先週は週前半に発生した米国の地方銀行に対する信用不安による下落相場を「GAFAM」と総称される米国巨大IT企業の好決算が吹き飛ばし、底堅い展開になりました。

 日本銀行の植田和男総裁が就任した後初めてとなった27日(木)、28日(金)の金融政策決定会合では、金融緩和策の維持を決めました。政策修正が遠のくとの見方が広がり、28日の日経平均株価(225種)終値は前週末比292円高の2万8,856円でした。年初来高値を更新しました。

 米国では、地銀の破たんが3月に相次いだ際、株価が大きく下落したファースト・リパブリック銀行(FRC)が24日(月)に決算発表。

 2023年3月末の預金量が昨年末より41%減少したことが判明し、再び金融不安に火がつき、全体相場を押し下げました。

 しかし、25日(火)発表のマイクロソフト(MSFT)、26日(水)発表のメタ・プラットフォームズ(META)の2023年1-3月期決算が市場予想を上回り、FRCが引き起こした金融不安を払拭(ふっしょく)。

 機関投資家が運用の指針とするS&P500種指数は27日(木)終値時点で、前週末比0.04%高とマイナスからプラスに転換しました。

 ハイテク株が集まるナスダック総合指数の27日終値は0.58%の上昇でした。

 今週、日本はゴールデン・ウイーク(GW)休暇に入るため、東京株式市場で取引があるのは5月1日(月)、2日(火)の2日間のみ。

 GWの休場をにらんだ手じまい売りもあるため、小動きが予想されます。

 米国では、2日(火)、3日(水)に、金融政策を決めるFOMC(連邦公開市場委員会)が開催され、5日(金)には4月雇用統計の発表も控えています。海外市場が乱高下する展開に警戒が必要です。

先週:金融不安再燃もGAFAM好決算で救われる!日銀会合は小波乱

 先週は23日(日)に米国の生活用品チェーンであるベッド・バス・アンド・ビヨンド(BBBY)が米連邦破産法第11章(日本の民事再生法に相当)の適用を申請して経営破たん。

 同社は業績不振が続いていたものの、米国の個人投資家が好んで短期売買する「ミーム株(はやりの株)」として有名でした。

 3月に生じた米国地銀の相次ぐ破たんを背景に資金繰りが悪化したことが破たんの決め手になったようです。

 金融不安に再び火をつけたのは、24日(月)の米地銀FRCの決算発表でした。

 FRCは3月にシリコンバレー銀行など米国地銀が相次いで破たんした際に預金が大量に流出し、米大手行から総額300億ドル(約4兆円)の救済預金を受けるなど、支援を受けていました。

 にもかかわらず2023年3月末の預金総額が1045億ドル(14兆円)と、2022年末の約40%に相当する約719億ドル(約9.6兆円)も減少したことを発表。

 決算発表以降も、既存株主に打撃となる新株の発行を検討しているといった報道や同社が米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)の緊急融資制度から融資を受けられなくなる可能性が報じられ、24日から26日(水)にかけて終値が64%も急落しました。

 また、25日(火)には、スイス金融最大手UBSグループ(UBS)が富裕層向け資産運用部門などに420億ドル(約5.6兆円)の資金が流入したと発表しました。UBSは3月に経営危機に陥ったスイス第2位のクレディ・スイス・グループを救済買収しており、クレディ・スイスの顧客がUBSに資産を移し替えたようです。

 ただ、その日発表した2023年1-3月期の純利益は前年同期から大きく落ち込み、UBSの株価は大幅に下落しました。

 こうした金融不安の再来に覆われかねない悪いニュースから株式市場を救ったのは、米国巨大IT企業「GAFAM」の内、アップルを除く各社が25日(火)~27日(木)に発表した好調な決算でした。

 25日(火)のマイクロソフト(MSFT)の2023年1-3月期決算は、クラウドビジネス「アジュール」の成長加速で純利益は前年同期比9%の増益。

 この日、同じく発表されたアルファベット(GOOG)の決算でも、純利益が8%減となったものの主力のネット広告ビジネスが好調で売上高は予想を上回りました。

 さらに26日(水)にはメタ・プラットフォームズ(META)の決算発表があり、売上高はこれまで3四半期連続の減収でしたが、AI(人工知能)を駆使した主力のデジタル広告事業が回復し、3%の増収に転換しました。

 このメタ・プラットフォームズの好決算をきっかけに、米国市場は27日(木)に大幅上昇に転じました。

 27日(木)に発表された米国の2023年1-3月期の実質GDP(国内総生産)は前期比年率換算で1.1%の増加と、予想を大きく下回りましたが、特に大きな影響はありませんでした。

 この日はアマゾン・ドット・コム(AMZN)も2023年1-3月期の決算を発表。ネット通販を支援する広告部門の急成長が継続し、売上高・利益ともに予想を上回る結果に。

 しかし、主力のクラウド事業「AWS」の成長鈍化が今後も続くというCFO(最高財務責任者)の発言もあって、28日の時間外取引でアマゾン株は下落に転じています。

 日本では27日(木)と28日(金)に、日銀の植田和男新総裁の就任後、初となる金融政策決定会合が開催されました。

 28日正午過ぎに発表された政策内容は、金融緩和を継続するという無難なものとなったことから株価は上昇しました。

 金融政策の変更については、次回の6月15、16日の決定会合があらためて市場の注目の的になりそうです。

 先週の日本株では、東京証券取引所が経営改善要請を出しているPBR(株価純資産倍率)1倍割れ銘柄の多い建設セクターが上昇しました。

 大林組(1802)は、大株主の英国アクティビストファンドが6月の株主総会で特別配当を提案したことが好感され、株価が大きく値上がりしました。

 また、燃料噴射システムなどトヨタ自動車系の部品会社・愛三工業(7283)も26日(水)に発表した2023年3月期営業利益が前期比39%増になったことが強材料となり、株価が急上昇しました。

 自動車部品会社も業績は好調なものの、PBR1倍割れの割安株が多く、愛三工業以外にも決算が好調だった電子キーの東海理化電機製作所(6995)などが買われました。

 PBR1倍割れ企業は、保有する純資産に対して株価が安く、会社の解散価値を下回っている企業です。

 こうした企業がPBR1倍を回復するためには、株価の上昇に貢献し、不必要にため込んだ純資産を吐き出せる積極的な株主還元策が最も手っ取り早い解決策。

 そのため、東証が要請を出した3月末以降、PBR1倍割れ企業には思惑買いが盛んに入るようになりました。

 その流れは5月に入っても止まらないでしょう。

 一方、鉄鋼の電炉メーカーの東京製鉄(5423)は21日に2024年3月期の経常利益が21%減になるとの予想を発表し、大きく売られました。鉄鋼セクターや海運セクターなど、景気敏感株が下落しました。

今週:FOMC、米雇用統計で週後半に乱高下!?パウエル発言に警戒

 日本では5月1日(月)と2日(火)の取引のみの今週ですが、海外では大きな経済イベントや米企業の決算発表が予定され、忙しい1週間になります。

 米国では1日にISM(全米供給管理協会)が4月製造業景況指数を発表します。

 前回3月は好不況の分かれ目である50を大幅に下回る46.3まで低下し、米国株の下落につながっただけに、今回もどれぐらい落ち込むかに注目を浴びそうです。

 3日(水)には、米国の政策金利を決めるFOMCが終了。

 事前予想では、0.25%の利上げが行われ、米国の政策金利は下限が5%、上限が5.25%に引き上げられることが確実視されています。

 米国の中央銀行に当たるFRBはこの利上げをもって、2022年3月から開始した一連の大幅利上げのプロセスを終了することが濃厚です。

 ただ、FRBのパウエル議長が何度も「年内の利下げはない」と発言してけん制しているにもかかわらず、市場の関心は、すでに年内のどの時点でFRBが利下げに転じるかに移っています。

 今回、FOMC後の記者会見で、パウエル議長が年内利下げの可能性に少しでも言及するかどうかが、市場にとって最大の関心事といえるでしょう。

 パウエル議長が強硬な高金利継続を表明すれば、米国株が下落する恐れもあります。

 翌4日(木)にはGAFAMの中で唯一、先週発表のなかったアップル(APPL)の2023年1-3月期の決算発表も予定されています。

 5日(金)には米国の4月雇用統計も発表。

 非農業部門の新規雇用者数の市場予想値は前月比18.0万人の増加になっています。

 前回3月に関しては予想をやや下回ったものの23.6万人増と堅調な結果となり、失業率も3.5%に低下しました。

 新規雇用者数が増えたり、インフレに直結する平均時給の伸びが高止まりしたりすると、市場が期待する年内早期利下げが遠のくため、株価にとってはネガティブでしょう。

 日本がゴールデン・ウイーク中も米国では重要イベントがめじろ押し。休暇中に相場環境が激変する可能性もあるので、休みを取りながらも、海外情勢に少しは注意を払いたいものです。

 願わくば、大きな波乱もなく、相場が平穏のまま、来週8日(月)に日本市場が再開することに期待したいものです。