今週の株式市場は日米欧の中央銀行が相次いで金融政策を決める会合を開き、米国巨大企業の2023年4-6月期決算発表が集中するなど、重要イベントが目白押しです。

 それらの結果次第では、株式市場が激しい乱高下に見舞われる恐れもあります。

 最大の注目は7月26日(水)に終了する米国のFOMC(連邦公開市場委員会)です。

 0.25%の利上げ再開がほぼ確実視されています。

 27日(木)、28日(金)には、日本銀行の金融政策決定会合も開催されます。

 金融緩和政策の柱の一つ、YCC(イールドカーブ・コントロール、長短金利操作)を修正するかどうか注目を浴びていますが、現状維持される可能性が高いと相次いで報じられました。ですが、サプライズな政策変更が飛び出すと、日本株が急落したり、急速な円高トレンドが再開したりする可能性もあります。

 今週は米国企業の2023年4-6月期決算がピークを迎え、機関投資家が運用指針にするS&P500種指数の組み入れ比率の高い巨大企業の決算発表が相次ぎます。

 中でも、25日(火)(日本時間では26日早朝)のマイクロソフト(MSFT)やグーグルの親会社アルファベット(GOOG)、26日(水)(日本時間では27日早朝)のフェイスブックの親会社メタ・プラットフォームズ(META)の決算が注目の的になるでしょう。

 先週の日経平均株価(225種)は、今週の日銀会合に対する思惑や円安の再開、海外企業の決算発表に振り回されて、かなり大きな値幅を上下動しました。

 しかし、21日(金)終値は前週末比0.3%安の3万2,304円。1週間を通して見ると、小動きで終わりました。

 好調が続く米国株はS&P500種指数が前週末比0.69%高。

 米国の物価高の鈍化や経済のソフトランディング(景気軟着陸)期待を受け、重厚長大産業の影響力が強いダウ工業株30種平均は前週末比2.08%高。

 2017年8月以来、約6年ぶりに10営業日連続で上昇するなど、際立った強さを見せています。

 週明け24日(月)の東京株式市場の日経平均は上昇して始まり、取引時間中には前週末からの上げ幅は500円近くになる場面もありました。終値は396円高の3万2,700円で、3営業日ぶりの上昇となりました。1ドル=141円台後半まで進んだ円安が追い風になり、輸出銘柄の機械株や自動車株などで買いが目立ちました。

 30日(日)の「土用丑(うし)の日」を前にした今週は、円安が続き日銀の政策修正がないまま、うなぎ上りの相場となるか、それともサプライズによる急落もあるのか、正念場となりそうです。

先週:TSMCショックで半導体株安、円安で自動車株高。米国株は決算に一喜一憂

 先週の日本株は、好調な米国金融機関の決算や1ドル=137円台まで進んだ円高が一服したことを受けて、18日(火)~19日(水)の週前半は上昇しました。

 しかし、20日(木)に世界最大の半導体受託製造会社である台湾のTSMC(台湾積体電路製造)が世界的な景気減速で2023年12月期の売上高が10%減少する見通しを発表したことで、「TSMCショック」が日本の半導体株も直撃。

 東京エレクトロン(8035)の21日(金)終値が前日比5.6%安となるなど、半導体関連株が総崩れとなり、週間業種別値下がり率ランキングでも半導体関連の多い精密機器がワースト1位になり、東京エレクトロンの属する電気機器も低位に沈みました。

 一方、円安の進行もあって輸送機器セクターが上昇率2位になるなど好調でした。

 特に、19日(水)、2025年3月期以降に配当性向の30%台回復を目指すと報道された日産自動車(7201)の21日(金)終値は前週末比8.7%高まで上昇しました。

 21日(金)の日本株取引終了後には、日銀が今週28日(金)終了の金融政策決定会合で、YCC政策を据え置くという見通しが報じられ、21日夜間の日経平均先物価格は急上昇しています。

 YCC政策は短期から長期までの国債利回りが描く曲線を適正な水準に保つことを目指す政策ですが、その修正が懸念されていました。

 報道を受け、21日(金)のニューヨーク外国為替市場では1ドル=141円台後半まで急速な円安が進行。今週の日本株の支援材料になりそうです。

 米国株は2023年4-6月期の決算発表に一喜一憂する展開でした。

 週前半の米国金融機関の決算好調で、ダウ工業株30種平均が21日(金)まで10連騰するなど、好決算で株価上昇の流れが続きました。

 しかし、19日(水)に予想を上回る決算を発表した電気自動車のテスラ(TSLA)が粗利益率が予想以下だったという理由で前週末比7.6%も下落。

 テスラをはじめ米国巨大IT企業は年初から株価が急騰してきただけあり、決算発表による材料出尽くしで売られやすい状況になっています。

 それは今週の巨大IT企業の決算発表にも当てはまりそうです。

 また、18日(火)発表の6月の米国小売売上高は前月比0.2%増と市場予想を下回り、20日(木)発表の6月の中古住宅販売は住宅供給の不足で前月比3.3%減となるなど、経済指標にも弱いものが目立つ1週間でした。

今週:FOMCと日銀会合で波乱あるか?米巨大企業の決算発表に注目!

 今週の日本株は、28日(金)終了の日銀の金融政策決定会合でYCC政策が据え置かれるという見通しを受けて、当初は上昇が続きそうです。

 米国では24日(月)に7月の製造業ならびにサービス部門のPMI(購買担当者景気指数)が発表されます。

 25日(火)には民間調査会社コンファレンス・ボードの7月消費者信頼感指数も発表。

 米国の景気や個人消費が今後も堅調に推移するかどうかの指標として注目されそうです。

 そして、25日(日本時間26日(水)未明)に米国の政策金利を決めるFOMCが終了。

 0.25%の利上げ再開が確実視されていますが、問題は直後に行われる米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長の記者会見でしょう。

 パウエル議長は6月FOMC以降、年内あと2回の利上げに繰り返し言及しています。

 しかし、7月12日発表の6月CPI(消費者物価指数)が前年同月比3.0%まで低下したことを受けて、パウエル議長が会見で、次回9月のFOMCでもう利上げはしないとほのめかすようなら、市場の思惑通りとなり、米国株がさらに上昇する起爆剤になるでしょう。

 一方、変動の激しい食品とエネルギーを除いた6月のコアCPIは前年同月比4.8%の上昇で、依然として高止まりしています。

 これまでも再三、コア物価指数の高止まりに懸念を表明してきたパウエル議長が、9月利上げの可能性を明確に否定しないようだと、株式市場は疑心暗鬼に陥るでしょう。

 27日(木)には、米国以上にしつこいインフレに苦しむECB(欧州中央銀行)が理事会を開催し、6月に続いて0.25%の利上げをすることが確実視されています。

 28日(金)正午ごろには、日銀の金融政策決定会合の結果も発表されます。

 ここまで一貫して金融緩和に積極的なハト派路線を堅持してきた植田和男総裁のもと、YCC政策の据え置きを含む量的緩和策の継続が表明される見通しです。

 ただ、先週21日(金)発表の、生鮮食品を除く日本の6月コアCPI(全国消費者物価指数)は前年同月比3.3%の上昇。

 生鮮食料品とエネルギーを除く6月のコアコアCPIは、前年同月比プラス4.2%とさらに高い伸び率を示しました。

 物価高の加速を受けて、28日に発表される「経済・物価情勢の展望」リポートで2023年度の物価見通しが上方修正されるのは必至の情勢です。

 植田総裁は来年度の2024年度の物価が上向くと確信できれば政策変更もありうると述べています。

 まずは2024年度や2025年度の物価見通しを上方修正することで、次回9月21~22日の金融政策決定会合でのYCC政策修正の地ならしをする可能性もあるでしょう。

 今週は、S&P500種指数の組み入れ比率が高い米国大企業の2023年4-6月期の決算発表が立て続けに発表されます。

 主だったものでは、25日(火)に重工業のゼネラル・エレクトリック(GE)や米国自動車最大手のゼネラル・モーターズ(GM)マイクロソフト(MSFT)アルファベット(GOOG)

 26日(水)に軍事関連でもあるボーイング(BA)メタ・プラットフォームズ(META)

 27日(木)にマクドナルド(MCD)、半導体メーカーのインテル(INTC)

 28日(金)に世界最大の日用品メーカー・プロクター・アンド・ギャンブル(PG)、石油会社世界一のエクソンモービル(XOM)など。

 米国株はこれまで景気のソフトランディングなど好材料を先取りする形で上昇してきただけあり、各社の決算発表が予想を下回る内容になると、全体相場に悪影響を与える可能性も高そうです。

 また25日(火)には、IMF(国際通貨基金)の最新の世界経済見通しも発表されます。

 先週17日(月)には中国の2023年4-6月期GDPの伸び率の減速や都市部の16~24歳の若者の失業率が21.3%に達したことが発表されたばかり。

 IMFが中国経済の見通しを下方修正するようだと、工作機械のファナック(6954)や中国での「ユニクロ」販売が成長源のファーストリテイリング(9983)など、日本の中国関連株にも悪影響が及びそうです。

 FOMC、日銀会合に米国企業の決算連発など、イベント満載の今週の株式相場が激しい値動きに見舞われることだけは確かでしょう。