OPECプラスの内部事情は悲喜こもごも

 来年(2024年)、OPECプラスに60万バレルの表向きの減産をする余地ができたと書きました。これは全体の話であり、個別にみると様子が異なります。以下は、現在(2023年5~12月まで)の生産量の上限と、今回の会合で決定した2024年(1~12月まで)の生産量の上限の差です。

 この値は、表向きの減産の根拠であるわけですが、「増産の余地」にもなり得ます。「上限」ですので、この量よりも少ない量の生産をしていた場合は、ここまでは生産量を増やしてもよい(増産できる)、ここまで生産量を増やしても、減産非順守にはならないわけです。

図:2023年6月と2024年の生産量上限の差(増産余地の増減幅)

出所:OPECの資料およびライスタッド エナジーのデータをもとに筆者作成 

 60万バレルという全体の増産余地(表向きの減産余地)は、OPEC(10カ国)分が62万バレル、非OPEC(10カ国)分がマイナス1万バレルです(四捨五入の都合で差し引きした値が合わない場合がある)。この場合の「マイナス」は、さらに厳しい減産を強いられたことを意味します。

 一部で「UAEに有利、ナイジェリアに不利な決定がなされた」と報じられているのは、このためだと考えられます。このように、国によって有利不利が生じているのは、冒頭の会合の概要の箇所で述べた「埋め合わせ」の原則が適用されているからだと、考えられます。

 これまで、減産を順守してこなかった国はペナルティとして、順守してきた国に増産枠を献上するようなイメージです。

 今回の会合の資料には、実際の生産量を調査する上で、三つの情報源※を参照するようにする旨の記載があります(※IHS(英国)、ウッド マッケンジー(英国)、ライスタッド エナジー(ノルウェー)。いずれも西側色が強い国の調査機関である点が興味深い)。

 マイナスが大きく、埋め合わせで不利な状況に追い込まれた西アフリカ諸国(ナイジェリア、アンゴラ、コンゴの3カ国)は、こうした機関によって生産量の調査がなされる旨、名指しされています。

 今回の会合で、OPECプラスは全体の増産余地(表向きの減産余地)を設定することに成功したとみられますが、内部的には悲喜こもごもだったと言えるでしょう。こうした状況より、OPECプラスは決して一枚岩ではないと言えますが、同時に、守っていない国には徹底して減産を守らせる、ある意味強い一面を持っているとも言えます。