排ガス規制の強化も欧州のプラチナ消費増加の一因

 また、欧州の排ガス規制の厳格化も、欧州の排ガス触媒向けの消費を増加させた可能性があります。

 プラチナ価格の上昇が目立った、2000年代前半から2008年半ばごろは、1990年代前半から始まった欧州における排ガス規制の厳格化が段階的に始まった時期でした。排出基準量がどんどん制限され、欧州の各自動車メーカーはこの対応に追われました。

 規制の厳格化は、より多くの有害物質を浄化するために排ガス浄化装置1個あたりに用いられるプラチナの量を増やし、欧州全体の排ガス浄化装置向けプラチナ消費量を、引いてはプラチナの全体の消費量を増加させ、プラチナ価格上昇の要因となったと考えられます。

 上記の流れを「風が吹けば桶屋が儲かる」に当てはめると、「環境意識が高まったらプラチナ価格が急騰した」となります。

 欧州の排ガス規制の厳格化を機に、欧州の自動車部品メーカー各社の間では、排ガス浄化装置の改良など、技術革新が飛躍的に進歩したと考えられます。

 そして、排ガス浄化装置だけでなく、出力を維持したまま、排出される排ガスに含まれる有害物質を少なくする、エンジンそのものの改良も進んだとみられます。

 厳格化していく排ガス規制への対応、そして研究開発費・人件費などの各種コストなど、さまざまな厳しい条件がのしかかった末に起きたのが、2015年10月に発覚したフォルクスワーゲン問題だと考えられます。

 今回とりあげたプラチナ価格の上昇は、2000年代前半~2008年半ばに起きた価格変動であり、フォルクスワーゲン問題とはタイミングも背景も異なるため触れませんでしたが、次回以降、フォルクスワーゲン問題に端を発したプラチナ価格の変動の背景について、書きたいと思います。