先週の日経225先物は2万9,070円で終了

 今週の国内株市場は連休明けで迎えました。

 連休期間中の日経225先物取引市場の動きをたどっていくと、週末5月5日(金)のCME(シカゴ先物取引所)では2万9,070円で取引を終えています(下の図1)。

図1 日経225先物(日足・CME)とMACDの動き (2023年5月5日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 連休前の5月2日(火)の日経平均株価終値(2万9,157円)と比べると、87円ほど下げてはいますが、連休の前後で大きくギャップを空けずに済み、ひとまず波乱含みの連休明けは避けられそうです。

 ただ、週末5月5日(金)に見せた株価反発までの動きは、2万8,500円近くまで下落していた場面もあり、5月1日の直近高値(2万9,355円)を超えられるほどの勢いを取り戻すことができるかどうかが目先の焦点となりそうです。

 そのため、米国株市場の動きを含めて、先週の値動きをもう少し掘り下げて考えていきたいと思います。

先週の米国株市場、NYダウ、ナスダックともに下落&持ち直し

図2 米NYダウ(日足)とMACDの動き (2023年5月5日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 まずはダウ工業株30種平均(NYダウ)です。

 先週末5日(金)の終値は3万3,674ドルでした。前週末終値(4月28日の3万4,098ドル)からは424ドル安となっています。

 先ほどの図1と同様に、NYダウも週を通じて下落する場面が目立ち、週末5月5日(金)に持ち直す展開でした。

 株価と移動平均線との絡みで見ていくと、50日移動平均線がサポートとなる一方、5月5日(金)の反発局面では25日移動平均線が抑える格好となっています。

 チャートを過去にさかのぼると、昨年12月あたりから、3万4,000ドル台乗せを試す場面が多くなっていて、この3万4,000ドル台は「節目」として強く意識されている印象です。

図3 米ナスダック(日足)とMACDの動き (2023年5月5日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 続いてナスダック総合指数(ナスダック)です。

 ナスダックも週の半ばに下落し、週末に反発という展開でしたが、NYダウでは週末の反発で上値を抑えていた25日移動平均線が、ナスダックでは上放れしていて、NYダウよりも強い形となっています。

 また、足元では下値が切り上がりつつ、2月2日の直近高値超えをトライする格好の「三角保ち合い」を形成しているように見えます。週末の株価はこの三角保ち合いの上限近くに位置しているため、「上抜けできれば一段高」も想起させる状況です。

 あらためて、先週の米国株市場を振り返ると、5月1日のw3ファースト・リパブリック・バンクの経営破綻をきっかけに、米地域銀行の連鎖破綻懸念が相場の重しとなる中、FOMC(米連邦公開市場委員会)や、アップルの決算、米4月雇用統計といった、イベントの動向が注目されていました。

 これらのイベントの状況をざっくり整理します。

[1]FOMC

 まずFOMCでは大方の予想通り、0.25%の利上げが決定され、声明文では追加利上げに対して、ややトーンダウンする文言となりました。

 結果、公表直後の米国株市場は上昇で反応しましたが、その後のパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の記者会見では、年内の利下げを否定したことで下落に転じました。

[2]アップルの決算

 2四半期連続の減収減益だったのですが、いずれも市場予想ほど悪くなかったことや、メキシコやインドネシアでiPhoneの売上が過去最高を記録したこと、4月から直営店をオープンしたインドでも好調な滑り出しを見せていること、などの明るい材料も影響し、アップル株をはじめとする大手IT銘柄の株価上昇や、週末の米国株全体の反発にも寄与する面がありました。

[3]米4月雇用統計

 非農業部門雇用者数や平均時給が前回よりも増加し、失業率も低下を続けるなど、全体として強い結果となりました。

 これまでの「インフレ視点」で捉えれば、株式市場にとってネガティブなのですが、今回の雇用統計の結果を受けた株式市場は、おおむね好感する動きとなりました。

 インフレを懸念するほどの強すぎる結果でなかった面もありますが、直近の市場がインフレよりも景況感の悪化の方に敏感になっていることも考えられます。

 このように、日経225先物取引の株価水準が連休前とあまり変わらなかったこと、米国の注目イベントを無難に消化したことを踏まえると、今週の株式市場は上値トライの展開も期待できそうではありますが、その一方で、テクニカル分析的には上値が重たくなりそうなサインが出ています。

上値を抑える五つのサインをチェック

[1]米アップル株

図4 米アップル株(日足)とMACDの動き (2023年5月5日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 一つ目は、週末にかけての株価反発のけん引役となった米アップル株の動きです。

 上の図4を見ても分かるように、足元の株価は、昨年1月からの戻り高値の抵抗となっていた「上値ライン」を上抜けてきました。

 先週の軟調な場面では、この上値ラインが抵抗から今度はサポートとして機能し、週末5日に一段高となっています。

 値動きの形としては強いのですが、株価が上向きなのに対し、下段のMACDは下向きとなっていて、いわゆる「逆行現象」が出現しています。「そろそろ上昇の勢いが後退するかも」という想定はしておいた方が良いかもしれません。

[2]ナスダック

図5 ナスダック(日足)と多重移動平均線の動き (2023年5月5日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 相場の上昇の勢いが後退するといえば、ナスダックも上値がいったん重たくなる可能性がありそうです。上の図5は、ナスダックの日足チャート上に、多重移動平均線を描いたものです。

 多重移動平均線とは、「たくさん移動平均線を描いたもの」です。楽天証券のマーケットスピードでは、2日から28日の期間で2日刻みの移動平均線が14本描かれています。

 一般的に、移動平均線は相場の動きに対して、期間の短いものから順番に反応していきます。細かい移動平均線を複数描き、移動平均線同士の広がりや狭まる動きからトレンドの強さや転換を探ろうとするのが多重移動平均線の基本的な見方です。

 トレンドの勢いが強いときには、移動平均線全体の幅が広くなり、トレンドの勢いが後退したり、トレンドの転換時には移動平均線の幅が収束していきます。

 上の図5では、移動平均線の幅は収束しつつあるように見えますので、上昇の一服感や、トレンド転換が意識されそうな状況となっています。

[3]S&P500

図6 米S&P500(日足)のギャン・アングルとMACDの動き (2023年5月5日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 三つ目として、米S&P500種指数の動きも下方向の意識が強まりつつあるかもしれません。

 上の図6は、比較的期間が長めのS&P500の日足チャートです。ギャン・アングルについては、これまでのレポートでも何度か紹介しましたが、S&P500については、「3×1」ラインと「4×1」ラインの範囲内での推移がしばらく続きそうに見えますので、基本シナリオとしては、下値が堅いイメージです。

 ただし、下段のMACDに注目すると、下向きを強めているように見えます。チャートを過去にさかのぼると、MACDが上向きから下向きに転じたときにS&P500が下落する場面が多いことが分かります。

 とりわけ、「0p」ラインを下抜けたときに大きく下落しており、足元ではその0pラインまでの距離もあまりないことから、相場が下振れすることも想定しておいた方が良いかもしれません。

[4]米ラッセル2000

図7 米ラッセル2000(日足)の動き (2023年5月5日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 さらに、上の図7は米ラッセル2000の値動きです。ラッセル2000は、米国の中小型銘柄で構成されている株価指数ですが、当然ながら大型株に比べて、景気の影響を大きく受けます。

 そのラッセル2000は、先ほども見てきた米国の株価(NYダウ、ナスダック、アップル株、S&P500など)の動きと比べても、かなり出遅れています。それだけ景況感への警戒は根強いものがあることの証左ですが、過去の値動きからすると、1,700pあたりが要注意ラインとして意識されそうです。

[5]日経平均

図8 日経平均(週足)の線形回帰トレンド(2023年5月2日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 最後に日経平均についても、上の図8のように、コロナ・ショック時の2020年3月を起点とした週足の線形回帰トレンドが示すように、足元の株価はトレンドの中心線あたりに位置していることが分かります。

 ここから中心線を超えて上値をトライするには、足元の相場環境を考慮すると、さらなる買い材料が必要になってくると思われます。

 したがって、今週の株式市場は上値トライの期待が残る格好で迎えたものの、その裏では上昇の一服や、最近まで堅かった下値が崩れてしまうサインも出始めており、かなり厄介な状況であると考えられます。

 とりわけ、米国では、早ければ5月初旬にも訪れるとされる「債務上限問題」が注目されてくるかもしれません。

 早期の政治的解決へのプレッシャーとして、催促相場的な下落もあり得るため、これまで功を奏してきた、株価が軟調なときの押し目買いが報われない事態を想定しておく必要があり、難しい局面に入ったといえそうです。