新興国が成長したら金が急騰。どうして?

 金価格が急騰し始める直前の1990年後半、先進国は経済成長が頭打ち、もしくは鈍化し始めていました(日本はバブル崩壊直後)。ITバブルなどの部分的なバブルはみられたものの、世界規模の経済成長に発展することはありませんでした。

 これまでのように経済成長を維持したい先進国が注目したのが、国土が広く、人口が多い一方、当時はまだ経済は発展途上だった「新興国」です。経済鈍化を回避する意味もあり、先進国は中国、中国、ブラジル、ロシアなどの新興国に資金を投じ始めました。

 新興国における発電所の設置、道路や電気、水道などのインフラ整備のため、先進国は国家レベルで資金を投入。日本のように、安い労働力を求めて生産拠点を新興国に移す動きも目立ち始めました。さらに、新興国の個別企業に投資する先進国企業も増え、新興国は一気に経済活動を活発化、著しい経済成長がはじまりました。

 これらにより、中国のGDP(国内総生産)成長率(前年比)は10.04%(2003年)から14.2%(2007年)となりました。2017年の成長率が6.9%であることに比べると、桁違いの成長率です。また、インドのGDP成長率も7.86%(2003年)から9.8%(2007年)に上昇しました。国土も広く人口も多い2大国家の急速な経済成長は、世界経済に大きなインパクトを与えました。

 経済が成長するにつれて中国とインドの個人消費が増加しました。個人消費の増加はこれらの国の金需要を増加させる要因となりました。このことは価格が動かなかった金の価格に影響を及ぼし、冒頭で述べたように、金価格が急騰する一因となったのです。

図:新興国(BRIC’S)と先進国(G7)のGDP成長率(前年比)の推移

出所:UN(国連)のデータをもとに筆者作成

 

 そして、ここでもう一点注目したいのは、金の生産量を押し上げた中国とインドにおける個人の「金の価値感」です。