先週の日本株は7月3日(月)に大幅上昇して終値ベースでバブル後最高値を更新したものの、それ以降は一貫して下落が続く非常に軟調な展開となりました。

 日経平均株価(225種)の7日(金)終値は前週末比800円安(マイナス2.4%)の3万2,388円で終了。

 日足チャートの25日移動平均線を割り込んで下落しました。

 日本株が軟調で推移した要因には、7月上旬に決算期を迎えるETF(上場投資信託)が投資家に支払う分配金を捻出するために保有株を売却しなければならない、という需給要因がありました。

 また、これまで急騰を続けてきた花形株の一角に悪材料が噴出したことも、全体相場の重しになりました。

 一方、先週の米国株は機関投資家が運用指針にするS&P500種指数の7日(金)終値が前週末比0.6%の下落で終了。

 先週のこの連載で示した「高金利でも好景気で株高が続く」という、米国株にとって都合が良すぎる予想はハズれました。

 今週は12日(水)の6月CPI(消費者物価指数)、13日(木)の6月PPI(卸売物価指数)など、米国の最新物価指標の発表が相次ぎます。

 ここ最近はCPIの伸び鈍化を好感して株高に転じることも多かっただけに、6月CPIの結果次第では、再び「高金利でも物価高沈静化で株価上昇」モードに入る可能性もあります。

 一方、「物価高止まりで高金利長期化。株価続落」モードに完全転換する恐れもあります。

 どちらに転ぶか、12日発表の米国6月CPI次第の1週間になりそうです。

 10日の東京株式市場での日経平均の終値は先週末比198円安の3万2,189円となりました。今年初めての5営業日連続の下落となりました。

 朝方に一時反発する場面もありましたが、米国の中央銀行に当たる米FRB(連邦準制度理事会)による利上げが長期化するとの観測が強まっていることや先週末の米国株安が売りを誘いました。高値警戒感がある半導体関連や先週末からの円高が重しになっている自動車株で下落が目立ちました。

先週:第一三共、ソシオネクストショック襲来!日経平均株価はダブルトップ形成で下落継続?

 先週の日本株は力強い上昇相場の一翼を担っていた花形急騰株に飛び出した悪材料に足を引っ張られる予想外の展開になりました。

 製薬大手・第一三共(4568)が3日(月)に、肺がん治療薬の治験結果に有効性が確認できなかったことを発表し、翌4日には一時ストップ安まで売られるなど前日比14.8%も急落しました。6月13日(火)に付けた上場来高値からすでに約2割下落しています。

 システムLSIメーカーのソシオネクスト(6526)もAI(人工知能)関連銘柄の有望株として2023年に入ってから株価が一時5倍近くまで急騰しましたが、6日(木)はストップ安となり前日比22.8%も下落しました。

 大株主の富士通(6702)パナソニックホールディングス(6752)、日本政策投資銀行が持ち株の全てを海外市場で売りに出すという異例のニュースを受けての急落でした。

「第一三共ショック」「ソシオショック」といえる人気株の急落を受け、先週の業種別騰落率ランキングでは、医薬品が最下位、ソシオネクストの属する電気機器がワースト5位に沈みました。

 米国では6月13、14日に利上げ打ち止めを決めた前回FOMC(連邦公開市場委員会)の議事録が5日(水)に公表されました。

 複数の参加理事らが、利上げ停止に反対していたことが明らかになるなど、金融引き締めに積極的なタカ派的なスタンスが際立つ内容でした。

 それに追い打ちをかけたのが6日(木)夜、米国の民間給与計算代行会社ADP(オートマティック・データ・プロセッシング)社が発表した雇用調査レポートです。

 同社が発表した6月の民間雇用者数は市場予想の2倍超に達する前月比49万7,000人も増加。

 強すぎる労働市場がさらなる利上げにつながるという思惑から米国債が売られ金利が上昇。長期金利の指標となる米国10年国債の利回りが再び4%を超えました。

 この報道で6日の米国株が急落したことを受け、7日(金)の日本株も続落。

 日経平均株価の日足チャートの形状は、6月19日(月)の取引時間中高値3万3,772円と先週7月3日(月)の高値3万3,762円を二つの山の頂点にした「ダブルトップ」という形を形成しています。

 ダブルトップが形成されたあと、二つの高値を形成する途中の6月27日(火)につけた安値3万2,306円を明確に割り込んで下げが続くと、相場が天井を打って下落するシグナルになります。

 7日につけた日経平均株価の取引時間中の安値は3万2,327円と、6月27日のダブルトップの中間安値3万2,306円に最接近。

 今週の値動き次第では、4月から続いた日本株の上昇がついに天井を打って下落に転じる恐れも出てきました。

 7日(金)発表の米国の6月雇用統計では、非農業部門雇用者数が予想を下回る前月比20万9,000人増にとどまり、失業率も市場予想通りの3.6%まで再低下しました。

 しかし、平均時給が前月比0.4%増、前年同月比4.4%増と依然高い水準にあったこともあり、長期金利の代表的な指標である米国10年国債の利回りが4.1%台近くまで上昇。

 米国株は代表的な3指数ともに7日も続落して先週の取引を終了しています。

今週:内需株の決算発表に期待!米6月CPIや米銀決算発表次第では反転上昇も!?

 天井圏からの下落シグナルも出ている日本株ですが、今週は高値圏で踏みとどまる可能性があるかもしれません。

 今週は、コロナ明けの消費活動再開で活況を呈する内需株の2024年2月期第1四半期(2023年3-5月期)の決算発表が相次ぐことが支援材料になります。

 先週も全体相場が総崩れの中、コンビニ向け弁当・おにぎり販売のわらべや日洋ホールディングス(2918)が6日(木)に2023年3-5月期の営業利益が前年同期比40%近い増益だったことを発表。それを受けて7日の株価は前週末比23.7%高となりました。

 アパレルのオンワードホールディングス(8016)も6日に2023年3-5月期の営業利益が前年同期の約2.7倍まで伸び、今期の増配を発表したことで、7日の株価は前週末比26.1%高しました。

 今週も、ローソン(2651)ビックカメラ(3048)が11日(火)に、イオン(8267)が12日(水)、セブン&アイ・ホールディングス(3382)が13日(木)に決算発表を予定しています。

 旺盛な国内の消費活動や値上げ浸透、インバウンド(訪日外国人)需要を背景に、こうした内需の主力銘柄が好決算を打ち出すと、変調を来(きた)した日本株の下支え役になる可能性もあります。

 今週12日(水)には、2023年の最重要指標といってもいい、米国の6月CPIの発表も控えています。

 市場予想は、前年同月比3.1%の伸びまで、インフレの鈍化が見込まれています。

 その比較対象となる2022年6月は、CPIが前年同月比9.1%上昇と、40年ぶりの歴史的な伸びとなり、米国のインフレ率がピークを付けた月です。

 歴史的な物価高が鮮明になった1年前に比べて、予想以上に物価上昇が鈍化していれば、米国株が再び「物価鈍化で利上げ打ち止め」という希望的観測で上昇する展開も考えられます。

 一方、変動の激しい食品やエネルギーを除くコアCPIは前年同月比5.0%の伸びと、依然として高止まりする予想です。

 最近の傾向では、コアCPIが高止まりしていても、全体のCPIが鈍化していれば素直に好感して株高につながっていました。

 果たして、今回、コアCPIが予想通り高止まりした場合、市場はどんな反応をするでしょうか。

 13日(木)には、米国の6月PPIも発表されます。

 5月PPIは前月比0.3%の低下になるなど、米国製造業の不振を背景に、PPIは鈍化傾向が鮮明です。

 米国では、今週後半から2023年4-6月期の決算発表もスタートします。

 14日(金)には、5月に破たんした米国地銀ファースト・リパブリック銀行を買収したJPモルガン・チェース(JPM)が決算発表。

 買収に際しては大きな特別利益が発生したと見られており、さらに巨大化したメガバンクの好決算で、落ち込みつつあった米国株の再浮上にも期待できそうです。

 同じく14日には、ウェルズ・ファーゴ(WFC)シティグループ(C)といった米国の大手銀行も決算発表。

 高金利による商業用不動産・住宅ローンの貸し倒れなどが、大手銀行にも波及していないかに注目が集まりそうです。

 週末の6日(木)から9日(日)には、米国のイエレン財務長官が米中半導体問題について協議するため、中国を初訪問しました。対話の継続で一致したものの、半導体などハイテク分野の貿易対立を巡っては具体的な成果はありませんでした。

 先週、突如発表されたシステムLSI大手・ソシオネクスト株の、親会社による持ち株売却に関しても、対中半導体規制網を構築するための日米半導体企業による連携強化の一貫といったポジティブな捉え方もあります。

 米中の半導体を巡る緊張は、日本の半導体メーカーにとっては漁夫の利といってもいい好材料の面があるのも確かです。

 先週の円相場は、米国の長期金利が4%台まで再上昇したにもかかわらず、逆に日本政府による円買いの為替介入に対する警戒感が広がり、7日(金)の外国為替市場では1ドル=144円台から142円10銭台まで、かなり急速な円高が進行しました。

 今週も為替介入への警戒感や、7月27日(木)、28日(金)に控える日本銀行の金融政策決定会合で量的金融緩和政策に修正が加えられるのではないかという思惑で、円相場は乱高下しそうです。

 日経平均株価の日足チャート上に天井打ちシグナルのダブルトップが完成している以上、今週も急落には注意が必要になるでしょう。

 4月以降、一直線に値上がりした日本株の上昇相場が転機を迎えているのは明らかです。