サイクル天王山は10~12月?

 9月の市場では、米株式が8月の調整を経て、秋相場へ再浮上できるかを模索する場面と見ています。前段で見てきた指標やイベントに一喜一憂しながらも、ファンダメンタルズの行方について結論を得られる段階ではないでしょう。そのため、7月サマーラリー、8月調整反落と同様に、相場自体がファンダメンタルズの解釈を偏らせて、自律的に秋相場に向けて動く余地があると想定しています。

 短期金利は、11月FOMCでの利上げの可能性に応じて動くものの、年内2回利上げ見通しにならない限りは、0.25%1回利上げの50%織り込みの残り50%の変動余地しかありません。ポイントになるのは、長期金利です。景気が(1)堅調、(2)軟化、(3)悪化と3方向に広がるシナリオのどれに沿って動くのかが、株式相場にとっても、ドル/円相場にとってもサイクル投資の天王山になるかと、注目しています。

 株式投資は、景気指標が陰ると金利先高観の後退として好感するステージを経て、(3)の景気悪化ケースに向かうと、逆業績相場への懸念に転じかねません。10-12月期では、サービス業、雇用、消費支出の変化自体はまだ緩慢かもしれません。しかし、金融引き締めの累積効果が信用問題を引き起こすリスクは、唐突かつ急速に現れる性質があります。その場合、長期金利の低下にたじろぐドル/円も、反落するでしょう。

 現時点で(1)(2)(3)のどれか1つをメインシナリオとして決め打ちするのは尚早でしょう。FRB当局でもできない相談と言えます。しかし、サイクル投資が3方向のどこに分岐するかの天王山は、早ければ10~12月になるリスクを踏まえておく必要があります。

 筆者は(2)から(3)へ軸足を移せるかという目線でいます。(1)の場合も2024年に(2)(3)が先送りされるだけと想定しています。その上で、9月の重要指標とイベントの観測を10~12月にも引き継ぎながら、どこに分岐しても柔軟に対応できるよう、9月からの投資のポジショニングを思案していく構えです。

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