投資信託の積み立ては「クレジットカード経由」が主流に

 3月のあたま、日本経済新聞に「投信積み立て、年2.4兆円ペースに倍増」という記事が掲載されました。

 ネット証券大手5社の合計で月2,000億円の積立投資信託が設定されていて、この一年半で倍増、特に若い世代の設定が増えているという記事でした。人数でも450万人超と規模が急拡大していることもあわせて示されました。

 これは、公募投信の純資金流入額の3割近くにもなっているとも推計しています。銀行や総合証券経由、そして確定拠出年金を通じた資金流入を考えると年3兆円以上と思われ、4割近い可能性もあると私は見ます。

 今起きているトレンドをまとめると、

  • 若い世代の資産形成意識の向上
  • 投資信託を活用した投資の実行
  • 定期的な積立投資を行う傾向

 ということになります。これは特筆すべき変化だと思います。20年前にはまったく考えられなかった流れだったからです。

 積立投資が若年層に普及した背景として、記事ではNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の影響を取り上げていますが、私は企業型確定拠出年金とiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)をあわせた1,000万超の口座の存在と、確定拠出年金を通じた1,000万人に向けた投資教育の取り組みがあることも、こうした流れを下支えしていると思います。

 さて、積立投資の認知度が向上し、多くの人が投資行動に踏み切るようになったとき、もう一つユニークなトレンドが生まれました。

「クレジットカードで積立投資」というトレンドです。従来は銀行引き落としを前提としていた積立投資ですが、近年はクレジットカード経由の設定が急増しており、これも積立投資急拡大の一因というのです。

 クレジットカード経由の引き落とし、とかくビジネスモデルとして語られがちですが、私は個人目線でも悪くないアプローチだと考えています。今日はそんな話をしてみたいと思います。

個人のメリット1:引き落としミスが回避される

 個人にとって最大のメリットは「引き落としミス」の回避です。残高不足による引き落としミスというのはしばしば起きます。同じ銀行に定期預金を少し組んでおけば当座貸越で一時的にマイナスにしてくれますが、基本的には残高不足は引き落としをしない形で処理されます。

 これは長期積立投資を考えるときもったいないことです。クレジットカード利用はポイントよりむしろ「引き落としミスをなくす」ことのほうに意義があると思います。

個人のメリット2:中断に対する抑止力が生まれる

 第二のメリットは、継続は力、ということです。自動的に積み立てされる=自動的に継続されるということになります。30年前くらいは、新入社員のところに労働組合の人がやってきて、財形貯蓄を半強制的にさせることがありました。

 一見すると乱暴なやり口のようですが、きちんと家計管理をできない若者に手取りの5~10%くらいを強制貯蓄させる「おせっかい」でもありました。特に1980年代までは、給料日に口座残高ゼロになるまでお酒やギャンブルに興じるサラリーマンが多くいましたので、半強制的な貯蓄は効果があったのです。

「始めること」「続けること」「中断しないこと」を結果としてクレジットカードからの決済が実現してくれるのなら、給与天引きの財形と同等の効果が資産形成に生まれていることになるわけです。

個人のメリット3:ポイントが手に入る

 日本人はポイント好きとして知られていますが、やはりこのポイントが手に入ることも見逃せません。ポイントは二つの意義があります。

 一つは「マイナスのコスト」として作用することです。効果は一回限りだったとしても拠出月については運用コストが実質下がったのと同等の効果が生まれます。これは大きいことです。

 二つ目の視点は「うれしい」というポジティブ感情です。ポイントが還元されて喜ばない人はまずいません。これがもし「高コスト投信を販売するみせかけの喜びとしての低ポイント還元」であれば、問題ですが、現状では低コスト投信が普及している中でのクレカポイントゲットですから、個人にとっては意義がある選択といえます。

 すでに貯めていたポイントを積立投資に回す選択肢もあり、これもまた楽しいところです。こちらは実質ゼロからの投資資金の捻出ですからね。

クレジットカード引き落としでの積立投資は今後も拡大が続くか

 個人にとってメリットがあるクレカ投信積立のポイントをまとめてみました。ネット証券各社はクレジットカードを介した積立投資の拡大に力を入れており、また個人も関心が高いことから市場はさらに拡大するものと思われます。

 なお、どんなクレジットカードでもよいわけではなく、証券会社ごとにクレジットカードが指定されることが基本ですので、そのあたりは証券会社の定めをよく確認しつつサービスを利用してみてください。

(クレジットカードの作りすぎには注意し、また実質年会費無料のものを選ぶほうがいいでしょう)

 ただ、2023年の現状ではクレジットカードの規制により、月5万円を超えるクレカ投信積立ができません。これは「十分な枠」ともいえますが、2024年からの新NISAの枠を考えると年60万円ではちょっと力不足で、今後の拡大には期待したいところです。