先週の日本株市場は高値圏で膠着(こうちゃく)したものの、底堅い値動きとなりました。

 日経平均株価(225種)は18日(火)に終値で2万8,658円をつけ、3月9日につけた終値ベースの年初来高値を更新。21日(金)の終値は2万8,564円で、前週末比70円高で終了しました。

 業種別では、3月の欧米の金融危機で株価が下落し、割安感が高まった銀行業がトップになりました。

 相次ぐ値上げで、高騰する原材料費の価格転嫁に成功している電気・ガス、食料品、水産・農林業も上位に来るなど、内需株が底堅い動きでした。

 米国では、機関投資家が運用の指針とする21日のS&P500種指数が前週末比0.1%安、ハイテク株が集まるナスダック総合指数が0.42%安となるなど、主要3指数が全て小幅下落。

 先々週から始まった2023年1-3月期の米国企業の決算に一喜一憂する展開でした。

 今週4月24日(月)~28日(金)の1週間は、来週5月3日(水)から長いゴールデンウイーク休暇に突入すること、ここまで株価の急ピッチな上昇が続いてきたこともあり、先週に引き続き一進一退の展開が見込まれます。

 一番の注目ポイントは、日本銀行の植田和男新総裁の下で初めて開催される金融政策決定会合(27、28日)でしょう。

 28日(金)取引時間中の会合終了後の政策発表、取引時間終了後の植田総裁の記者会見に大きな注目が集まりそうです。

先週:循環物色が続く好調・日本株!米国は企業業績悪化が重しに 

 日経平均株価は、4月7日(金)~先週21日(金)の2週間で1,046円も上昇しました。

 日経平均株価は2022年1月からほぼ1年4カ月にわたり、2万5,000~2万9,000円台でレンジ(横ばい)相場を形成。

 その間の最高値は、2022年8月17日につけた2万9,222円となっています。

 長期的な株価の推移で見ると、ほぼレンジ相場の上限近辺に達しており、今後、下がる可能性もありそうです。

 ただ、個別株に目を向けると、半導体切削装置のディスコ(6146)が前週末比14.6%高。20日(木)に2023年3月期営業利益が前期比20.7%増の1,104億円となったことを発表し、大幅増益が好感されました。

 また、「九州熱中屋」などコンセプトレストラン運営のDDホールディングス(3073)は、2023年2月期純損益が前期の赤字から大幅な黒字に転換し、2024年2月期も大幅増益予想を発表しました。21日の株価は前週末比29.8%高。

「業務スーパー」などを展開する神戸物産(3038)は、2023年3月の月次の単体業績を発表し、売上高が前年同月比9.6%増、営業利益が8%増でした。21日の株価は前週末比5.4%高となり、年初来高値を更新しました。

 DDホールディングスや神戸物産は優待目的で保有する個人投資家も多い銘柄ですが、優待株から半導体株まで投資対象となる業種や銘柄が移り変わる循環物色が起き、好展開が続きました。

 21日(金)の取引終了後には、同じ株主優待人気の高い航空会社のANAホールディングス(9202)が燃料費高騰の一服や為替レートの円高進行で、2023年3月期の営業利益を当初予想よりも26.3%も上方修正。週明け24日(月)の株価は上値を追う展開となりました。

 新型コロナウイルス禍で大打撃を受けた小売、流通、外食、アパレル、アミューズメント施設関連企業などに関しては、先ほどの神戸物産のように、月次の業績や既存店売上高の伸びにもビビットに反応して、株価が上昇しています。

 株主優待制度を導入して個人投資家にも人気が高い内需株の業績急回復ぶりが、注目の的になる流れが続きそうです。

 一方、米国株は高金利や物価高による景気後退不安や2023年1-3月期の決算で業績悪化が明らかになった企業が全体相場の足を引っ張りました。

 電気自動車のテスラ(TSLA)が前週末比11%安。 2023年1-3月期の純利益が前年同期比24%減少したことが嫌気されました。

 通信会社大手のAT&T(T)は、5G通信網の敷設費用がかさみ、2023年1-3月期の自由に使える現金収入(フリーキャッシュフロー)が大きく減り、株価は急落。週間で前週比8.6%安に沈みました。

 米国では先週、製造業関連指数が相次いで発表されました。

 17日発表の4月ニューヨーク連銀製造業景気指数が大幅なプラスに改善する一方、20日発表の4月フィラデルフィア連銀製造業景気指数は予想を大幅に下回るマイナス31.3ポイントに悪化するなど、好不調がチグハグな結果になりました。

 先週、目を引いたのは、19日(水)発表のイギリスの3月CPI(消費者物価指数)です。

 予想に反して、前年同月比10.1%上昇となり、特に食料品など生活必需品の記録的な物価高騰が今も続いていることが判明しました。

 米国以上に物価高が続く欧州では、3月にスイス第2のメガバンク、クレディ・スイス・グループが経営危機に陥り、スイス第1位のUBSグループに救済合併されたばかり。

 にもかかわらず、イギリスの株価指数FTSE100種総合株価指数やドイツ株価指数DAXがいまだ史上最高値近辺で推移している点も、逆に気がかりです。

今週:米巨大IT決算で急落も!?植田新総裁初の金融政策決定会合にも注意! 

 今週は、「GAFAM」と総称される米国の巨大IT企業の内、アップル以外の決算発表が相次ぎます。

 4月25日(火)にグーグルの親会社アルファベット(GOOG)や話題の生成AI(人工知能)のChatGPTに巨額出資をしたマイクロソフト(MSFT)、26日(水)にはフェイスブックの親会社メタ・プラットフォームズ(META)、27日(木)にはアマゾン・ドットコム(AMZN)が発表予定。

 いずれも日本時間では翌日早朝の時間に当たるため、もし業績が予想より悪かった場合、真っ先に日本株に悪影響が及ぶことになります。

 GAFAM株は3月に株式市場を襲った金融不安の際も、業績に安定感があり、金融危機の悪影響を受けにくい資産の逃避先として買われてきました。

 21日の株価は、メタ・プラットフォームズが前年終値比で76.9%高、アマゾン・ドット・コムは27.3%高、アップル(AAPL)が27.0%高、マイクロソフトが19.2%高、アルファベットが19.4%高となっています。

 確かにChatGPTなど生成AIの目覚ましい技術発展があるにせよ、GAFAMの業績が2023年に入って大きく躍進したわけではありません。

 決算発表次第では株価が急落し、全体相場に悪影響が及ぶ恐れもあるので注意が必要かもしれません。

 24日(月)には、3月の米国地方銀行の相次ぐ破たんの際、預金の大量流失で株価が大きく売り込まれたファースト・リパブリック・バンク(FRC)の2023年1-3月期の決算発表も予定されています。

 米国の経済指標としては、27日(木)発表の2023年1-3月期の実質GDP(国内総生産)の速報値が注目されそうです。

 前期比年率換算で2.0%成長が見込まれていますが、3月の金融危機の影響などで、もし下振れすると米国の景気後退懸念に拍車がかかりそうです。

 28日(金)には、3月の米国個人消費支出やその価格指数(PCEデフレーター)も発表。

 PCEデフレーターは市場予想では前年同月比4.1%の上昇と、前月の2月から伸びが鈍化する見通しです。

 予想以上の物価沈静化が確認されれば、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)が5月2、3日(水)のFOMC(連邦公開市場委員会)で政策金利を0.25%引き上げるものの、それを最後にして、昨年3月から続いた利上げを打ち止めにする期待感が台頭しそうです。

 そうなると、米国株が再び上昇を試す展開になるかもしれません。

 日本では、日銀の新総裁に就任した植田和男氏のもとで初となる金融政策決定会合が27日(木)、28日(金)の2日間にわたって開かれます。

 植田新総裁が就任早々、短期金利だけでなく長期金利の代表的な指標である10年国債を市場から大量購入して、短期金利に加えて長短金利も操作するYCC(イールドカーブコントロール)政策に変更を加えることはないというのが大方の予想です。

 しかし、早ければ次回6月15~16日の金融政策決定会合でYCC政策に変更を加える見方も有力。

 4月28日15時30分に開かれる初の定例記者会見で、植田新総裁がどのような独自色を打ち出し、YCC政策の修正に関する地ならし発言を行うかに注目が集まるでしょう。

 今週からは日本企業の2023年3月期決算発表も本格化します。

 26日(水)には工作機械メーカーのファナック(6954)、27日(木)には半導体ウエハの信越化学工業(4063)、コロナ禍からの経済再開で業績好転が期待されるJR東日本(9020)、28日(金)にはソニーグループ(6758)などが発表。

 この時期は、5月上旬の決算発表本格化に向け、先ほどのANAホールディングスのように、個別企業のサプライズな業績予想の上方修正が発表されることも多いので期待したいところです。

 ただ今週は、ゴールデンウイーク休暇が目前で、ここまで上昇してきた分、利益確定の売りもかなりあるでしょう。

 それをこなして、日本株が高値を維持できるかに注目しましょう。