5月PMI、製造業と非製造業にギャップ。需要不足響く

 官民それぞれが発表した5月のPMI数値を見てみましょう。

5月のPMI

  PMI 財新PMI
製造業PMI 48.8(▲0.4) 50.9(1.4)
非製造業PMI 54.5(▲1.9) 57.1(0.7)
国家統計局と財新の発表を基に筆者作成。PMIは国家統計局が発表、財新PMIは財新が発表。()は前月比増減。▲はマイナス。

 この表から読み取れる点は二つ。一つは、PMIの数値が4月を下回った一方、財新PMIのそれは上昇している点。もう一つは、製造業に比べて非製造業、すなわちサービス業のPMIの方があからさまに高い点です。

 二つのポイントを参考にしつつ、これらの数値から私が重要だと考える示唆を三つ書きます。

・製造業の景気感が不調である主な原因として素材価格の下落が考えられるが、特にPMIが低迷していることから、国有の大企業や内陸部における企業が困難に見舞われている。

・サービス業の好調ぶりは、特に大型連休「労働節」期間における新規受注が追い風となったと考えられ、感染を徹底的に封じ込めようとする「ゼロコロナ」解除が相当程度作用したと言える。

・製造業とサービス業の数値に明らかなギャップが存在する現状は、国家統計局が繰り返し指摘しているように、「経済が内的な原動力を欠いている」という需要不足に起因する。

 今後の見通しは、次の三つです。

 一つ目に、先週のレポートで扱った新型コロナ「第2波」に関して、中国当局がオミクロン株の感染拡大を食い止めるために、景気回復と逆行する政策を取るような形跡が見られないことは朗報であるということ。

 二つ目に、中国政府は金融緩和や財政出動といった景気刺激・支援策を常に用意し、必要に応じて発動していく見込みであるということ。市民の住宅購買欲を刺激する中央政府からの政策にも要注目。

 三つ目に、これから夏にかけて、史上最多となる1,158万人の大学卒業生が市場に流れ込んでくる。16~24歳の調査失業率は足元で過去最高の20.4%を記録しており、さらなる上昇が予想される。若者の失業率上昇は、需要不足を構造的に深刻化させるリスクとして懸念される。

 5月の生産、投資、消費指標を含めて、中国経済の動向からますます目が離せません。本連載でも適宜、丁寧にアップデートしていきたいと思います。