先週の日経平均株価(225種)は、米国政府の債務上限問題が解決に向けて動き出したことを受け、5月29日(月)、30日(火)と連日、バブル経済崩壊後の最高値を更新。

 31日(水)には米議会での債務上限を巡る法案審議が共和党強硬派の反対で難航するのではないかという懸念で、日経平均も前日比440円安と、久々に大幅反落しました。

 しかし、米国時間の31日深夜(日本時間6月1日午前)、米議会下院で債務上限を停止する法案が与野党の賛成多数で可決。

 6月1日(木)には上院でも可決されたことで、2日(金)の日経平均の終値は3万1,524円と、再びバブル後最高値を更新して先週の取引を終了しました。

 終わり良ければ全て良し、ではないですが、5月31日の急落が絶好の買い場となり、再び上昇の勢いに弾みがついた形です。

 米国のデフォルトが回避されたことを受けて、週明け5日(月)の日経平均は続伸して始まり、終値は前週末比693円高の3万2,217円でした。バブル後最高値を先週に続き再び更新し、1990年7月以来、約33年ぶりに3万2,000円台を回復しました。

 一方、先週の米国市場では30日(火)、AI(人工知能)向け半導体の販売好調でAI熱狂相場に火を付けた高速半導体メーカーのエヌビディア(NVDA)の時価総額が一時1兆ドル(約140兆円)を突破。

 エヌビディアも構成銘柄の一つとして採用されているハイテク株主体のナスダック総合指数は2日の終値が前週末比2.0%高と高値更新が続いています。

 ダウ工業株30種平均は、5月は米国の景気後退懸念から前月比3.5%安と低迷しましたが、6月2日(金)発表の堅調な5月雇用統計の結果を受けて前日比2.1%上昇し、息を吹き返した格好です。

先週:米国債務上限問題に一喜一憂。最後は堅調な米雇用統計で全面高!

 先週の株式市場は、米国の債務上限問題に振り回された1週間でした。米国政府の債務が法律で決められた上限に達して、米国債の元本償還や利払いのための資金が調達できずデフォルト(債務不履行)に陥る恐れがありましたが、土壇場で回避されました。

 5月27日(土)に民主党のバイデン大統領と共和党のマッカーシー下院議長が債務上限の適用を2025年1月まで停止し、2024、2025年度の政府の歳出に上限を設けることで合意しました。

 この報道を受け、週明け29日(月)の日経平均は取引開始直後に3万1,560円の高値を付け、これが結局、先週1週間の取引時間中の最高値となりました。

 米債務上限引き上げを巡って共和党強硬派が合意に反対姿勢を表明すると、法案がすんなり議会を通過するかどうかに対する不安感が台頭し、31日の日本株は久しぶりに急落しました。

 しかし、米国時間31日夜(日本時間6月1日午前)に、バイデン大統領とマッカーシー下院議長の合意を盛り込んだ「財政責任法案」が賛成多数で下院を通過。

 米国時間6月1日(木)深夜には上院でも可決され、米国の債務上限問題は米国政府がデフォルトに陥るといわれた5日(月)のタイムリミットぎりぎりで解決の運びとなりました。

 日本では、法案の上院可決が2日(金)午前に伝わり、日経平均の終値は3万1,524円まで上昇。

 バブル後最高値を再び更新し、前週末比2.0%高、8週連続の上昇となりました。

 ただ、先週の日本株には、悪材料もちらほらと見受けられるようになりました。

 その一つが、5月30日(火)に日本の中央銀行に当たる日本銀行と財務省、金融庁が三者会合を開き、1ドル=140円台に突入していた円安ドル高の円相場の動向について協議を行ったこと。

 この報道もあって、株価の追い風となる円安トレンドが止まり、為替レートは6月1日に一時1ドル=139円台後半まで円高に振れました。

 さらに中国では、北京の病院が4時間待ちとなるなど、新型コロナウイルス感染症が再拡大しているとの報道が伝えられ、5月31日(水)に香港ハンセン指数が1.9%安と急落したのも悪材料といえました。

 また、米国の債務上限問題解決という好材料が出尽くしたのも、悪材料とはいえませんが、相場の雰囲気が変わるきっかけになりそうです。

 好材料としては、日経平均が絶好調にもかかわらず、不振が続いていた2日(金)の東証マザーズ指数が前週末比4.4%高と上昇に転じたこと。

 同じく、傘下の投資ファンドが巨額赤字を計上して4月以降の日本株上昇に乗り損ねていたソフトバンクグループ(9984)が、AI関連株の一角として見直され、2日の終値は前週末比16.6%高と急騰しています。

 まだ株価が上昇していない企業に見直し買いが入り、さまざまなタイプの株が循環物色される流れが出てきたのは、日本株の上昇がさらなる大相場につながる兆しかもしれません。

 また、世界株式に連動した株価指数として有名な「MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)指数」の資産再配分(リバランス)にともなう大量の売買のせいもあり、5月31日の東証プライム市場の売買代金は過去最高の6兆9,552億円に到達。

 これも、外国人投資家をはじめ多くの投資家の参入で日本株の売買が過去最高レベルまで盛り上がっている証拠といえるでしょう。

 ちなみに、外国人投資家は5月第4週も日本の現物株を3,816億円買い越し。現物株の買い越しは実に9週連続となっています。

 一方、米国株で上昇の勢いが強かったのはハイテク株が集うナスダックです。

 背景には、先週後半に、米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)の高官から、まだ利上げを停止できる段階にはないものの、6月13日(火)、14日(水)に迫ったFOMC(連邦公開市場委員会)では利上げをいったん休止する可能性が高い、という発言が相次いだこともあります。

 2日(金)発表の米国の5月雇用統計は、非農業部門の雇用者数が前月比33万9,000人も増加して、市場予想を大幅に上回ったものの、失業率が4月の3.4%から3.7%に悪化。

 インフレに直結する平均時給の伸びは4月の前月比0.4%増から0.3%増に伸びが鈍化し、市場予想と一致しました。

 強弱入り乱れた内容だったため、2日の米国株はこの結果を歓迎して大幅高となりました。

 特に、これまで不振だったダウ工業株30種平均は前日比701ドルも上昇し、1週間を通じても前週末比2.0%の上昇率となりました。

 6月のFOMCで利上げがなく、景気や雇用は高金利政策が続いても失速せず、インフレが加速しない程度の好調が持続している、という「適温(ゴルディロックス)相場」の兆しが見られたことは、今後の米国株にとって朗報といえるでしょう。

 新型コロナの再流行で低迷していた香港ハンセン指数も、米国の債務上限問題が解決したことを好感して、2日には前日比4.0%も急騰しています。

今週:日経平均3万2,000円台回復!先物・オプション取引次第でさらなる上昇も!?

 先週後半に米国債務上限問題解決と6月FOMCでの利上げ休止観測という好材料が続出したこともあり、今週も週前半は日本株、米国株ともに上昇に期待できそうです。

 日経平均は5日の取引で3万2,000円の大台に乗りました。

 ただ、今週9日(金)には、「メジャーSQ(特別清算指数)」と呼ばれる先物取引やオプション取引の清算日が控えています。株価指数先物とオプションそれぞれの清算日が3カ月に1度重なる日で、売買が膨らみ、株価が乱高下しやすくなります。

 ここまでの日本株の急騰には、オプション取引や先物取引で損失が生じた機関投資家による損失回避の反対売買も貢献していました。

 例えば、「日経平均を3万2,000円で買う権利」(コール・オプションといいます)をほかの投資家に売っていた投資家は、6月9日のSQで、日経平均が3万2,000円を越えていた場合、その差額分の損失が発生します。

 そのため、日経平均先物を買うことでその損失を回避しようとします。

 こうした損失回避の買いが日経平均をバブル後最高値水準まで押し上げる影の力になっていた面もあったのです。

 先物やオプションの取引が清算されるSQ日前は相場が乱高下しがち。今週はその影響がマックスに達するため、注意が必要です。

 今週、注目されそうな経済指標は、5日(月)発表の米国ISM(全米供給管理協会)の非製造業景況指数。企業の購買担当者へのアンケートを基に非製造業の景況感を示す先行指標です。

 あまりに好調すぎると米国の物価高止まりにつながるため、米国株にとってはネガティブでしょう。

 8日(木)には、2023年1-3月期の日本の実質GDP(国内総生産)の改定値も発表になります。

 速報値はコロナ明けで個人消費が活発だったこともあり、前期比年率換算で1.6%の増加と、日本にしては堅調な伸びでした。

 改定値がさらに上振れすると、日本株にとって追い風になります。

 日経平均の2023年の上昇率は6月2日時点で前年末比20.8%に達しています。

 今年に入ってからの株価上昇は、安倍政権下でのアベノミクス相場のように明確な名前はありませんが、「ウォーレン・バフェット相場」「植田日銀新総裁就任のご祝儀相場」「PBR1倍割れ相場」などと呼べるかもしれません。

 ただ、2012年12月に始まったアベノミクス相場も2013年5月に高値を付けていったん小休止しています。

 そのときの日経平均の上昇率は約6カ月で約6割高とすさまじいものでしたが、6カ月が一つの節目になったのは確か。

 そう考えると、今回の日本株上昇も年初から6カ月目の高値警戒感から、そろそろ急落があってもおかしくありません。

 日本株がどこまで上値を試せるか、今週も楽しみです。