世界経済はソフトランディングに向かうのか
米国株の行方を占う上で、世界の先行き景況感が注目されます。IMF(国際通貨基金)が25日に公表した最新の世界経済見通し(World Economic Outlook)では、今年の世界経済の実質成長率見通しが上方修正されました(図表3)。
IMFは「米国の債務上限問題が最近解決し、今年前半には米国とスイスで銀行の動揺を抑えるために当局が強力な行動を取ったことで、金融部門の当面の混乱リスクは軽減された。これにより、見通しの下振れリスクは緩和された」と説明しました。
IMFは2023年の世界経済成長率予想を(4月時点予想の+2.8%から)+3.0%に引き上げました。米国の2023年の成長率予想については+1.8%と4月時点予想より0.2ポイント上方修正しました。人手不足に伴う賃金上昇で個人消費が堅調に推移し、自動車販売などが回復したためとしています。
一方、IMFは世界経済の成長率について、パンデミック(新型コロナウイルスの世界的大流行)以前の20年間の平均成長率(+3.8%)と比較すると弱いとし、「世界の成長に対するリスクバランスは依然として下向きだ」とも警告しました。金利上昇はインフレ抑制につながりつつある一方、経済活動の重しとなるだろうと指摘。
ウクライナでの戦争激化や気象災害のような追加の衝撃、中国の予想以上の景気回復の遅れなどもリスク要因として取りあげました。IMFは特に中国について、不動産業界の軟調が投資に打撃を与えているほか、外需の低迷と若年層の失業率上昇もあり、年初のパンデミック後の経済再開に伴う回復が鈍化していると警告しました。
中国景気の失速感は世界経済や米国経済に影響を与える可能性があります。中国政府の景気浮揚策の内容と規模やその効果について注視していく必要があります。
<図表3>世界経済はソフトランディングに向かうのか
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