経過観察期からの市場

 いくつか代表的な信用指標をご紹介しましたが、留意すべきは、金融不安は、潜在的な発生する下地があるところに、突然一つの事件のように発生し、瞬く間に波及するという性質です。これら指標も危うさを示唆しても、発生をピンポイントで言い当てることはできません。

 それでも、当面は金融当局の監視と監督の下、中堅以上の銀行の破綻は回避されるとの見方には、一定の妥当性があり、これら指標を通じて経過観察する猶予がありそうと期待しています。その間、景気にはまだ底堅さがあります。インフレにピーク感があれば、金利が軟化し、株式が金利上昇を嫌う逆金融相場をいよいよ脱して、中間反騰的の語感より控えめでも、持ち直しを見せる可能性はあります。

 しかし、金融不安は、信用のひっ迫を強め、底流でうごめいていることを軽視してはいけません。金利が継続的に低下できるのは、景気悪化リスクがあればこそ、と警戒を緩めないのが基本の構えと考えています。金融引き締めに対する感度が鈍いサービス業の堅調持続で、インフレが下げ渋れば、金利も下げ止まり、そのことが信用ひっ迫を強化する流れにもなり得ます。

 現時点での米株式に対する評価は、足元の底堅さを受けて、2~4週間程度の高下リズムを刻みながら、1~3カ月程度の持ち直しがあり得るかを、恐る恐る短期投資で試すまで。6~15カ月スパンになると、信用不安以降の景気下降サイクル、そして株式の逆業績相場のリスクを基本シナリオに据えています。

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