2024年NISAは「ちょうど良い枠」がなくなる?
2024年からの新しいNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)についていろんな情報が増え始めました。書店には対応書籍が並び始めています(私も初夏には書店の棚に一冊拙著を加えさせていただく予定です)。
NISAが魅力的な制度に大幅アップデートされることで、口座開設者数、資産額ともに拡大することが期待されています。
2024年からの新しいNISA活用についていくつかのポイントがあるとすれば、やはり「枠の拡大」が言われます。なにせ全体としては年360万円、つみたて投資枠だけでも年120万円の枠があるわけで、現状のつみたてNISA年40万円、一般NISA年120万円と比べて大違いです。
しかし、私はどうもこれが普通の人にとってはマイナスに作用しないかと心配しています。
ほとんどの人は「なんとなく」投資をスタートします。「もうかりそう」という発想からスタートしても、それはそれで投資の世界に入る第一歩となればいいことです。
しかし、こうした普通の人たちにとっては、「なんとなく」積立額の目標を設定するには、新しいNISA制度の枠が大きすぎるのです。
現状のつみたてNISA枠をきっちり埋めることを2024年以降もイメージしたい
iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)の利用者調査のデータを見たことがありますが、多くの人が「月1.2万円もしくは2.3万円の上限」で掛金額を設定しています。つまり、「上限まで設定しよう(税制優遇もあるしね)」という発想があるわけです。
その次にくるのは「月1.0万円」というキリのいい数字です。わざわざ「わが家の家計の拠出余力をきっちり分析したので、1.4万円積み立てよう」と中途半端な数字を設定する人は少ないわけです。
「枠」「キリのいい数字」が個人の貯蓄や投資行動を無意識に制約することはよくあります。拠出余力とは違う話になりますが、株価や為替レートがキリのいい数字を軸に行ったり来たりすることはよくあることです。
iDeCoの枠というのはそういう意味では「全額埋めようと思うのにちょうどいい数字」となっています。実は現状のつみたてNISAも、「ちょうどいい数字」です。
年40万円が12で割り切れないというのはご愛敬ですが、月あたり3.3万円というのは、ちょっとがんばって資産形成を目指す人たちにとって「ここはなんとか満額埋めていこう」と思わせるのに十分な数字でした(資産形成余力のある人にとっては一般NISAの月10.0万円相当というのも分かりやすい枠です)。
あるいは「月3.3万円を目指しつつ、2.0万円くらいはなんとか」のようにキリのいいところで積立額を決めている人も多いはずです。
つみたてNISAが一般個人、特に投資経験の浅い若い世代の利用を想定していることは間違いありません。こうした人にとっては「年間40万円を目標に積立投資」というのはリアリティのある数字だったわけです。
今後、「つみたて投資枠年120万円」と拡大したとしてもそこで「投資するお金はないよ」と思考停止はせず、ぜひ「年40万円くらいをがんばろう」というイメージを持ち続けてほしいと思います。
NISA年40万円の積立投資とiDeCo満額で65歳のときにいくらたまるのか
それでは「年40万円」をがんばって積立投資するとどれくらいになるか試算してみましょう。
(いずれも25年積立、年4.0%の利回り)
NISA年40万円+iDeCo月1.2万円の場合
NISA:1,714万円
iDeCo:617万円
合計:2,331万円
NISA年40万円+iDeCo月2.3万円の場合
NISA:1,714万円
iDeCo:1,182万円
合計:2,896万円
夫婦でダブルNISA、ダブルiDeCoの場合
(iDeCoは月1.2万円)
NISA:3,428万円
iDeCo:1,234万円
合計:4,661万円
※端数処理の関係で一致していない
25年というモデルですから、40歳のスタートで65歳までの積立でも間に合う計算となります。iDeCoは公的年金制度に加入する働き方なら65歳まで積立が可能で、NISAは年齢上限がありませんので、拠出余力がある限り続けることができます。
カギとなるのは毎月の積立額をしっかり捻出していくことです。何度か指摘をしていますが「節約こそ運用の第一歩」だということを忘れずにしっかり家計管理することができれば、未来はぐっと開けてくるはずです。
「上限1,800万円」を意識しても「年40万円」の維持がカギ
こうして試算をしてみると、「上限の1,800万円」をリタイアまでにクリアしていく、というイメージづくりにも「年40万円の積立投資を継続」が悪くない水準であると分かります。
安心した老後を迎えるには
- 厚生年金を受け取る(できれば夫婦二人分)
- 退職金や企業年金を受け取る
- iDeCoを受け取る
- NISAを受け取る
といった資産形成が必要になりますが、このうち1の「夫婦で二人分」以降は「老後に2,000万円」の準備金としてカウントすることができます。
金額として大きいのは「二人目の厚生年金(月5万円程度であっても累計では1,000万円を超える可能性が高い)」「退職金・企業年金制度(企業ごとに水準は異なるが1,000万円を超える可能性がある)」ですが、やはりiDeCoやNISAの占める割合も高まっています。
新しいNISA制度のつみたて投資枠が3倍になるからといって、無理をする必要はありません。今年40万円のペースで積み立てしている人はそのまま続けていけばいいですし、これから新しくスタートする人も無理のないペースで積立を続けていきましょう。
それが必ず未来の安心につながってくるはずです。