

図7 米NYダウ(日足)の動き(2023年9月22日時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 米NYダウについては、節目の3万4,000ドルを下回ったほか、トリプル・トップではなく、「カップ・ウィズ・ハンドル(Cup with handle)」を逆さにしたような形状が完成しつつあり、こちらも株価の下振れが警戒される状況です。

 ちなみに、カップの深さにあたる部分が今後の下げ幅の目安になるという見方もあり、図7で確認すると、3万2,000ドル台の半ばあたりまでの下落してしまう可能性があります。

 このほか、10月1日の国慶節や、10月10日の双十節を前に、中国絡みによる米中関係や日中関係、中台関係などで政治的な動きが市場の攪乱要因となる可能性にも一応留意しておく必要がありそうです。

 したがって、今週の相場は意外と難易度が高く、相場の方向感が決まるにはもうしばらく時間が掛かるかもしれません。