先週末9月8日(金)の日経平均株価終値は3万2,606円でした。

 前週末終値(3万2,710円)からは104円安となり、週足ベースでは再び下落に転じています。その一方で、8日(金)の東証株価指数(TOPIX)の終値は2,359pでしたので、前週末終値(2,349p)から上昇し、週足ベースも3週連続となりました。

 ここ最近は、日経平均とTOPIXとのあいだの値動きに「温度差」が感じられる印象ですが、まずはこの点から確認して行きたいと思います。

日経平均は上値トライも週末の失速で前週比マイナス

図1 日経平均(日足)とMACDの動き(2023年9月8日時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週の日経平均の値動きを振り返ると、週の前半は戻りを試す動きとなり、6日(水)の取引までは、8連騰で節目の3万3,000円台を回復する場面も見られました。ただし、週末にかけての7日(木)と8日(金)で続落を見せ、失速していく展開でした。

 株価の上値については、図1でも確認できるように、直近の高値を結んだ「上値ライン」が抵抗(レジスタンス)となり、下値については、50日もしくは75日移動平均線が支持(サポート)となった格好です。

 株価が連騰する勢いに乗って8月1日の直近高値(3万3,488円)を超えられなかったことは残念ですが、移動平均線がサポートとして機能したこと、下段のMACDも上向きを維持しつつ、「0円」ラインを超えてきているため、再び株価が上昇していく可能性は残されています。

 ただし、移動平均線自体は3本(25日・50日・75日)が密集しており、これらの移動平均線を下抜ける動きが出てきた際には注意が必要です。

TOPIXは上昇基調を維持

 続いて、TOPIXの動きもチェックしてきます。

図2 TOPIX(日足)とMACDの動き(2023年9月8日時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週のTOPIXも日経平均と同様に、「前半に上値トライ、後半に失速」という展開でしたが、日経平均と異なる点として、冒頭でも触れたように、週足ベースで上昇を保ったことと、前半の株価上昇の場面で上値ラインを超え、年初来高値を更新したことが挙げられます。

 しかも、週末に株価が下落する場面でも、上値ラインがサポートとして機能しているようにも見えることや、移動平均線の並びについても、日経平均では3本の移動平均線が密集していましたが、TOPIXについては、期間の短い順に並ぶ「パーフェクト・オーダー」が維持されているため、上向きの意識は強いと思われます。

 また、気になるのは、前回のレポートでも触れたように、株価とMACDの「逆行現象」状態が続いるため、週末の株価下落が目先の短期的な上昇トレンドの転換につながる可能性があることです。そのため、週初のTOPIXが下落して始まった場合には、積極的な上値追いがいったんストップするかもしれません。

足元の日本株の強さの背景

 とはいえ、週末にかけて株価は下落したものの、足元の日本株は米国など海外株市場と比べて、相対的にしっかりした動きだったと言えます。

 こうした日本株の強さの背景には、海外投資家による国内企業の構造変化期待が根強いことや、いわゆる「中国離れ」による日本株への資金流入、米国や欧州市場の「債券安・株安」リスク軽減のために比較的割安な日本株を買っていることなどがその理由として考えられます。

 ただし、先週末の需給イベント(メジャーSQ)を控えた「イベント・ドリブン」による一時的な上昇という見方もあるため、需給イベント通過後となる今週の値動きが注目されることになります。具体的なポイントとしては、「強いTOPIXの動きに日経平均がキャッチアップしていくのか」、それとも、「TOPIXが日経平均の方に寄せていくことになるのか」です。

TOPIXは上昇加速と一服のサインが同時に出ている

 となると、今後も日本株の上昇基調を続けて行くには、前者のTOPIXの強さがカギを握ることになります。そこで、今回はもう少しTOPIXの強さについて掘り下げて行きたいと思います。

図3 TOPIX(日足)のエンベロープ(25日MA)(2023年9月8日時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図3はTOPIX(日足)の25日移動平均線のエンベロープです。

 エンベロープとは中心となる移動平均線から、一定の値幅や比率分を上下に平行してずらして描いたものです。上の図3では、25日移動平均線から上下に5%、10%平行移動させた線を描いていますが、ここ2年間のTOPIXは25日移動平均線からプラスマイナス5%の範囲内で推移している場面がほとんどであることが分かります。

 また、足元の株価については、プラス5%近くまで上昇したところで、ちょっと伸び悩んでいるように見えます。

 チャートを過去に遡ってみると、5%のあたりで上昇が一服するパターンと、上向きの線に沿って上昇が継続するパターンが確認できます。

 いずれのパターンも25日移動平均線が上向きの時に出現しているため、今回がどちらに転ぶかは、このチャートだけで判断するのは難しそうですが、この2年間の実績だけで見れば、上昇一服が4回、上昇継続が2回となっていますので、敢えて言えば上昇が一服すると考えることができます。

 その一方で、上昇が継続するサインも出ています。

図4 TOPIX(日足)の多重移動平均線(28日MA・2日刻み)(2023年9月8日時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 上の図4は、前回のレポートでも紹介した多重移動平均線です。

 その時も説明しましたが、多重移動平均線とは、期間の短いものから長いものまで、複数の移動平均線を同時に表示させることで、トレンドの強さや転換点などを探るのに使います。上の図4の多重移動平均線は、2日移動平均線から、4日、6日といった具合に2日間刻みで期間を長くし、最大の28日までの14本の移動平均線で描かれています。

 あらためて図4を見ると、前回よりも期間の長い線で上向きになっているものが増えており、上方向への意識の強さがうかがえます。多重移動平均線では、強いトレンドが出ている時は、多くの線が同じ方向を向き、移動平均線の束の幅も大きくなっていきます。

 そのため、チャートだけで見て行くと、「株価が上を目指す強さはあるものの、下方向に転じてしまうこともあり得る」となってしまうため、今週は「とりあえず、株価が動いた方向に乗る」という展開で、株価の上下の振れ幅が大きくなりやすい展開になるかもしれません。

今週は海外市場の材料が焦点

 ゆえに、今週は相場のムードに影響を与えそうな材料を押さえておく必要がありそうです。

 今週は海外市場で注目イベントが多く予定されています。具体的には、米国の8月消費者物価指数(13日)や8月小売売上高(14日)、中国でも8月分の主要経済指標(鉱工業生産・小売売上高)の発表(15日)などが挙げられます。

 その中でも、来週19~20日に開催されるFOMC(米連邦公開市場委員会)を前に、8月の米消費者物価指数や米小売売上高の結果次第では、金融政策に対する思惑が働きやすくなるため、材料面でも「株価の上振れと下振れのどちらもあり得る」ことになりそうです。

先週の米国株市場の値動きは?

 そこで、米国株市場の動きについても確認してきます。先週の米主要株価指数(NYダウ・S&P500・ナスダック)は揃って、週足ベースで下落しました。

図5 米S&P500(日足)とMACD(2023年9月8日時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

図6 米ナスダック(日足)とMACD(2023年9月8日時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 米S&P500とナスダック総合指数(ナスダック)については、似たような値動きとなっています。

 S&P500は4,500p、ナスダックは1万4,000pといった節目の株価水準を挟んで、切り下がる上値ラインと、切り上がる下値ラインによる「三角保ち合い」を形成しつつあるように見えます。一般的に保ち合いは、抜けた方向に株価が動きやすいとされているだけに、今週発表の米経済指標の結果に対する市場の初期反応が今週の相場のムードを左右しそうです。

 仮に米国株市場が下方向に動いてしまった場合に注意したいのが、ダウ工業株30種平均(NYダウ)になります。

図7 米NYダウ(日足)の動き(2023年9月8日時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 米NYダウも三角保ち合いを形成しつつありますが、保ち合いの下値ラインが昨年10月の安値を起点とする、長期間のトレンドラインであることや、移動平均線が株価の安い順に5日・25日・50日と並ぶ、下向きの「パーフェクト・オーダー」になっていること、また、直近の値動きが「カップ・ウィズ・ハンドル(Cup with handle)」を逆さにした形状となっているため、株価が下がってしまった場合の危険サインがかなり増えてきています。

 3万4,000ドルの節目水準がサポートとして機能しなくなった場合には、下げが加速する可能性があり、特に注意しておく必要があります。

 その他、今週は12日に新製品の発表会が開催される米アップル株の動きが注目されるかもしれません。先週の同社株は、中国当局が政府職員の公務でのiPhone使用禁止を通達したとの報道を受けて急落する場面があっただけに、発表会を機に株価を持ち直せるかも市場のムードに影響しそうです。

 したがって、今週は株価が上昇した際にはあまり深追いせず、下落した際には積極的に下値を拾うのではなく、下げ止まりからの反発を見極めて株価の戻りをねらうといったように、やや保守的な投資スタンスで臨むのが良いかもしれません。