※本記事は2019年5月3日に公開したものです。
連載3回目も、金(gold)の急騰に注目します。
今回注目するのは、中東で紛争が勃発していた1970年代に起きた金の急騰です。
1970年代、「有事の金」が本領発揮
1970年代、世界でさまざまな危機(有事)が連続で勃発し、金価格はその影響を受けて急騰しました。1970年台NY金のデータをもとに、その影響を見ていきます。(東京市場に金が上場したのは1982年のため、1970年代は東京金の価格データがありません)
図:NY金先物(期近、月足、終値)
金が急騰した1970年代後半から1980年代前半にかけ、上グラフ内のように、多くの中東危機が時間をおかず、頻発しました。
この時期の金の急騰は、ズバリ、「戦争などの有事の発生による情勢不安の折、価値が失われない実物資産の金を買う」、というムードが世界中に広がったことが要因と言えます。連載1回目、連載2回目のように、複雑な背景はなく、単純に、「政治不安が投資家を金投資に走らせた」というのが理由なのです。
1970年代の金の急騰を「風が吹けば、桶屋が儲かる」に当てはめれば、シンプルに「有事が起きたら、金が急騰した」ということになります。
当時は、有事が直接的に金相場に影響する、非常に分かりやすい構図でした。大まかに言えば、有事の予兆の段階や発生後に激化した時に金価格が上昇し、発生後(材料出尽くし)や激化した有事が鎮静化に向かった時に金価格が下落、という流れでした。有事の動向が、金相場の上昇にも下落にも強く関わる状況だったわけです。