今日の為替ウォーキング

今日の一言

書物と友人はよいものを少し持つのがいい

You're The One That I Want

 明日発表の9月米雇用統計の詳しい予想については「強い雇用統計が「9月FRB利上げ」の引き金に?ドル/円150円台突入リスク高まる 8月米雇用統計 詳細レポート」をお読みください。

 米雇用統計は、その重要度と注目度で言えば、牛肉のA5ランクに相当するような特上データだ。FRB(米連邦準備制度理事会)のデュアルマンデートのひとつが「雇用の安定」だから、米国の金融政策の方向を決定する二大要素のうちのひとつが雇用統計ということになる。世界中の投資家が毎月第1金曜日の発表時間を待っている。ところが、雇用統計のデータとしてのクオリティは低い。A5ランクの指標なのに、提供されるデータはC1ランクなのだ。

 その理由として、政府予算の縮小でデータ収集量が少なくなっていることや、新型コロナ後の経済の急激な構造変化のために従来の季節調整が機能しなくなったことがある。われわれは、雇用統計に、財務省が管理する納税額や中央銀行が管理する銀行の融資実績と同等の正確さを期待しがちだが、それこそが間違いなのだ。

 米国の重要な経済指標の多くはアンケート調査に基づいている。一般に、家計調査の回答率が60%を下回るとそのデータの信頼性は低くなるといわれているが、CPI(消費者物価指数)は55%、NFP(非農業部門雇用者数)は40%程度、JOLTS(雇用動態調査)求人件数はさらに低く、企業からの回答率は30%程度しかない。それだけではない。コロナ期間から急速に増加した副業やスタートアップの小さい会社の雇用状況も調査から漏れている。つまりサンプル数が低すぎて、データとしての信頼性が低いのだ。

 パウエルFRB議長は、今後の金融政策の見通しは「経済データ次第」だと述べている。FRBに限らず(日銀を除く)先進国主要中央銀行の全てが、これまでになく経済データに依存する時代に、そのデータの信頼性が著しく低下していることを認識しないまま政策を決定することは、経済が直感や先入観によって誤った方向に誘導される可能性が高いということであり、非常に危険なことだ。

今週の注目経済指標

出所:楽天証券作成