トウシルはこのほど、読者の皆さまから山崎元に聞きたいテーマを募集しました。たくさんの投票をいただき、ありがとうございました。自由回答でいただいた疑問・質問は、全て本人に届けております。この記事では、いくつかの質問に回答します。(トウシル編集チーム)

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【質問】FIRE(早期リタイア・経済的自立)したいという人々に対して、なかなか難色(理解が難しい)を示されていましたが、逆になんでそんなに働き続けたいのでしょうか?

【回答】守銭奴型のFIREでは人生がつまらない





 

 私が特に「難色」というか疑問を呈したいと思っているのは、相当の期間消費を抑えて投資を増やして資産形成に注力して、中年期以降に金融資産残高による安心を図ろうとするようなタイプのFIRE指向者です。

 若い頃にストックオプションででも稼いで、一生お金の心配はないといった状態でFIREを宣言するような爽やかで本当にアーリー(E)なリタイアをする人がいれば見事なものだと感心してもいいのですが、こういった人はビジネスに関わることが好きなので、あまり早期のリタイアを宣言しません。

 サラリーマンで例えば収入の半分近くを投資に回すと、十数年で「金融資産の運用益で生活費が賄える」といったレベルの「小さなFIRE」を作る事が出来るでしょう。しかし、こうしたケースでは生活費のスケールが小さいし、50歳近くになってからFIREだと言われても、もうすでにアーリーとは言えない。この種のFIRE指向を、私は「守銭奴型FIRE」と呼んでいますが、このタイプは人生がつまらなく見えます。

 20代、30代、40代の何れの時期であっても、人生の大事な時期に、自分が稼いだお金を自分の人生のために大らかに使えない状態は、人生前半がファイナンシャルに制約されているという意味で、FIREが本来目指すところにむしろ反するのではないかとも思っています。最終的には程度の問題ですが、人生がお金の制約から解放されていない。

 どのくらい働きたいかは、人によるし、仕事にもよるのではないでしょうか。

 ただ、年齢に関係なく面白くて張り合いがあると思えない仕事に関わるのは辛い。一般論として、(多少は)面白いと思える仕事で稼げる状態を得るには、個々の人なりに何らかの工夫が必要です。ぼんやりと組織に属していて、他の人でも代わりが利く仕事だけしているのでは、無理かも知れません。これは本人に「工夫」がないのだから、仕方がありません。

 高齢期に関しては、幾つになっても人との関わりは持っていたいし、それが締め切りと報酬を伴う「仕事」である方が張り合いがあると思う人は少なくないのではないかと推測しますが、いかがでしょうか。

 もちろん、お金とは関係なく人と関わる世界を持っているというのでもいいでしょう。